カラートレンド予測 2019-2020…テーマはACT/9、そろそろ新しいシルバー系が BASF

BASFコーティングス事業部カラーデザインセンターアジア・パシフィックチーフデザイナーの松原千春さん
BASFコーティングス事業部カラーデザインセンターアジア・パシフィックチーフデザイナーの松原千春さん全 8 枚

BASFは、アジア太平洋地域を含む世界の自動車カラートレンド2019-2020を発表。今回のトレンドは“ACT/9”とされ、未来の様々な変化に対する積極的な取り組みを反映したテーマのもと、シルバーをはじめとした幅広い色域が提案された。

【画像全8枚】

 ◆カーデザイナーの発想の一助に
 ◆ポストデジタルの次のステップへ
 ◆ブルー、グレーに加え、シルバーが注目
 ◆デジタルが生活を変え、人間の生き方を尊重…温もり感のあるカラー
 ◆社会問題も個々でも取り組む…少し強めのクリアなカラー
 ◆感情を楽しませてくれるテクノロジー…ミステリアスなダーク系
 ◆新たな塗料の技術開発も

カーデザイナーの発想の一助に

BASFコーティングス事業部はドイツ、北米、インド、タイ、中国、そして日本にカラーデザイナーが駐在し、毎年世の中の動きや最新のファッション、政治、経済、社会的な出来事が色に及ぼす影響について分析。その結果をもとに、BASFの顧客である自動車メーカー各社に向けて今後の自動車のカラートレンド予測を毎年行い、塗料を紹介している。

このカラートレンドを毎年行っている目的は2つ。同社コーティングス事業部カラーデザインセンターアジア・パシフィックチーフデザイナーの松原千春さんによると、ひとつは「量産モデルに向けたカラーのヒントになること」という。各自動車メーカーのデザイナーが、「自分が考えたコンセプトにあっているような色を見つけてもらえれば、そこから開発ができるので、お互いに開発工数が少し短縮できる」と述べる。

もうひとつ、提案の中には新たな技術などを盛り込んだコンセプトカラーやプロトタイプのカラーがある。これらは即生産ラインには乗せられないものだが、「自動車メーカーのデザイナーの発想の手伝いになるのでは。また、今後こういう価値観の色もあるのではというデザインのインスピレーションになればと提案している」と説明した。BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9

ポストデジタルの次のステップへ

さて、2019-2020のカラートレンドのテーマは“ACT/9”だ。昨年のテーマである“Keep it Real 現実にしよう!”は、AIスピーカーなどバーチャルな、デジタルな世界が我々の実生活の中にすでに浸透して来ており、デジタルなどといちいち意識せず生活の一部に融合して来ている。そういった、よりリアルな世界、現実世界に着目し、意識が変わっていくことがメインのテーマだった。

今回はそこからかなり進み、「積極的に(AIなどで)未来を形作っていく姿勢、新しいものを取り入れて実際に私たちの生活の中で使っていくというイメージだ。新しいことにも怯むことなくアクティブに行動を起こして取り入れていく、かなり前向きでポジティブなイメージのテーマだ」と松原さん。

もう少し具体的に説明すると、ポストデジタル時代が到来し、様々な技術が登場。こんな技術があるのかと驚いたり嬉しくなったりする気持ちがあった。その後、どのメーカーからも同じような技術が出てきて、より手に入りやすくなった。つまり、今後はテクノロジーそのものよりも、我々人間が生きていく上でそれらをどう使うのかという次の段階に入ることになる。つまりACT/9は、「今後アクティブに次の段階に進んでいくイメージを示している」というのだ。このベースには、人間中心、ヒューマンセンターが大きなキーワードになっている。そのテクノロジーで何ができるのかから、人間にとって最適な環境を作るにはどのテクノロジーを使えばいいのか、どう組み合わせていけばいいのかが重要なのだ。

そして、新しい時代に向けて創造していく力強い行動を、「“ACT、行動や姿勢、気持ち”という言葉で表し、そこまで来ている時代の予感を9とした」という。因みに10としなかったのは、「10ではゴールのイメージ。まだゴールではなく、ポストデジタルの時代が今到来し、その技術を使って生活を新しいステージに向上させるそのひとつ手前のちょっとわくわくしたようなところを、一歩手前の9という数字で表現した」と述べた。BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 アジアパシフィックのキーカラーBASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 アジアパシフィックのキーカラー

