【ドラレコが記録しない!】あおり運転に高齢者事故。証拠として役に立つと注目度上昇中、売り上げ倍増のドライブレコーダーである。しかし! 肝心なときに記録されていないという現象が勃発中。なぜなぜ、どうして?
これは、ドライブレコーダーメーカーさんに聞くしかないというわけで、販売台数が多い、JVCケンウッドさんに聞いてみた。
記録できないと、本体が壊れていると責められがちだが、SDカードに問題があるケースも多く、理由は大きく3つに分けられるそうだ。
1)壊れている=SDカードの端子が損傷していることが多い
2)指定と異なるSDカードを使用=本体にきちんと刺さっちゃうからわからない。
3)劣化
1)と2)は、わかるけれど、3)劣化と言われても? クルマは10年10万km保証がほとんどなんだし、SDカードもそのくらい保つんじゃないの? と、うっかり言ったらJVCケンウッドさんに、「甘い、甘すぎます!」と、叱られた(うそ)。でも、寿命は私の想像をはるかに超える短さだったのである。
ドラレコで使用しているSDカードが「劣化しやすい」理由
SDカードの記録方式は主に4つ。
1)SLC=1つのセルに1ビット(2つのデータ)を書き込む
2)pSLC=同上
3)MLC=1つのセルに2ビット(2×2で4つのデータ)を書き込む
4)TLC=1つのセルに3ビット(2×2×2で8つのデータ)を書き込む
※LCはLayer Cell。S=Single、p=pseudo(スードと発音して、疑似という意味)、M=multi、T=triple。1)は高額、2)~4)と順に価格が安くなる。
TLCは、激安として売られるSDカードに多いのだが、ひとつのセルに3ビット(8つのデータ)を書き込むため、劣化が激しいのだそうだ。じゃ、SLCと比べてどのくらい劣化するかというと、うーん、4倍書きこむわけだから、寿命は4分の1? と思ったらとんでもない!
1)SLC=200倍
2)pSLC=100倍
3)MLC=10倍
4)TLC=1
(※TLCを1とした場合の書き込み回数イメージ)
えっ、TLCって、SLCの200分の1?
ちなみにこれは、衝撃を受けてドラレコが記録をする回数ではない。SDカードの中には書き込むためのセルがたくさんあるのだけれど、全部のセルに書き込んだら、もう一度、最初のセルから上書きをしていく、という数字である。
SDカードには、8Gとか16Gとか容量があるけれど、数字が大きいほどセルの数が多くて上書きの順番が回ってきにくい=劣化しにくいということだ。
じゃ、SDカードに書き込むとはどういうことで、いつやっているかというと、デジカメで使うときは、シャッターをきったとき。ビデオならRECだ。そして、一般的なドラレコの場合は、エンジンをかけた瞬間から、ずーっと。え、ずっと? そう、ずっと。エンジンをかけているあいだ、ドラレコはSDカードにずっと書き込み続けているのである。そして、衝撃を受けたときだけ、その前後何秒間を保存する仕組みなのだ。
なんというハードワーク。そりゃ、デジカメなどのほかの機器に比べて、ドラレコで使用しているSDカードが劣化しやすいはずである。
いざという時のためにできること
そして怖いのは、デジカメやビデオは、撮影したらすぐに確認するけれど、ドラレコの場合、撮れているかどうか頻繁に確認しない(私はドラレコ歴14年目だが、一度も確認したことがない……)。そして、SDカードの寿命が終わっていることに気が付かず、事故など、人生がかかっているタイミングでの記録を取り損ねるという大事態が引き起こされるわけである。
こうならないためには、どうすればいいか?
1)本体にあった指定規格のSDカードを選ぶこと。
2)取扱説明書をちゃんと読んで、書いてあるとおり定期的に(私のは2週間に一度)フォーマットを行うこと(使えなくなったセルをリフレッシュして、SDカードの機能をうまくつかいこなせるようにする)。
3)SDカードは消耗品であることを理解して対応すること!
では、消耗品だというSDカードはいつ、交換すればいいか? 少なくとも私のドラレコは、SDカードの寿命が尽きて書き込み不能になっていても、警告などは出ない。定期的にドラレコから抜き取って確認するしかないのだ。
SDカードの寿命ついては、クルマの使い方、つまり、エンジンをかけている時間に個人差があるので、目安の説明がむずかしい。ちなみに、MLCの場合、次の車検までもたないような使い方をしている人は多いらしい。私も今回、改めて自分のドラレコの取説を読んだら、「毎年交換を推奨」と書いてあった。がーん。
こうなってくると、いざというときのためにSDカードは最低でもMCL、できれば寿命が長く価格もそこそこのpSLCを選んでおきたい。どのタイプかは、商品のパッケージやSDカードメーカーのサイトで確認できることもあるけれど、激安TLCは(どういう意図だか)記載がないものが多いようなので要注意である。
SDカードは消耗品
なんか、面倒くさいなあ。
JVCケンウッドさんが熱心に説明してくださっているというのに、無精者の私はぼんやり思っていた。だって、いつ寿命が切れるかわからなくて、ドラレコから抜き取ってパソコンにさして確認するなんて、私のようなPC音痴にはうんざりなんだもの。
すると、JVCケンウッドさんが「うちでは、SDカード寿命告知機能搭載型があります!」と教えてくれた。ドライブレコーダーがSDカードの交換時期を教えてくれるのである。おお! なんて便利!
これ、いいなあ。しかも、このタイプの存在を知ることで「SDカードって寿命があるんだ!」とユーザーが認識し、正しい使い方の啓蒙にもつながる。さすが志高きメーカー!(注・タイアップ記事ではありません)。
愛車の12か月点検や車検では、SDカードが正常かどうかまでチェックしてくれない。自分でやるしかないのだ。いざというときのドラレコ。SDカードは消耗品と理解して、ちゃんと使いましょう……って、私か。
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
※SDカードの書き込み回数について、数字に誤りがあったため修正いたしました。