【ポルシェ 911 新型】現代のテクノロジーで再構築した[デザイナーインタビュー]

ポルシェAG エクステリアデザイナーの山下周一氏
ポルシェAG エクステリアデザイナーの山下周一氏全 28 枚

ポルシェジャパンは新型『911』を発表した。そのキーワードは“Timeless Machine”だという。そこで、ポルシェのエクステリアデザイナーである山下周一氏にそのデザインについて話を聞いた。

ヘッドランプやリアランプに過去のモチーフを

----:ポルシェ911が大きく変わりました。そのデザインを見ると過去のモチーフがちりばめられているようです。まずはその点についてご説明ください。

山下周一氏(以下敬称略):伝統的な911、例えば930や964をモチーフとして、それらをいかに現代のテクノロジーで再構築できるかというところです。

例えばヘッドランプを横から見るとの上端に折れの部分を見ることができます。これは930や964のオマージュなのです。更にそれによってフェンダーが長く見えるという効果も生んでいます。

ポルシェ911新型デザイン開発スケッチポルシェ911新型デザイン開発スケッチリア周りでは一文字型のリアランプも930などのイメージをモチーフとしています。現代のテクノロジーを用いると、伝統的な911をモチーフにどういうものが作れるか。それが最大の見せ場といえるでしょう。

テクノロジーの進化で原点回帰

----:そこでお尋ねしたいのは、なぜいまそこにこだわったのでしょうか。いまのお話にあったヘッドランプをはじめ、インテリアも横基調になり原点回帰をイメージさせています。もともと基本的なシルエットで911と分からせてきた経緯があるのですが、あえて今回、より一層そこにこだわったのはなぜなのでしょう。

ポルシェAG エクステリアデザイナーの山下周一氏ポルシェAG エクステリアデザイナーの山下周一氏山下:ひとつには996以来テクノロジーを主眼にして縦型のセンターコンソールを採用してきました。しかし、テクノロジーが進化したことで、横型のディスプレイが採用できましたので、水平基調の中にそのディスプレイが使えるようになりました。また、あえてスイッチ類を、バウハウスをイメージさせるものを採用しています。奇しくも今年はバウハウス100周年なので、そういうところも多少はあるでしょうね。いずれにせよ、一番大きいのは現在のテクノロジーにより、伝統的な911のデザインに、新しい解釈が可能になったところが大きいと思います。

宝石を改めて磨きなおす

----:デザイナーとして、初期の911などのモチーフは取り入れたいものなのでしょうか。

山下:そうですね、再解釈という意味で、どこかには取り入れたいですね。

----:つまりそれだけ初期のモデルのデザインは優れていたということなのでしょうか。

山下:優れてもいますが、“伝統”といえるでしょう。時間を経過することによってそのデザインの持っている強さを現代的にどう解釈するかということです。ときが経った宝石を改めて磨きなおすと新たな美しさが表れてくるということです。

ポルシェ911新型デザイン開発スケッチポルシェ911新型デザイン開発スケッチ----:今回の新型911のエクステリアにおいて、もっとも特徴的なところを教えてください。

山下:伝統的な911はだいたいリアのトレッドの方が広くて前方はナローでした。しかし新型は初めて前後のトレッドがほぼ一緒になったのです。それによってフロントフェンダーの張り出しをより強調し、上から見たときのコークボトルラインが可能になりました。

従ってクルマが大きくなったにも関わらず、よりコンパクトに見えるようになっています。また911の見せ場はフェンダーです。特にリアフェンダーを見てもらうと非常に複雑な造形になっているにもかかわらず、見た目には非常にシンプルなデザインをまとっています。それと同じ解釈がトレッドを広げたことによって、表現できたことが一番のこだわりといえるでしょう。ポルシェAG エクステリアデザイナーの山下周一氏ポルシェAG エクステリアデザイナーの山下周一氏

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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