【ジープ ラングラー ルビコン 新型試乗】まさにオフロードのスーパーカーだ…中村孝仁

ジープ ラングラー ルビコン
ジープ ラングラー ルビコン全 16 枚

「ルビコン川を渡るという」という事の例えがある。ある重大な決断をするというような意味に使われるが、そんなルビコンという名前をクルマに付けてしまうあたり、その大胆さがうかがえるというものだ。

それにしてもルビコンとはよく名付けたものだ。ドライバーにとっては相当な覚悟を持って…と言うか重大な決断をしてクルマを走らせなければならない。つまり、「ここ、行ける?」みたいな場所を走り出す時に決断しなくてはならないというような意味で、ドライバーには相当なプレッシャーがかかるわけで、今回ではないけれど、僕自身、マジでここ行けるの?と言う恐ろしくハードのステージを、少し古い『ラングラー・ルビコン』でトライした経験がある。まあ普通ならまずクルマで行くような場所ではないし、何で敢えてそこを行かなくてはならないか正直意味不明なわけだが、そのレベルの道なき道でもこのラングラー・ルビコンなら行けてしまうのである。

まさにオフロードのスーパーカー

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通常のラングラーと比べてどこがどう違うかと言うと、まずは専用のギア比が与えられたロックトラック4×4システムを備えていること。ローレンジの変速比は通常の2.717から4.000へと引き下げられ、最終減速比も3.454から4.100へと、こちらもローギヤード化されている。

さらに前後アクスルにはヘビーデューティー仕様の「DANA44」というアクスルが装備され、専用の17インチホイールにマッドテレインタイヤが装着される。このマッドテレインタイヤ、普通のタイヤとは少し違う。一般的にタイヤの接地面というのははがき一枚分の接地面積を持つタイヤと地面の接触面を言うが、マッドテレインタイヤの接地面はこの一般的な地面との接触面のみならず、タイヤのサイドウォールも走行する場所によっては接地面となるため、実はそこにもトレッドパターンが刻まれているのである。

というわけで、このルビコン、まさにオフロードに特化した高性能を持つジープ・ラングラーというわけだが、「今時そんなところに分け入るもの好きはいないよ」と仰るあなた。確かにそんなオフロード性能は今の我々には必要ないかもしれないが、ならば最高速度350km/hだの、最高出力700psなんていう性能だって当然全く必要ないわけで、要するに究極のパフォーマンスを愉しみたいから人はスーパーカーを買ったり、このルビコンのようなクルマを買うわけで、普通のジープにはない、特別な世界観を持ったクルマだというわけである。

言い換えれば、オフロードのスーパーカーである。

他ジープモデルに不可能でもルビコンには「朝飯前」

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今回はその卓越した走りの性能を、富士の裾野にあるオフロード特設コースで試してみた。もっとも、試乗に訪れるメディアにしてもすべてがオフロードの専門家というわけではないので、設定されたコースはこのルビコンにとっては正直朝飯前のコース。それでも前日までに降った雨の影響で、ぬかるみが激しく一部コースは他のジープが登れないという理由で、本来登りで試すコースが下りとなるなど、ルビコンと他のジープの性能差が如実となっていた。

用意されたコースはモーグルと呼ばれるコブを走破するコース。さらにはそれに続いてバンクの付いたオフロード。そして例のぬかるみの坂を下り降りる林間コースに、最後は距離の長いアップダウンの激しい山岳コースである。

モーグルでは本来コブを降りた時にその車輪と対角線をなす前または後ろの車輪が大きく地面から離れるのだが、ルビコンの恐ろしく長いサスペンションストロークは、ほとんど路面から離れない。他のモデルはここで大きく車輪を持ちあげていたのだが…。

続くバンクのあるコースでは車体の傾きが25度になるところまで試すことが出来た。もう少し上に上がれれば富士の30度バンクのオフロード版である。こんな状況で前述したマッドテレインタイヤが効果を発揮する。車体が25度に傾いても路面をしっかりと掴んで離さない。同じ場所にオールテレインタイヤを装着した他のジープで入ると、ずるずると重量の重いフロントから下にずり落ちていくのだ。

タフさと恐ろしく強靭な足回りを味わう

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続いて山林に分け入るコースでもヒルディセントコントロールで設定スピードを3km/hにして走ると、ドライバーはこの急坂をまるでACCでもついているかのように、正確にスピードを保ったまま降りてくれる。その安心感たるやまさに無類。

そして山岳コース。時々岩肌がむき出しとなる荒れた路面だが、ここもまあ言ってみれば朝飯前で通過してしまう。とまあ、ルビコンに言わせればこの程度では全然音を上げませんよ、的なコース設定ではあったのだが、そのタフさと恐ろしく強靭な足回り、それに力強い走りが堪能できた。

確かにこのラングラー・ルビコンは特別なクルマであろう。しかしそれがスーパーカーのスーパーカーたる所以。まさにオフロードのスーパーカーである。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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