2020に向けた東京都の自動運転に関する今年度の動き…東京都戦略政策情報推進本部田尻貴裕氏[インタビュー]

2020に向けた東京都の自動運転に関する今年度の動き…東京都戦略政策情報推進本部田尻貴裕氏[インタビュー]
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東京2020オリンピック・パラリンピックを一つのマイルストーンとして数多くの政策が動いている。その中でも注目が集まっているのが「自動運転」だろう。これまで東京都では数多くの実証実験が実施された。ベンチャー企業などにスポットライトが当たる中、その舞台調整を行ってきたのが東京都だ。東京都は自動運転の実証実験について、実験の構想から実施までの相談などを一括して受け付ける“東京自動走行ワンストップサービス”を2017年9月11日に設置。2019年4月30日までに55団体より約457回の相談を受け、22件の実証実験の調整を支援してきた。東京2020大会の開催を来年にひかえる東京都は、今年度どのように動くのか。自動運転に関係する部署を調整する東京都戦略政策情報推進本部の田尻貴裕・戦略事業担当部長に聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

東京2020オリンピック・パラリンピック 日本の最先端技術を発信するショーケースに国と強力なタッグ


---:「自動運転」に取組む理由は?
田尻:自動運転システムは、国の成長戦略に位置付けられています。国と強力なタッグを組み、その環境づくりを進めていくことは有意義だと東京都は考えています。一方、東京都では、人口密度が高い都市部の交通の混雑緩和、23区外などの人口密度が低く高齢者などへの移動手段の確保が課題となっています。

東京2020大会は世界から注目が集まるので、自動運転をはじめとする日本の最先端技術を国内外に発信するショーケースを作り上げ、2020年度以降もレガシーとして育てていきたいと考えています。

実証実験の東京自動走行ワンストップセンター


---:これまでの主な取組みは?
田尻:東京都が自動運転の車両やシステムを持っているわけではありません。課題を解決するために、自動運転の車両や最新テクノロジーを持つ企業を支援することが役割だと考えています。

東京都では国と共同で「東京自動走行ワンストップセンター」を2017年9月に設置しました。実証実験を実施するためには、関係省庁、所轄警察、道路管理者、関東運輸局、関係市町村などと調整する必要があります。すべての関係者を調整することは時間と労力を要します。相談・調整などを一括して受け付け、スピーディに実証実験を進められるように後押しをする体制です。

---:全国的に見てもめずらしい体制ではないでしょうか?
田尻:数は少ないと思います。2019年4月30日までに55団体より約457回の相談を受け、22件の実証実験の調整を支援してきました。

2018年度の主な支援事例をご紹介しましょう。2018年2月25日に、ANAとSBドライブが、大田区羽田空港の空港管理道路で、日本初の遠隔型自動運転システムの公道実証。そしてNTTデータ、大和自動車交通、群馬大学が9月14、19、20日に江東区豊洲周辺で行った複数の自動運転車両を用いたオンデマンド移動サービスの実証実験です。

---:相談件数と実証実験数は世界的にみてもかなり多いのではないでしょうか。

“技術実証”のみならず“実用”に向けて公共交通事業者とともにビジネスモデルの構築


---:東京都の独自事業もあるのですか?
田尻:2018年度は「ビジネスモデルの構築に向けた調査検討(4000万円)」「実証実験に係る共同利用可能な設備調査検討(3000万円)」「自動運転の社会実装に向けた気運醸成およびニーズ等調査(1400万円)」に予算をつけました。

1つめの「ビジネスモデルの構築に向けた調査検討」をご紹介しましょう。はじめた背景は、これまでは“技術実証”が中心だったことにあります。規模が大きなもの小さなものを含めて自動運転技術が使えるかどうかがメインでした。

しかし実社会の社会課題の解決となるとタクシーやバスなどの“公共交通事業者と一緒に”実証実験を行い、ビジネスとして活用できる仕組みを作らなければなりません。そこでこのような要件を満たすプロジェクトを募集し、9件が集まり2件に絞りました。

1つはタクシー事業を行う日の丸交通とZMPがトヨタエスティマハイブリットを使って大手町から約5.3kmの一般道走らせる実証実験を2018年8月27日から9月8日に実施しました。一般の車両も普段通りに走る走行空間で、1500円の運賃をとったことが特徴です。乗客を一般から募ったところ約15倍の倍率になりました。

もう一つは、神奈川中央交通とSBドライブがオールドニュータウンの問題を抱える多摩ニュータウンで自動運転バスを2019年2月13日から22日の間に走らせました。定員は8名で1日12便を運行させたところ毎便ほぼ満席になり、老若男女問わず住民の方の関心の高さに驚きました。

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---:実証実験を通じてわかった課題は?
田尻:公共交通事業者とともに行ったビジネスモデルの構築で改めて認識した問題がいくつかあります。

バスやタクシーは、現在は道路運送車両法に基づいて営業しています。しかし自動運転の車両で営業運行する法律が日本にはありません。また乗客を乗せて走行するので、事故が起こった時の賠償責任の問題も整理する必要があります。

公共交通事業者はドライバーの高齢化や確保の問題を抱え、自動運転に高い期待を寄せています。汎用性の高い自動運転システムの開発と普及が進み、現状のコストに代替するかそれ以上の価値が創造でき、需要がでてきた時点で活用が進むといったプロセスが現実的だと思われます。

---:法整備、インフラ整備、システム開発、自動運転システムを活用する企業の組織体制や社会受容、そして都市交通会議での議論なども必要ですね。

2019年度の独自事業 支援額を拡充し2件を選出


---:2019年度の独自事業は?
田尻:昨年度に続き、1件当たりの支援額を拡充させ2件の実証実験を実施する「ビジネスモデル構築に向けた調査検討(6000万円)」、自動運転の一般市民向け試乗会とシンポジウムを行う「社会実装に向けた気運醸成事業(2500万円)」。そして新規に「自動運転が経済・社会に与える便益に関する調査・分析(1000万円)」に予算をつけています。

ひとつ目の「ビジネスモデル構築に向けた調査検討」で実証実験2件は、レスポンスで講演を行う頃には選出できていると思います。

東京2020オリンピック・パラリンピック直前にオールジャパンで約80台の大型実証


---:ショーケースとして東京2020オリンピック・パラリンピックを使ってどのように発信するのでしょうか?
田尻:日本自動車工業会に加盟する10社(スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業、ヤマハ発動機)が2020年7月6日(月)~12日(日)の7日間に大規模の自動運転の実証を行います。

この大型実証は戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の実証と連携していて、オールジャパンで取り組みます。

使用する車両は一般乗用車からはじまりトラックや小型モビリティまで自動運転レベル2~4相当のものを約80台走らせます。場所は羽田空港周辺、羽田空港から臨海副都心・都心部までの高速道路、臨海副都心地域です。

オリンピックは2020年7月24日(金)~8月9日(日)、パラリンピックは2020年8月25日(火)~9月6日(日)の日程で開催されます。本当は開催期間中に行ったほうがインパクトがありますが、ご存知の通り国内外からたくさんの観戦者が押し寄せるので難しい。この7月6日~12日の開催ですら非常に大きなチャレンジです。

東京都ではこの大型実証実験むけて、高精度地図、信号、白線、ガードレールなど、自動運転に必要なインフラを国と協力して整備を行っています。

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《楠田悦子》

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