JRは整備新幹線の貸付料をさらに負担を 財務省歳出改革部会が提言

現在、金沢~敦賀間が建設中となっている北陸新幹線だが、総事業費の上昇で2018年度の評価では費用便益比が1以下となり、改善の必要性が指摘された。写真はJR西日本のW7系新幹線車両。
現在、金沢~敦賀間が建設中となっている北陸新幹線だが、総事業費の上昇で2018年度の評価では費用便益比が1以下となり、改善の必要性が指摘された。写真はJR西日本のW7系新幹線車両。全 1 枚

財務省は5月16日に初めて開催した「歳出改革部会」で、整備新幹線におけるJRの負担増などを含む提言内容を明らかにした。

歳出改革部会は、国の予算が肥大化することを防ぐための仕組みを検討するため、財政制度審議会に新設された財政制度分科会で、葛西敬之JR東海名誉会長が臨時委員に名を連ねている。

同会では、文教・科学技術や社会資本整備についての予算のあり方が話し合われたが、社会資本整備における整備新幹線については、建設中の北陸新幹線(金沢~敦賀)や九州新幹線西九州ルート(武雄温泉~長崎)が、総事業費の上昇により3月の再評価では費用便益比(B/C)が1を下回ることになったことから、整備新幹線のあり方について「より精緻な現地調査に基づくコスト見積もりや地元調整の完了を着工の条件とするなど、事業費の上振れリスクを可能な限り着工前に解消することを制度的に担保し、B/Cが着工後も確実に1を上回るようにすべき」と指摘。B/Cが1を上回っている北海道新幹線については青函トンネルを含めた高速化を早急に実現し、投資効果の向上を図るべきとした。

ちなみに、「B/C」(Benefit/Costの略)と呼ばれる費用便益比とは、公共事業における投資効果の妥当性を示す指標で、一定期間の総便益額を総費用額で割った数値。これが1を上回ると妥当とされており、整備新幹線では北海道新幹線(新函館北斗~札幌)が2017年度の評価で1.1、北陸新幹線(金沢~敦賀)が2017年度の評価で1.01だったが、2018年度では0.9に下降。九州新幹線西九州ルートは2012年度の1.1が2018年度には0.5と大幅に下降している。

北陸新幹線と九州新幹線西九州ルートのB/C低下は、大規模斜面対策が必要になったこと、既存道路を工事用進入路として活用できないといった事態が発生したこと、関係機関との協議や現地の精査に関する費用の増大したことなどにより、総事業費が上昇したことによるもの。

とくに九州新幹線西九州ルートは、武雄温泉駅(佐賀県武雄市)を境に東が在来線、西が新幹線フル規格としたため、フリーゲージトレインによる運行が検討されていたが、技術的な問題で頓挫し、武雄温泉駅での新幹線と在来線の対面乗換えとなったことも影響している。

ただし、両新幹線とも、残事業についてはB/Cが1を上回ることから事業の継続が見込まれている。

部会では「建設に係るコストへの責任感が薄くなっている可能性」があるとしてこうした総事業費の上昇を懸念しており、「建設と運営の一体的な実施や、整備新幹線事業と一体的な不動産事業等の推進など、民間資金・ノウハウを一層活用していく方法を検討すべき」としている。

また、新たな財源確保の手段として、整備新幹線を運営するJRに対しては、その貸付料を現行の30年からB/Cの計算期間と同じ50年とすること、貸付料の算定方法を「受益の範囲内」から連結対象事業による収益を加味することなどが提言されている。

なお、整備新幹線の貸付料の一部で2030年度まで賄うことになっているJR貨物への「貨物調整金」と呼ばれる支援金については「貸付料による支援に頼らない経営構造を早期に確立するため、JR貨物におけるモーダルシフト推進や物流サービスの拡大といった取組をさらに加速すべき」とした。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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