石勝線夕張支線が126年と5か月の歴史に幕…JR北海道としては2年余りぶりの廃止

新夕張駅長の合図により発車する新夕張行き9272D。2019年3月31日撮影。
新夕張駅長の合図により発車する新夕張行き9272D。2019年3月31日撮影。全 13 枚

北海道夕張市内を南北に貫く石勝線夕張支線(新夕張~夕張間16.1km)が4月1日に廃止された。1892年11月、前身の北海道炭礦鉄道室蘭線の支線として開業してから126年と5か月での終焉となった。JR北海道の路線廃止は、2016年12月に廃止された留萌本線留萌~増毛間以来となる。

3両編成に500人、170%の乗車率だった最終列車

夕張支線は、JR北海道が2016年8月に廃止方針を表明。当時の鈴木直道市長は、JR北海道が鉄道に代わる夕張市内の交通体系再構築に協力することを条件に「攻めの廃線」として廃止を容認し、2018年3月には正式に廃止が合意されていた。

廃止が迫った3月16日のダイヤ改正では、石勝線が廃止を前提にしたダイヤとなったため、夕張支線の全列車はすべて臨時列車での運行となり、5往復から8往復に増発。平日は2両編成、土休日は3両編成に。3月29~31日の3日間はヘッドマークが掲出された。

本来はワンマン運転の夕張支線だが、最終日は車掌が乗り込み、全車両のドアが開閉。終点の夕張駅では狭いホームに大勢の人々が降り立ち、駅から出るのにかなりの時間を要した。2019年3月31日撮影。本来はワンマン運転の夕張支線だが、最終日は車掌が乗り込み、全車両のドアが開閉。終点の夕張駅では狭いホームに大勢の人々が降り立ち、駅から出るのにかなりの時間を要した。2019年3月31日撮影。ラストランとなった3月31日の編成は、夕張寄りからキハ40 354+キハ40 1780+キハ40 1763の3両。最終列車は夕張19時28分発の追分行き(9278D)だったが、追分からそのまま苫小牧まで臨時普通列車として運行されたため、9278Dは実質的に苫小牧行きとなっていた。

JR北海道では最終日の混雑を想定して、新夕張と夕張では折返し乗車を認めず、夕張駅では各列車の乗車希望者を駅前に集合させて乗車させる整列乗車を実施。最終列車の9278Dでは安全性を考慮して先着400人の乗車としたが、車内整理を行なった結果、500人近い乗客となった。キハ40形の定員は3両で288人なので、170%程度の乗車率だったようだ。

新時代へ向かうことをアピールするムードに包まれた夕張駅

最終日は14時10分頃から夕張駅付近でセレモニーが開催された。島田修JR北海道社長が最初に挨拶し、夕張支線が石炭輸送の衰退後も通学輸送などで地域を支えてきたことや、新夕張駅前におけるバス乗り場の整備、特急の新夕張停車拡大などに言及。「暮らしやすいまちづくりのための新しい公共交通体系が、今後の地域交通のモデルとなることを期待するとともに、弊社としても引き続きご協力させていただきたい」と述べ、ラストラン運行に携わった地元へ謝意を示した。

セレモニーの後は、ホームで14時35分発9272Dの発車に際して出発式を開催。セレモニーの出席者らがホームにあがり、夕張高校の男女2人の生徒が乗務員らに花束を贈呈。9272Dは新夕張駅長の合図で新夕張へ向けて出発した。

夕張駅を離れる最終9278D。夕張が生んだ双子の女性デュオで、昭和のアイドル史に1ページを刻んだ「ザ・リリーズ」の2人も見送りに駆けつけた。駅の移転はあったものの、126歳になっていた夕張駅から列車が永遠に消えた一瞬。2019年3月31日撮影。夕張駅を離れる最終9278D。夕張が生んだ双子の女性デュオで、昭和のアイドル史に1ページを刻んだ「ザ・リリーズ」の2人も見送りに駆けつけた。駅の移転はあったものの、126歳になっていた夕張駅から列車が永遠に消えた一瞬。2019年3月31日撮影。夕張駅に降り立つ人々を迎えていた「ありがとう夕張支線実行委員会」など地元の方々は「おかえりなさい」という声を掛け、明るく温かいムードを演出。新しい時代へ向かって夕張が歩み出そうとしていることをアピールしていたかのようだった。

憧れの汽車通からバス通へ、時の流れを述懐

消えゆく夕張支線に対する地元の想いはさまざまだと思うが、高校時代、清水沢~鹿ノ谷間を通学で利用していたという、札幌在住で夕張市・清水沢地区出身の谷本智美さん(58歳)は、小・中学時代が徒歩通学だったこともあり、憧れていた列車通学(北海道では「汽車通」と呼ぶ)をしたいために、鹿ノ谷駅最寄りの夕張北高校へ進学した。この高校は現在、旧南清水沢駅最寄りの夕張高校に統合されているが、夕張には最盛期に6校の高校が存在していた。

汽車通を契機に生まれて初めて定期券を持てた喜びを今でもはっきり覚えているそうで、「夏には列車の天井に扇風機が回っていましたが、ある日、扇風機が壊れて回らなかったことがあったのです。でも、私が乗り込んだ席にはずっと風が当たっていて、得をした気分でした」と思い出を語っていた。

鹿ノ谷駅で横断幕を掲げ、新夕張行きの発車を見送る地元の人々。2019年3月31日撮影。鹿ノ谷駅で横断幕を掲げ、新夕張行きの発車を見送る地元の人々。2019年3月31日撮影。谷本さんの高校時代は昭和50年代の前半。すでに夕張支線(当時は夕張線)の使命であった石炭輸送は衰退期に入り、通学などの生活路線に変貌しつつある時代だった。当時最新鋭で、最終列車にも使われたキハ40形気動車は少数派だったので、扇風機が回らなかったということは、キハ22形など、昭和30年代に登場した古い気動車がおもに使われていたのだろう。

そんなキハ22形を置き換えたキハ40形も、谷本さんの高校時代から40年もの歳月が流れ老朽化。数年先には新型のH100形へ置き換えられる運びで、その点でも時代の流れを強く感じる。

清水沢~鹿ノ谷間は山間に囲まれた勾配区間で、夕張支線のなかでもっとも駅間距離が長い難所だが、志幌加別川に沿った風光明媚な区間で、まさに夕張支線のハイライト。最終日の列車に乗っていて、当時の谷本さんが川を眺めながらのんびりと通学していた光景が目に浮かびそうになった。

4月1日からはこの区間もバス通学に変わったが、残念ながら、鉄道時代のような風光明媚な光景は拝めない。バスになったことで、高校生たちが夕張に抱く印象がどのように変わるのか、興味深いところだ。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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