MaaSでは時間の正確さが大切オープンデータ化の必要性の共有を…ヴァル研究所取締役事業統括本部長菊池宗史氏

MaaSでは時間の正確さが大切オープンデータ化の必要性の共有を…ヴァル研究所取締役事業統括本部長菊池宗史氏
MaaSでは時間の正確さが大切オープンデータ化の必要性の共有を…ヴァル研究所取締役事業統括本部長菊池宗史氏全 1 枚

MaaSを語る際に肝となるのが経路検索だ。日本の経路検索サービスは独自の進化を遂げ高度に進化している。欧州と異なり鉄道やバスの公共交通を多くの場合は民間企業が担っているからだ。

MaaSに関して日本国内で既にパートナ―企業とともに数多くの取組みを始めている企業がある。ヴァル研究所だ。

そこで取締役事業統括本部長の菊池宗史氏にこれまでの取組みを通じて分かったことについて聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

MaaSでも裏方で支えるスタンスを貫く


---:どのような会社ですか?
菊池氏:公共交通の経路検索エンジン「駅すぱあと」のサービスを約30年提供しています。経路検索の会社がいくつかありますが、ヴァル研究所の特徴は裏方で駅すぱあとの仕組みを提案している点です。BtoBtoCに大きく舵をとっています。

例えば、ヤフーの経路検索の裏で駅すぱあとが動いています。不動産アプリや人材派遣で、仕事を探す際に今いる場所から半径何メートル以内にどのような物件があるのか、どのような仕事があるのかを検索する際に弊社の仕組みを利用していただいています。

また法人企業では月末に交通費精算を行う際に、駅すぱあとの検索エンジンを活用して効率化をお手伝いしています。

このようにヴァル研究所は”裏方で支える”ことに徹しているので、MaaSにおいても、いろいろな企業様との取組みが数多く出てきているのだと思います。フロントに立つのではなく、裏側でどんどん提案しながらお客さまとともに作っていきたいです。

---:MaaSにおいての具体的な事例は?
菊池氏:大きく2つに分かれます。

1つめは開発協業(MaaSをする企業を、駅すぱあとのエンジンを使ってもらい裏で支援する)。東京急行電鉄、JR東日本、JR東日本企画のMaaSアプリIzuko(いずこ)、小田急電鉄のMaaSの共通データ基盤「MaaS Japan」、JR東日本アプリなどです。静岡市でAIデマンド乗合交通の未来シェアの実証実験もそうです。

MaaSの経路検索エンジンの開発


2つめはMaaSに最適な経路検索エンジンの開発です。MaaSの経路検索エンジンと既存の経路検索の違いは、鉄道やバスの公共交通の経路検索に加えて、自転車や自動車のシェアリングなど新モビリティサービスが加わることです。この新たな動きに対して開発を行っています。「mixway(ミクスウェイ)」の取組みはその具体事例です。

「シームレス」に着目しています。どのエリアでも一つのMaaSで全国同じ機能で使えるように考えています。日本においてはMaaSレベル1の情報統合の部分がまだまだ行えていません。レベル2以上の予約や決済などに進むためにもレベル1にしっかり取組むことが大切だと考えています。

経路検索は出発地から目的地までのシミュレーションでしかありません。実際には遅延している場合もあります。しかしMaaSは複数の交通モードをつなぎ合わせて最適化するものです。そのため今以上に精度の高いリアルタイム情報との融合が必要となります。公共交通と他のモードとの乗り継ぎの際に、利用者は5~10分程度は待てるでしょうが、それ以上になると使わなくなってしまうでしょう。

情報の統合についてもう1点は「パーソナライズ」です。人に合わせて最適な経路検索を提供するものです。人の移動ニーズが多様化しています。また地方ではクルマを持たない高齢者の移動手段の確保が課題となっていますので、移動手段と人のマッチングに対するニーズも高まっています。

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MaaSでは時間の正確さがさらに問われる


---:MaaS関連での数多くの取組みを通して感じることは?
菊池氏:公共交通から自転車シェアなどの新モビリティサービスに乗り換える際に、利用者は“時間の正確性”を求めていることを再確認しました。

駅すぱあとの経路検索数の中でバスの検索は約5%にも関わらず、「バスが時間通りに来ない」「バスが行ってしまった」など利用者からの問い合わせは約7対3で電車よりもバスの方が多いです。

---:バス会社とともに“時間の正確性”を確保する勉強会や研究会などを開く必要がありますね。時間の正確性はどのように確保するのでしょうか?

菊池氏:情報としてしっかり提供することが大切です。そのためにもリアルタイム情報が非常に大切になります。オープンデータの流れは社会全体で来ているので徐々に改善されてきています。

オープンデータ化のメリットを共有することが肝


---:オープンデータでかかる負担は?

菊池氏:まずオープンデータ化を進めるためにも、オープンデータ化のメリットをきっちりと提案する必要があるかと思います。
オープンデータ化には、オープンデータ化を進める体制が必要ですので、そのうえで組織体制を変える必要が出てくるでしょう。そのバス会社によって余力があるかどうかで変わってくるかと思いますが、必要性を認識した体制構築が望ましいと考えます。

---:バス会社の多くはオープンデータ化の価値をまだ感じていないのではないでしょうか。社会の変化に合わせて経営戦略をつくったり、新しい取組みをしていく組織体制を作って人を配置しているバス会社は非常に少ないのが現状でしょう。

---:地方でMaaSに取組むメリットは?


菊池氏:デジタル化による効率的な運行が促進されること。また個々の事業者だけでは限界に来ています。地域全体で移動の総量を上げていくという機運が高まることは良いことなのではないでしょうか。

またマネタイズの仕方が多様化するので、住宅付きのMaaSなど地域にあった収益モデルが描けると良いなと思います。

---:プロモーションが苦手なバス会社なども多いので、利用者に対して利用促進につながるとよいですね。

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《楠田悦子》

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