ブルー、グレーに加え、シルバーが注目

こういった背景をもとにカラーでは、「人を中心とした温かみのある色域や意匠が中心になる。また、我々がテクノロジーを使いこなすことによって、ライフスタイルや生き方の選択肢がすごく増えていくことから、豊かな個性や生き生きとした新時代を象徴するような自由な発想のカラーがメインになる」と松原さんは分析。

より具体的にカラーに落とし込むと、まずこれまでと同様ブルーやグレーの傾向も強く、「特にブルーはボリュームが増えてきており、ブルーだけではなくブルーグリーンは世界的にも電気自動車メーカーなどがクリーンなイメージとしてブランドカラーとして取り入れられてきている」とコメント。

そして、今後のもうひとつの傾向として「シルバー、そしてグレーが注目されるだろう」という。特にグレーは、「様々なテクスチャーも出てきており、少しずつ伸びている。同時にそのグレーの派生としてシルバーもあるだろう」。一方、ホワイトに関しては「少し定着して伸びが収まってきた」と話す。

実は現在、シルバーのバリエーションはとても少ない。松原さんも、「どのくらい先に出てくるかは我々も様子見だが、新しいシルバーを今から用意しておかないと間に合わなくなる」と語る。

なぜ現在シルバーのバリエーションが少ないのか。松原さんは、「シルバーは進化がし難いカラーだからだ」という。シルバーはアルミを使う量が最も多く、アルミをある一定量入れないとグレーになってしまう。さらにシルバーの色域で新たな材料、例えば「パールを入れたとしてもシルバーに負けてしまう」と解説。

しかし最近は、「シルキーに見えるアルミや塗装技術も進化してきて、シルバーの色域の中でも幅広くなった。さらに、今までシルバーとはあまり呼ばれなかった少し暗めのカラーもシルバーの定義に変わりつつある。これからは今までできなかった表現のシルバーを量産化への可能性が出てききており、実現できればシルバーも見直されるだろう。もちろん10年前や20年前に見たシルバーと同じものが出てくるとは思っていない。何らかの新しい表現が必要だ」とした。BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 SIFTBASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 SIFT

デジタルが生活を変え、人間の生き方を尊重…温もり感のあるカラー

このACT/9のテーマをもとに、大きく3つのコンセプトが作られた。ひとつは“SIFT”として、Individuality & Identity、個性を中心にしてどう変わっていくか、どう動いていくかである。「人間的価値の尊重。個性、老若男女問わず皆さんの個性をリスペクトしていくイメージだ」と説明。

「基本にはデジタルがあり、様々な技術革新によって新たな視点を持つことができた。それは機能としての生活も変えてきている。しかし、それだけではなく新しいテクノロジーが我々の考え方も変えていっている。そういったデジタライゼーションなどによる新しい視点や柔軟な考え方がここでのテーマだ」とし、「人間的な価値や生き方を尊重する傾向が社会的にも高まっている」と述べた。

そういった一例としてテレワークなどが挙げられ、「これもテクノロジーがあってできるようになった。コンピューターがあれば都会でなく田舎に住んでいても仕事はできるとい考えなど、様々な選択肢によって働き方、行き方、生活が見直すことができるようになった。個人の自由意志で人生を選ぶことが可能になった環境がある」と話す。

このグループでは全体として温かみのある、温もり感のある人を中心としたカラーがメインだ。我々人間が心地よいと感じる自然の中にあるものからインスピレーションを得たものもある。一方、鮮やかさという面では、「少し抑えて心地よい程度の鮮やかさといったが中心だ」。

アジアパシフィックのテーマカラーとしているのは白っぽいシルバーだ。「パールのような雰囲気もある滑らかな感じのシルバーで、これは変化の中においても色々な自分の個性を活かしながら選択し、しなやかに生きていくような人々の柔軟性を示しているカラーだ」と説明した。BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 RENDER!BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 RENDER!

