MONETプラットフォームが目指す未来…MONETサミット[詳報]

宮川潤一氏(モネ・テクノロジーズ代表取締役社長兼CEO)
宮川潤一氏(モネ・テクノロジーズ代表取締役社長兼CEO)全 15 枚

モネ・テクノロジーズは28日、自治体、企業、報道陣総勢600名以上を集めた「MONETサミット」を開催した。新しい事業年度を迎えるにあたって、同社の戦略や展望、とりくみを自治体や企業にアピールし、広くパートナーを集める狙いがある。

主な発表は、MONETプラットフォームへのホンダと日野自動車の協業と資本提携と、MONETコンソーシアム設立の2つだ。他には現状の取り組みとして、自治体と始めている実証実験やパートナー企業との新しいビジネス、e-Palleteのロードマップも発表された。

これらの詳細と、サミット最後に行われた記者との質疑応答のやりとりをベースに、あらためてモネ・テクノロジーズとはどんな企業なのか。MONETプラットフォームが見ている未来について掘り下げてみたい。

モネ・テクノロジーズの現状

トヨタ自動車とソフトバンクの双方がほぼ半分ずつを出資するモネ・テクノロジーズは、e-Pallete、ライドシェア、デマンドサービス、自動運転、5Gといったキーワードで象徴されることが多い企業だ。しかし、その事業コアはMaaSサービスのためのプラットフォームにある。

具体的なサービスや事業が浮かびにくいのは、そもそも移動にかかわるデータ、車両管理、配車、決済、その他ビッグデータとの情報連携がビジネスであり、特定サービスや製品をどうこうする会社ではないからだ。

だからこそ、今回のサミットのようにパートナー候補である自治体や企業を招いたイベントやPRが必要だったともいえる。その意味では、今回の宮川潤一氏(モネ・テクノロジーズ代表取締役社長兼CEO)による全体戦略と今後の展望、山本圭一氏(同取締役)によるe-Palleteのコンセプトとロードマック、柴尾嘉秀氏(同代表取締役副社長兼COO)によるホンダ・日野との協業およびMONETコンソーシアムの発表は、非常に効果があったものと思う。MONETプラットフォームが解決しようとしている過疎地、高齢者の課題、シームレスなマルチモーダルな移動、関連業界の動きなどが、スライドや動画などで説明された。

フィリップスが展示していた移動クリニックの内装フィリップスが展示していた移動クリニックの内装パートナー企業としてのフィリップスや三菱地所の事例が紹介された。民間ビジネスの可能性を示すものだ。豊田市、横浜市、福山市の取り組みは、多くの地方都市、ベッドタウンが抱える課題解決へのひとつの方向を示すものだった。移動クリニックや健康相談サービス(フィリップス)、オンデマンドで自宅から託児施設、会社のシャトルバス(三菱地所)、電話予約しかできなかった地域のオンデマンドバスのスマホアプリ対応(豊田市小原地区)、高齢化が進むニュータウンのコミュニティバス運行(横浜市若葉台)、郊外から中心部への乗り合いタクシー(福山市服部地区)といった実験事例は、すべてMONETプラットフォームによって実現されている。

MONETプラットフォームを利用した取り組みでは、コカ・コーラはニーズ変動に対応する移動自動販売機、サントリーは帰宅とビールをセットにした移動サービスが紹介された。ヤフーは、乗り換え案内・地図・カーナビのサービスにMONETプラットフォームのデータを利用するアイデアを披露した。

MONETプラットフォームとは?

MONETプラットフォームは、クラウド上に構築されたデータベース、配車や予約などを提供する機能、自動車メーカーや運送会社、交通会社にMaaSデータを提供する機能の3つの要素で構成される。データベースは、接続する車両の170ものデータを管理する。データは、MONETプラットフォームに接続対応する車両が走行しながら生成する車両情報、移動情報、各種ログ。配車や運行管理などのサービスを提供する事業者(サービサー)が、これらを利用する。いわゆるMaaSプラットフォームと呼ばれるものだ。

MONETプラットフォームは現在、前述の事例や実証実験のアプリや車両データを連携させている他、トヨタのMSPFもつながっている。今回、日野とホンダがモネとの提携を発表しているが、これによって、日野やホンダが持つ車両情報などを管理するクラウドとMONETプラットフォームが接続される。それぞれがお互いのデータを利用しあうことが可能になる。

たとえば、ホンダは古くからカーナビを使ったプローブカーの情報を集めて独自の渋滞情報を管理している。これにMSPF(トヨタ車)からのデータが利用できる可能性ができたということだ。車車間通信を行う場合、前後がホンダ車、トヨタ車での連携が行えるようになるかもしれない。もちろん、実際にどのデータをお互い交換するかはそれぞれの契約しだいだ。データの利用はAPIと呼ばれるプログラムどうしの呼び出し機能を使うので、お互いのデータがすべてオープンになるということではない。

日野についても同様だが、モネ、またはトヨタにとってはトラック(日野は大型トラック市場のシェアトップ)のデータが利用できる点は大きい。

日野とホンダの提携はデータ連携だけではない。2社はモネに対して10%ずつの出資を行い、執行役員を含む人材の受け入れも予定しているという。

コンソーシアムの取り組みとe-Pallete

MONETコンソーシアムは、自治体の交通課題の解決やMaaSビジネスをオールジャパンで取り組めるように、MONETプラットフォームをオープン化と相互接続を推進するために設立された。すでに80社以上もの企業が参加を表明しているという。それらの企業は、物流、小売り、金融、旅行・飲食サービス、デバイスメーカー、ソフトウェアベンダー、旅客運送業など多岐にわたる。

2020年の道路交通法の改正では、高速道路での自動運転が解禁される見込みだ。ソフトバンクグループはすでに5G通信を利用したトラックの隊列走行の実験を行っている。コンソーシアムは、5Gの応用、車車間通信の技術でも各事業者との連携の枠組みの機能も担わせたいとする。

カフェ仕様のe-Pallteカフェ仕様のe-Palltee-Palleteとモネの関係を整理してみよう。e-Palleteはトヨタが開発し提唱するMaaS用の共通台車コンセプトだ。低床かつ箱型で、さまざまな用途の車を自由に設計できることが特徴だ。モネはトヨタが出資していることで、MONETプラットフォームにつながる車両はe-Palleteだけになるのではないかと思いがちだが、そうではない。

e-PalleteはMONETプラットフォームに接続することが前提となるが、MONETプラットフォームに接続できる車両はトヨタ車やe-Palleteに限定されることはない。当然だが、プラットフォームのAPIに従うかぎり、どんな車両でも利用できる。

サミットでは、2023年以降にはe-Palleteによる実サービスがスタートするとした。移動販売になるのか、移動病院になるのか具体像は見えてこないが、おそらく自治体のサービスからの投入になると思われる。冒頭に紹介した自治体での実証実験にあるように、すでにオンデマンドバス(既存車両)をMONETプラットフォームに接続したサービス実験が始まっている。2019年度にはこれに既存車両によるサービスカーもスタートさせる予定だ。

《中尾真二》

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