【ボルボ V60クロスカントリー 新型試乗】垢抜けた今のボルボに“ハズレ”なし…河西啓介

スウェーデンの“いいとこ取り”

雪の箱根で見せた実力

なぜボルボの室内は居心地がいいのか?

ボルボ V60クロスカントリー T5
ボルボ V60クロスカントリー T5全 28 枚

スウェーデンの“いいとこ取り”

スウェーデンってどんな国? と聞かれたら、「社会福祉の制度が進んでる国だよね」と答える人は多いだろう。そう、スウェーデンをはじめとする北欧の国々は総じて社会福祉先進国だ。子育て、教育、高齢者のケアなどについての制度が手厚い。つまり基本的に“ちゃんとしている”国なのである

そのスウェーデンの国民車たるボルボは、やっぱり“ちゃんとした”クルマだ。1950年代に発売されたアマゾンは、世界初の3点式シートベルトを備えたクルマとして知られる。80、90年代にエステート(ワゴン)が日本で人気となった『240』や『740』などのモデルは、「実直」過ぎるほどの四角いカタチが特徴だった。あえて言えば、マジメだがちょっと“垢抜けない”というのがボルボのイメージだった。

だがいまのボルボは違う。むしろ世界のクルマの中で最も“オシャレ”なメーカーと言ってもいいだろう。もとよりインダストリアルやファッションの世界には「北欧デザイン」や「スウェディッシュデザイン」と言う言葉があるように、スウェーデンという国が持つデザイン力には定評がある。いまのボルボはまさにマジメな中身にスタイリッシュなデザインを纏った、スウェーデンの“いいとこ取り”と言えるクルマづくりをしている。

雪の箱根で見せた実力

ボルボ V60クロスカントリー T5ボルボ V60クロスカントリー T5
そのボルボのニューモデル、『V60クロスカントリー』に試乗した。「60」シリーズとしてはSUVの『XC60』が一昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲ったのは記憶に新しいだろう。そして昨年、エステートモデルの『V60』が登場したが、このV60クロスカントリー(CC)はV60の最低地上高を65mmリフトし、2リッター4気筒「T5」ユニットに4WDを組み合わせたモデルだ。

つまりこのV60CCは、SUVのXC60とワゴンのV60 の“中間”的なモデルとも言える。きっとこの3モデルで「どれがいいのか?」と悩んでる人もいるんではないだろうか。

ちなみに価格的にはV60CCの「T5 AWD」が549万円、「T5 AWDプロ」が649万円と、V60 T5の「モメンタム(499万円)」と「インスクリプション(599万円)」に比べそれぞれ50万円プラスとなっている。いっぽうXC60はそれぞれ614万円と709万円で、V60CCより60~66万円高い。価格的にもちょうど“中間”である。その辺りの整合性もやっぱり“ちゃんとしている”のだ。
ボルボ V60クロスカントリー T5ボルボ V60クロスカントリー T5
試乗した感想を端的に言えば、とても「頼もしく、優しい」クルマだった。兄弟車であるXC60およびベース車たるV60の出来のよさから考えても、V60CCが悪かろう訳はないと思っていたが、期待は裏切られなかった。

試乗したのは箱根の峠道が中心だったが、じつはこの日、4月だと言うのに季節外れの雪が降るという悪天候。だが考えてみれば、このV60CCを試すにはある意味ベストな条件だったかもしれない。

ところどころ雪がシャーベット状に残る路面でも、V60CCはまったく不安を感じさせずスイスイと走る。4WDであることはもちろんだが、V60より少し高いアイポイントも、こういう状況では安心感につながる。

なぜボルボの室内は居心地がいいのか?

ボルボ V60クロスカントリー T5ボルボ V60クロスカントリー T5
V60CCのエンジンは2リッター4気筒ターボで、最高出力は254psを発揮する。車体に対するパワーは十分で、8段ATとの組み合わせによる走りはスムーズかつスポーティーだ。ちなみに駆動システムはアクティブ・オンデマンドの電子制御4WDを採用し、通常は前輪駆動、必要に応じて最大50%の駆動を後輪に伝える。

先に「頼もしく、優しい」と言ったけれど、じつはいちばんの美点と感じたのは乗り心地のよさだった。足まわりは車高を上げるとともに、サスペンションもソフトにセッティングされていて、ワゴンのV60よりしなやかに仕立てられている印象だ。

たっぷりとしたレザーシートに包まれて運転していると、ココロは常に穏やかだ。かつてボルボのエンジニアに「ボルボの車内はなぜ居心地がいいのか?」と訪ねたところ、「冬が長いスウェーデンでは、常に室内で快適に過ごすことを考えているんだ」と返され、とても合点がいった。窓の外は雪が降りしきるなか、明るいベージュの室内でハンドルを握っていると、まさにそれが実感できた。
ボルボ V60クロスカントリー T5ボルボ V60クロスカントリー T5
僕なりの結論を言うなら、このV60クロスカントリーは「60シリーズ」においてベストバランスなモデルだと思う。乗員や荷物を乗せるためのユーテリティや走破性についてはXC60と遜色なく、タフさとエレガントさを絶妙に折衷させたスタイリングはV60CCならではの美点だ。

唯一足りないとすれば、XC60にはランナップされるディーゼルエンジンを選べないことだろうか。いずれにしても今のボルボには“外れ”がない。このV60CCに乗ってそれをあらためて感じた。

ボルボ V60クロスカントリー T5ボルボ V60クロスカントリー T5

河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。

《河西啓介》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. トヨタ『ランドクルーザー250』発売、520万円から…特別仕様車も
  2. マツダ、新型3列シートSUV『CX-80』をついに世界初公開 日本導入時期は
  3. トヨタ ランドクルーザー250 をモデリスタがカスタム…都会派もアウトドア派も
  4. <新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”をちょっと触って、聴こえ方を変える!
  5. 一気に200馬力以上のパワーアップ!? アウディのスーパーワゴン『RS4アバント』後継モデルは電動化で進化する
  6. アルファロメオ『ジュニア』がミラノ・デザインウィーク2024に登場
  7. ピアッジオが創立140周年、記念してペスパの特別仕様を発売---140台限定
  8. トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
  9. 【トヨタ ランドクルーザー250 まとめ】5種類のエンジンに注目、日本で選ばれたのは?
  10. 女性向けキャンピングカー「Nomad Lux」デビュー 5月3日初公開
ランキングをもっと見る