◆三菱らしい軽を
eKワゴンと『eKカスタム』が属する軽ハイトワゴン市場は軽自動車市場全体の32%ほどを占め、スーパーハイトワゴン市場の36%に次ぐ大きなシェアを占めている。そのハイトワゴン市場の中で、カスタム(eKカスタムなどが属する)、スペシャリティ(スズキ『ハスラー』など)、そして標準車と区分すると、そのカスタムとスペシャリティを合わせると25%と3割に迫る勢いだ。
こういった市場背景を踏まえ、eKワゴンをフルモデルチェンジするにあたり、「三菱にしかできない三菱らしい軽を作りたいと考えた」とは、三菱商品戦略本部CPSチームの栗山剛志氏の弁。

そこで、現行eKワゴンについては、「正常進化させ、悪いところは直して良いところはもっと伸ばし、コンベンショナルな方向から、若干ディスティクティブな方向へ個性を持たせた」。一方eKカスタムは「従来のカスタムという概念を捨て、SUVテイストな価値を持たせた。さらに今回はテーマも異なっていることから名前も新たにeKクロスという名称とした」と説明。
コンセプトは、“一歩踏み出す自信と勇気を与えてくれるクルマ”だという。それに伴いターゲットも、「eKワゴンは運転が得意ではなくても、もっと運転を楽しみたい人。eKクロスは日常から一歩踏み出しアクティブに冒険してみたい人、どんどん外に出て行きたいと思っている人をターゲットにした」と栗山氏。従ってeKワゴンは40代女性、eKクロスは20代から30代の自立志向の若い男性をイメージしている。
◆大きく変わった軽ユーザーの意識
新型の商品特徴はデザインとカラーバリエーション、走行性能、先進技術、便利装備と快適空間の4つが挙げられる。

◆性能向上とともに静粛性もアップ
走行性能では大きく進化し、新開発の技術も多く採用されているという。まずエンジンは新開発。「加速性能を格段に向上させるために、トルク特性はNAもターボも幅広い回転域でトルクアップを実現」。特にNAでは、最大トルクの発生回転数を現行の5500rpmから3600rpmへより低回転域にすることで、「日常の買い物使いや、高速道路等の合流時などでもかなりストレスなく運転できるだろう」と話す。
またeKクロスに採用したハイブリッドシステムは、減速時に貯めた電気エネルギーを、加速時にモーターアシストとして使うというもの。またアイドルストップからの再始動は、運転席下のバッテリーからオルタネーターに電気を供給し、スターターを使わずにエンジンを再始動することから、「かなり静かなエンジン再始動が可能」とした。

◆運転支援も最新のものへ
先進技術でのポイントは、運転支援技術MI-PILOTが挙げられる。「他社メーカーでは65km/hを下回るとステアリングの制御などがキャンセルされてしまうが、MI-PILOTでは、前車追従し0kmで停車時、あるいはそこから再発進するときも制御が途切れずずっと運転支援が継続するものだ」と説明。

そのほか軽自動車初のデジタルルームミラーも採用された。
◆こだわった収納性
最後は便利装備と快適空間だ。前席周りでは計7つの収納スペースが機能的に配置。特徴的なものとしては、助手席前に置かれた引き出し式の収納ボックスがあり、栗山氏は、「小物などを入れても良いし、ティッシュボックスがちょうど入るスペースなので、かなり使い勝手の良いものだ」と評価する。
シート形状も大きく改善。シート形状とクッション部を改良することにより、骨盤や背中をしっかりと支えることで、「長時間の運転でも疲れない仕様だ」という。

さらに、ホイールベースを65mm延長することで後席の足元空間を広げている。また通常はフロアトンネルに出っ張りがあるのだが、二駆・四駆ともそれがなく、完全にフラットな足元空間を実現。この結果、「足の置き場に困ったり、また荷物を置くときもがたつかなくなった」と栗山氏はいう。
そして荷室については、リアシートを後ろにいっぱいにスライドさせた状態でも「A型ベビーカーが収納できる幅と高さを確保」。またラゲッジスペースをもう少し広くしたい場合には、後席背面上部についているレバーを片手で起こすことで軽い力でスライドできるようになった。現行車では、「後ろにあるストラップを引きつつ前に押し出さなければいけなく、操作がし難かったが、今回は女性でも片手で簡単にスライドできるだろう」とし、あらゆる点で先代を凌駕する仕上がりであることを強調した。