社会問題も個々でも取り組む…少し強めのクリアなカラー

2つ目のテーマは社会やインタラクション、コミュニケーションといったところを反映した“RENDER!~大胆でスマートな変革”だ。

コミュニケーションや社会も技術の影響を受け、SNSなども変化してきている。消費の仕方も例えば電子マネーなどによって日本においても変わりつつある。松原さんは、「社会においても新しい発想や価値観を刺激して次の段階へと行こうというもの」とコメント。

例えば、プラスチック問題においても、「政府がリードすると同時に、一人一人の気持ちでも社会環境や社会的問題を意識し、自分の生活に取り入れていく方々も増えている」と述べ、「老若男女みなが社会においてリスペクトして、みなで生きていけるようなサスティナブルな社会を作っていく。社会問題にも自分のこととして取り組んでいくような姿勢がテーマだ」と話す。

ここでのカラーの傾向は、少し強めになるという。「意思を持って自分の行動に責任を持ち、表現していく。そして行動していく勢いがクリアな色で表現されている」と松原さん。同時に、「公平さや、社会性を求めるような明るめのブルーや、テクノロジーや考え方を武器として使い、新たなことを実現していく力強さを少し粗めのグレーなどの強めのカラーで表現している」と説明。

一部柔らかいカラーも見られるが、「サスティナブルな社会を作っていく、また街のインフラももちろん変わっていく。高齢者が事故を起こさないようなクルマはどういう技術が必要なのか。これも技術ありきではなく、そういうクルマを作る、そういう社会や街を作るためにはどういう技術が必要なのか。人間を中心に置いた考え方で、街作りのインフラも変わっていくので、柔らかいカラーにおいては人工的かつサスティナブルに変化していく都市のムードを表している」と話した。BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 SHAPEBASFカラートレンド2019-2020 ACT/9 SHAPE

感情を楽しませてくれるテクノロジー…ミステリアスなダーク系

最後は“SHAPE~人に寄り添うテクノロジーの創造~”として、テクノロジーや発展していく技術的なところを強く反映したグループだ。

イノベーションに対する意識は技術革新から、人の欲求をどのように満たして能力を高めていくかという方向にシフトし、人間がどのように使うかが求められる。同時に利便性や有益なものというテクノロジーだけではなく、我々の感情を楽しませてくれるテクノロジーもどんどん使われていくだろう。

松原さんは、「人間の脳の仕組みはあまり解明されていないとよくいわれるが、例えばVRなどを使うことで脳の意識、無意識のところに直接働きかけて感じさせたりする。そういったテクノロジーの進化を考えると、人間自身の能力、物の感じ方はどのようになっているのかなど、今まで解明されていなかったところにも、力が注がれていくのではないか」という。

さらにAIや人型ロボット、Androidとの共生が進んでいくだろう。その時に「我々がどうやって使うのか、その倫理観やロボットにも人権があるのではないか、また、人間の責任範囲はどこまでなのかといった難しい問題も出てくるのは必須だ。こういったことも受け入れ、賢く考えながら、これからは人に寄り添うテクノロジーの創造を、難しい面も含めてポジティブにとらえて取り組んでいく方向に進むだろう」と予測。

そういったことを踏まえ、「未来の技術を予感させる、ミステリアスなイメージのダークカラーがある。全体的には無彩色系が多いが、少し柔らかい浮遊感のある明るい無彩色系もあり、これはVRやARによる体験、イメージによって呼び起こされる我々の原始的な感情や、直接無意識の中に受ける影響など、直接的に我々の感情に訴えかけるようなテクノロジーに対してのリアクションを表現している」と松原さんは語る。BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9BASFカラートレンド2019-2020 ACT/9

新たな塗料の技術開発も

もうひとつ今回の特徴はカラーではなく塗料の新技術だ。松原さんは、「新しいテクノロジーが自動車業界の中にも色々出てきたので、それを踏まえると塗料としても考えていかないといけない」という。例えばコネクテッドカーのレーダーやカメラなどの機能が正確に作動するかどうかは塗料にも関係する。そういったことをはじめとした様々な技術が取り入れられたカラーが提案された。その中にはかなりインパクトのある色域もあったが、松原さんは、「決してその色が流行るということではなく、自動車の技術的なトレンドに合わせていかに機能的にも満足させられ、かつ、色域としても新しいところを狙ったものをどうやって表現できるのかにチャレンジしている」と述べ、今後は色域と共に自動車の最新テクノロジーに対しての提案も行っていくことを示唆した。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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