自動化建設機械で月に拠点を、JAXAと鹿島建設が実証実験

月拠点のイメージ
月拠点のイメージ全 4 枚

JAXAと鹿島建設は、自動化建設機械による月での無人による有人拠点建設の実証実験を実施。拠点建設の実現可能性を見出すことができたと発表した。

両者は、芝浦工業大学、電気通信大学、京都大学とともに、宇宙での拠点建設と地上での建設技術の革新を実現するために、2016年から「遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現」を目指した共同研究開発を推進。3年間の研究開発を経て、鹿島西湘実験フィールド(神奈川県小田原市)にて、月での無人による有人拠点建設をイメージした2種の自動化建設機械による実験を行い、拠点建設の実現可能性を見出した。

将来、月や火星に長期滞在型の有人拠点を建設するには、地球上から遠隔で建設機械を操作する無人化施工が想定されているが、通信には相当の時間がかかるため、効率や精度の面で課題が指摘されている。一方、建設産業では、将来の熟練技能者不足への対策として様々な取組みが進められており、鹿島では、建設機械の自律・自動運転を核とした次世代の建設生産システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を開発し、2015年から建設現場に適用。今回、宇宙での拠点建設に向けた課題解決策として、A4CSELの開発で得た自動化施工技術を導入し、遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現を目指し、JAXAをはじめとした5者による共同研究開発を進めてきた。

月での無人による有人拠点建設作業では、「居住空間となるモジュール設置場所の整地作業」「所定の深さまでの掘削作業」「モジュールの設置作業」「モジュールを隕石や放射線から遮蔽するための覆土作業」の4ステップが考えられる。これらの作業を想定し、今回は7トン級のキャリアダンプとバックホウに自らの車体位置・方位を計測する機器や自動走行制御装置を搭載し、遠隔操作と自動運転の双方が可能な機械に改造した。

また今回の研究では、本格的な自動化機能に加えて、遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムを実現するための各種機能を開発。通信遅延に対応した操作支援機能では、3~8秒という大きな通信遅延がある場合でも、遠隔操作している建設機械の操作性や安定性を損なわず、作業計画に応じた遠隔操作を可能にした。地形変化に対応した動作判断機能では、通信遅延が生じ、作業中の地形変化などがリアルタイムに把握できず、遠隔操作に困難が生じた場合、現地で計測したデータを基に、状況に適合した動作を自律・自動的に判断。複数建機の協調作業機能では、複数の建設機械への遠隔指示において干渉などの不具合があった場合、衝突回避などの応急動作を自律的に行う。

今回、これらの改造を施した建設機械を用いて、繰返し・定型作業、ならびに指定された地点間の移動・走行は自動運転で、細かい調整が必要な作業は遠隔操作で行うことで、月での無人による有人拠点建設の実現可能性を見出すことができた。

JAXAや鹿島建設など5者は、今回の成果をもとに、システムの機能・性能の向上を図ることでより現実的な技術を確立し、地上における革新的な建設作業を目指すとともに、宇宙での拠点建設の実現に向け、GNSS(衛星測位システム)が使えない月や火星での高精度な位置推定技術、正確な地形認識技術、不安定な通信環境下におけるシステムの安定性確保など、さらなる研究開発を進めていく。

《纐纈敏也@DAYS》

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