ノスタルジック2デイズ2019(23~24日、パシフィコ横浜)の目玉の一つはなんと言っても、ミケロッティがデザインした2台の試作車、『レーザー』と『ミザール』が会場に並ぶということだろう。イタリア人のジョヴァンニ・ミケロッティは自動車およびバイクのデザイナーだ。
「今回展示の2台が、日本にあること自体、にわかには信じられなかった」とノスタルジック2デイズを主宰する旧車専門誌『Nostalgic Hero』の関係者の一人は話す。レーザーとミザールが並ぶこと自体、世界的に見ても前例のないことだそうだ。
ミケロッティは、日野『コンテッサ』やプリンス『スカイライン・スポーツ』など、黎明期の日本車の、いまでも忘れることのできない名車のデザインを手掛け、またい大きな影響を及ぼしたデザイナーだ。彼は世界的にも多くの量産車のデザインを手掛けているが、どちらかというと、それらには瀟洒な印象のものが少なくない。しかしデザインスタディでは、限界や制限を設けず、力強さと、妥協しない「志」のようなものを見て取ることができる。
ノスタルジック2デイズ2019に展示された1台は1971年ジュネーブモーターショーに出展されたレーザー、正式には「ミケロッティ・マトラ・レーザー」だ。フランスのマトラ『M530』をベースに作られたコンセプトカーだ。ガルウィングにはならなかったものの、横一列3人掛けのミッドシップというユニークなレイアウトのクーペ、マトラ・シムカ『バゲーラ』の試作車だ。
もう1台は1974年、トリノモーターショーで発表されたランチア・ミザール。ランチア『ベータ』をベースに作られたコンセプトカーで、4枚のドアが4枚ともガルウィングという乗用車だ。このコンセプトは突飛であるものの、1979年に『デルタ』が登場しているように、当時ランチアは高い志で乗用車の次の一手を模索していた。そんな中での一案であった。
これらの希少性もさることながら、ミケロッティが手掛けた量産車とのイメージのギャップ、あるいは、こういう発想のクルマがどういう形で量産化されたのか、といったことを来場者は不思議がっていた。