「セダンは地味」を過去にする、ベントレー フライングスパー 新型の進化とは

ベントレー フライングスパー 新型
ベントレー フライングスパー 新型全 15 枚

6月11日、ベントレーは第3世代となる新型『フライングスパー』の詳細を発表した。彼らは新しいフライングスパーを「もっとも先進的でラグジュアリーなグランド・ツーリング・スポーツ・セダン」と表現する。この言葉からも、これまで以上にスポーツ性能が強調されたモデルであることが容易に想像できる。

新プラットフォーム“MSB”の恩恵

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その基本となったのは、ポルシェが中心となって開発した新プラットフォーム“MSB”にある。エンジンをフロントアクスルの後方に搭載するMSBは、いわゆるフロント・ミッドシップのレイアウトにより重量配分を改善。フロントオーバーハングを最小限に留めることで優れた回頭性も手に入れている。

MSBのメリットはこれだけではない。ギアボックスはデュアルクラッチ式となるために素早くダイレクトなシフトフィーリングが得られるほか、4WDの前後トルク配分機構に電子制御式マルチプレートタイプを採用したことで走行モードにあわせたトルク配分の調整が可能となり、必要とあらばエンジン・トルクのほぼ100%をリアに配分することもできる。

さらにエアサスペンションは3チャンバー式に進化。空気容量が従来型に対して60%も増えたために快適性重視のソフトな設定からハードコーナリング向けのハードな設定まで、これまで以上に幅広い可変幅を手に入れた。

可変技術といえば48Vシステムを用いたアクティブ・アンチロールバー・システム“ダイナミック・ライド”も忘れることができない。こちらはアンチロールバーンのスプリングレートを電子制御することで乗り心地優先からコーナリング優先まで足回りのセッティングを自由に変えられるという先進のテクノロジーだ。

そうしたなかで注目されるのが4WSシステムの投入である。低速域では前輪と逆相に後輪を操舵して回転半径を小さくし、高速域では前輪と同相に操舵してコーナリング時のスタビリティを向上させるこのシステムは、意外にもベントレーにとって初採用。いずれにしても、可変制御技術の幅が広がったことで快適性と操安性を高次元で両立させたモデルが完成したことは間違いないだろう。

グランド・ツーリング・スポーツ・セダンというメッセージ

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MSBはスタイリング面にも進化をもたらした。フロントホイールの位置が従来型に対して130mm前進したことでサイドビューのダイナミックな印象が強まり、グランド・ツーリング・スポーツ・セダンというメッセージを明確に打ち出している。

また、ホイールベースも同様に130mm伸びた結果、より安定感あるプロポーションが完成。ここに、従来型よりも直線的で水平基調のキャラクターラインを盛り込むことで、伸びやかさとスピード感を生み出している。まるでクーペのように大きく前傾したリアウィウンドウも新型のダイナミックな印象を強調している。

いっぽうでフロントマスクからはセダンに求められる威厳が感じられる。ここで用いられているデザイン言語は昨年デビューした『コンチネンタルGT』と共通だが、コンチネンタルGTよりもボンネット高を4~5cmほど高くするとともにグリルも天地方向に伸ばしてセダンらしさを表現。コンチネンタルGTではやや後傾しているヘッドライトの角度を垂直に近づけたことも、見る者にフォーマルな印象を与えるはずだ。

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「セダンは地味で不人気」という風潮へのカウンター

キャビンに目を転じれば、ベントレーらしい華やかなインテリアに心を奪われるだろう。

センターコンソール内のエアベントは、“ブルズアイ”という名の伝統的な丸形からBの文字をモチーフにした角形に改められた。しかもその造形は複雑な3次元形状で、クロームの輝きが室内の豪華さを引き立てる。ちなみに、この部分には新型コンチネンタルGTで登場したダイアモンド・ナーリングと呼ばれるエレガントな表面加工も可能とのこと。

このエアベント部分の両側を垂直に立ち上がったラインはダッシュボードの下側で両脇に広がり、そのままドアまでつながって伝統的な“ウィング・デザイン”を形作っている。

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ところで新型フライングスパーでは、このフロントドアへと伸びたラインが微妙な曲線を描いてリアドアにまで連なっている。この優雅な曲線も、リアパッセンジャーの目を楽しませてくれることだろう。

ベントレー・ファンであればすでにお気づきかもしれないが、プラットフォームのMSBを含め、新型フライングスパーはハードウェア面でもデザイン面でもその多くを新型コンチネンタルGTと共用しているが、ただそれらをセダン用にアレンジするだけでなく、さらに昇華させることで、部分的にコンチネンタルGTを上回るパフォーマンスやデザイン性を実現している。

彼らのそんな姿勢には「セダンは地味で不人気」という世間の風潮を一変させたいというベントレーの熱い思いが込められているように思えてならなかった。

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《大谷達也》

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