【メルセデスベンツ CLS 新型試乗】富裕層向けハイテク・スペシャリティサルーン…井元康一郎

メルセデスベンツ CLS450 4MATICスポーツ
メルセデスベンツ CLS450 4MATICスポーツ全 15 枚

メルセデスベンツのEセグメントラージクラス4ドアスペシャリティ『CLS』を短時間ながらテストドライブする機会があったので、ロードインプレッションをお届けする。

【画像全15枚】

2018年7月に日本市場に投入された現行CLSは初代から数えて第3世代にあたる。モデル構成は大きく分けて2リットル直列4気筒ターボディーゼル+RWD(後輪駆動)の「220d」と、3リットル直列6気筒ターボガソリン+AWD(4輪駆動)の「4504MATIC」、そしてAMGの3機種。本稿では450について述べる。

富裕層向けハイテク・スペシャリティサルーン

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220dと450は外見上はほとんど同じ。内装は450のみスポーツシートがオプションで選択できるなど幾分の違いはあるが、基本的な造形や質感、先進装備はほとんど同じだ。差別化ポイントの大半はメカニズム面にあり、エンジンの種類(ディーゼル vs ガソリン)、エンジンの気筒数(4気筒 vs 6気筒)、エンジン出力(194ps vs 367ps)、駆動方式(後輪駆動 vs 4輪駆動)、電力システム(12V充電制御 vs 48Vマイルドハイブリッド)など。価格差は220dの815万円に対し、450は1059万円と、200万円以上の開きがある。

そんな450の特色を一言で表現するならば、わがままなドライビングをノーストレスで実現させる、富裕層向けハイテク・スペシャリティサルーンとでもなろうか。動力性能、操縦安定性は日本よりはるかに速度レンジの高い欧州でも過剰そのものという水準。それを実現しているのは高度な電子制御システムの数々だが、自動化されたものに乗せられているのはなく、自分の意思でアクティブに動かしているように感じさせる、人とクルマの対話性のデザインもまた見事だった。
エンジンルーム。フロントメンバーがアルミ合金で作られるなど、鼻先の重量軽減を頑張っていることがうかがえた。エンジンルーム。フロントメンバーがアルミ合金で作られるなど、鼻先の重量軽減を頑張っていることがうかがえた。
パワートレインは秀逸。車両重量は2トン弱もあるが、箱根の登り急勾配でもプレミアムEセグメントの顧客のわがままな要求を越えるような猛然たる加速力を見せる。公称スペック367ps/51kgmの新鋭の直列6気筒エンジンは能力、サウンド、低振動とも申し分なかったが、そのパフォーマンスを引き出すのに大きく貢献しているように感じられたのは9速AT。

この9速ATは日本の速度域ではほとんど9速に入らず、実質8速みたいなものだ。だが、クロスレシオ設定が絶妙であるうえ、スロットル操作への応答性も非常に優秀で、エンジンのポテンシャルを生かすという点では実によく出来ていた。その特性は220dでは限られたエンジン出力を生かしてハイパワー車のような走りを実現させる方向に作用していたが、450のほうは超高性能サルーンとしての能力を最大化する役割を果たしているようなイメージだった。

ハイブリッドを意識させるシーンはほとんどない

走行中、ハイブリッドであることが一番意識されるのは、エンジンを停止させて走るグライディングモードに入ったとき。走行中、ハイブリッドであることが一番意識されるのは、エンジンを停止させて走るグライディングモードに入ったとき。
パワートレインは欧州で広がりを見せているシステム電圧48Vのマイルドハイブリッドだが、ハイブリッドであることを意識させられるシーンはほとんどない。路面やパワートレインからの騒音が見事に遮断されている室内では、軽負荷で走行しているときにはエンジン音がほとんど聞こえてこない。スロットルを薄く踏んでいるつもりが、ふと回転計に目をやると、いつの間にかエンジンが止まっていて、「なるほどこうやってエンジンブレーキがかからないようにして滑走させているのだな」と気づかされる程度だ。あとは信号待ちからのエンジン再起動が無振動であることくらいか。

フィール的には非ハイブリッド車とほとんど変わらない半面、燃費は良好だった。367psエンジン+AWD、車重2トン弱と、燃費的にはかなりきつそうなスペックであったが、高速と市街地の混合ルートを100kmあまりを走行したさいの燃費計値は12.5km/リットルと、なかなかのエフィシェンシーだった。細かく測ったわけではないのだが、市街地での落ち込みの小ささがトータル燃費を上げるのに貢献したように感じられた。

「4MATIC」と称するAWD(4輪駆動)のシャシーは、普段は有り難味を感じることはないであろうが、路面の悪いワインディングロードでは220dの後輪駆動シャシーに対して大きなアドバンテージを持っていた。クルマの姿勢変化を4輪の駆動力配分で積極的に制御するというテイストが強く、横方向にかなりの高Gがかかってもコーナリング姿勢は本当に安定しており、魔法のじゅうたん的にぐらつきの小さな旋回が可能だった。

遊びグルマとしては220dでも十分だが

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このように、450は富裕層向けの遊びグルマとしては素晴らしい仕上がりであったが、非富裕層である筆者は、日本では220dでも速力は十分にあり、十分に静かで、かつドイツ流のお色気たっぷりなインテリアも手に入るのだから、200万円以上安いそちらでも大いに満足できるのではないかという印象を抱いたのも事実だった。

もっとも、この日本で過剰性がさらに高い最上級グレード「AMG CLS 53 4MATIC+」を求める顧客も存在するのだから、富裕層の考えることはまた違うのかもしれない。

ちなみに、ちょっと乗り方を間違えると悪趣味に堕してしまうという危ういバランスの上に立っているモデルであるという点は220dからAMG CLS 53まで共通。プレステージクラスのモデルと同様、購入にあたっては自分に似合うかどうかを見極める冷静さも必要であろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

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《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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