【川崎大輔の流通大陸】日系ロードサービス会社の挑戦、外国人人材をリーダーへ

外国人自動車エンジニアの面接
外国人自動車エンジニアの面接全 6 枚

2018年にタイでロードサービスをスタートした日系企業Maruyama Co.,Ltd(以下、Maruyama)。Maruyamaの丸山正和社長、高井洋平氏(バイスプレジデント)はタイ人リーダーの採用するための面接を行った。

力強さを取り戻すタイ自動車市場

アセアン主要6か国の2018年の新車販売台数が前年対比6%増加、約357万6,000台となった。5年ぶりに過去最高を更新した結果となった。経済が堅調なタイの新車販売台数は、2018年通年で前年比19.2%増の103万9,158台。低金利ローンなどが追い風隣5年ぶりに100万台を超えた。ようやく力強さを取り戻した。フロスト&サリバンの予測では2019年におけるタイの新車販売台数は、前年比5.5%増の110万7800台に成長の見込み。

2019年に建設や製造業での民間の投資拡大に加えて、大型インフラプロジェクトによって、公共投資は増加の予定。更に政府が力を入れるバンコク東部でのEV(電気自動車)や交通インフラなど開発する「東部経済回廊(EEC)」構想や「Thailand 4.0」といった経済開発計画によってピックアップトラック及び商用車の需要の刺激が期待されている。

日本式のサービスで差別化

力強さを取り戻してきているタイ。将来の自動車市場の可能性を見据え、Maruyamaは現地法人を設立。2018年1月よりビジネスをスタートした。保険会社からの依頼によって事故・故障の車の引き取りを行う。日本人が常駐し、タイ人のドライバーとコールセンタースタッフを雇用しビジネスを開始。ロードサービスのほかには、ディーラーや整備工場からの依頼で車の陸送サービスも行う。「今後は、他社とのアライアンスを組み全国規模でのサービスを提供。タイ版のJAFのようなブランドとして存在を目指します」(Maruyamaのバイスプレジデント、高井洋平氏)。一方で「タイでのロードサービスの現状を知れば知るほど、サービスの質は低く日本の20年前のようです」と指摘する。

しっかりと時間を守り、スタッフは制服を着用。現場ではお客様の車に触れるときに、手袋やシートカバーを利用するなどの日本式のクオリティ・サービスを提供。日本では当たり前の丁寧な対応を、継続して行うことで差別化につなげていく。現在は24時間サポートする体制も構築した。

日本のロードサービス会社が一定水準以上の高品質サービスを提供している。しかしタイでは、利用している積載車も古く、時間もルーズで、サービスの質が低い。サービスの差別化が大きなポイントとなる。タイでは全国規模で行う外資の大手が1社あるが、他(ほか)は個人の小さなロードサービス会社がひしめき合っている状況だ。まだまだ大きな可能性がある市場だ。

リーダー人材教育を日本で、そしてタイへ

「日本には日本の、タイにはタイ独自のビジネスのやり方が存在します。(タイで)ビジネスを行っていくには、タイ人によるマネジメントの存在が重要だと考えるようになってきました」(丸山社長)。更に「そのためには、タイ人の優秀なリーダーを育て、将来に向けたタイ人によるマネジメント体制を整えたいです」と語る。

2019年2月に、アセアンの優秀な自動車エンジニアを日本企業へ紹介を行う(株)アセアンカービジネスキャリア主催のバンコク面接に参加。将来のタイ人リーダー候補の面接を行った。優秀なタイ人をMaruyamaの親会社であるロードサポート新潟(日本)で採用。一緒に日本で働き、日本のサービス、ビジネスのやり方を教育。同じ釜の飯を食べ信頼関係を築く。彼らがタイに戻るときに、現地のリーダーとして活躍してもらう。日本で雇用をした外国人が、いずれ母国で活躍できるようなキャリアアップを支援することと日本企業の海外進出の成功をリンクさせる「WIN-WIN」の循環型人材育成モデルといえる。

海外の優秀な人材は、会社が将来に向けてどのようなビジョンを持っているのか、明確なキャリアパスを提示できているかを見極める。彼らは「就職した企業が母国の支店や、海外進出した際の拠点で、マネジャー職と働きたい」という夢を持っているからだ。その夢への道筋を提示できる企業のみが、優秀な外国人人材に選ばれる企業となれる。

アセアンのアフターは農耕ビジネス

アセアンにおける自動車アフターマーケットは、日本の中小企業にとって稼げる市場だ。これからはフローからストックへ、そして新車を販売して収益を得る形からアフタービジネスでの収益へとシフトする。

アセアン諸国でトップレベルの自動車マーケットに成長したタイ。これから自動車アフター市場の拡大。タイも日本と同じ道を辿るとすれば、ロードサービス市場も拡大することは間違いない。ただし、短期的に考えてはいけない。なぜなら、「農耕ビジネス」だからだ。タネをまいてすぐに刈り取れるというわけではない。長期的な視野を持ち、人材育成を行い、アセアンでのビジネス展開に取り組むことが重要となることは間違いない。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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