9代続く佐野造船所、ホンダブースで手作りの技を見た…ジャパンボートショー2019

ニスの香りと、華やかなフォルム。佐野造船所のウッディーなボートがHONDAブースを飾る。
ニスの香りと、華やかなフォルム。佐野造船所のウッディーなボートがHONDAブースを飾る。全 14 枚

ジャパンインターナショナルボートショー2019(ジャパンボートショー2019)のホンダブースではクラシカルなボートが目を惹く。すっかり恒例となった佐野造船所の展示だ。

スタイリッシュなランナバウトは、大手メーカーの仕事にはないオーラを放つ。マホガニーで組まれ、ほのかにあたりにはニスの香りが広がっていた。流麗なフォルムと丁寧な仕上げは、眺めているだけでも飽きがこない。

日本ボートオブザイヤー2018でアメリカのクリスクラフト『キャプリ21』が選ばれたが、マリンレジャーがまだまだ発展途上の日本では、スタイリッシュながら、ユーティリティ面でハードルの高いのがランナバウトスタイルだ。クルマで言えばロードスター、スポーツカーのようなボートだ。

東京都江東区にある佐野造船所は9代続く、古くは和船を手掛けていた老舗だ。「昔からの一枚一枚板を貼り合わせて組んでいます。だいたい船は一艇組み立てるのに1年から1年半くらいかかります。木製の船は独特の柔らかさが乗り心地にあって、乗りやすさではほかの素材ではなし得ない世界です。2年に1度は船体のニスを塗り替えて、6年に一度くらいはやすりをかけて表面を剥離して、塗り直す作業が必要です」と佐野造船所では話す。

佐野造船所では、現在家族3人で船づくりを行っている。そうしたメンテナンスもあり、一度計画に入るとかなり時間がかかるため、3年に1艇程度しか新艇は受注ができないそうだ。

船体にはホンダのVTEC船外機が搭載されている。「注文を受ければ様々なメーカーのエンジンは選定可能です。しかし、佐野さんと言えばホンダだよね、という声は多いです。一からカタチを作っていくという点や、本田宗一郎のスピリットなど、私たちが大切にして来たものに相通じるのもあると感じますが、実際に、出力特性などがうちの船に合っているかもしれませんね」と話す。

見学していた人の一人は「佐野造船所の船は波さばき、走っている姿がきれいだと思うんですよね。あと、フォルムが洋風なようで日本らしさが残されているのがいい」と話す。

長きにわたって支持されてきた理由を佐野造船所では「伝統を大切にしつつ、しきたりや既存のスタイルに固執しすぎず、ユーザーのニーズに沿った船づくりをして来たこと、かもしれません。このフィッシングボートは一部にFRPも用いています。総木製の良さは薄まりますが、軽量化できているほかメンテナンスも簡単になります」と話す。

現在さらに大きなランナバウトを作っているとのこと。「日本では贅沢なランナバウトですが、より華やかなものをお見せしたいですね。まず作ってみる、というのが佐野の家訓でして、来2020年にはご覧いただけるといいのですが」。

《中込健太郎》

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