6万台のトラックがつながる…UDトラックスのスマートロジスティクス

UDトラックスのコネクテッド戦略
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EVや燃料電池車は、じつは乗用車よりバスやトラックにとってこそ重要かつ実用的な技術といえる。ルートや時間がスケジュールされており、インフラの整備が利用範囲や用途が特定しにくい乗用車より、実用技術の展開が容易だからだ。

同様なことは自動運転とコネクテッドについてもいえる。つまり、ダイムラーが最初に使い始めたという「CASE」は、商用車向けの用語といっても過言ではない。なお、シェアリングについては議論する以前に、企業所有が原則のバス、トラック、タクシーはシェアリングモデルによって成り立っている。

ボルボグループ傘下のUDトラックスは、この点に早くから着目し、グループの共通プラットフォームを活用し、国内に6万台、全世界では100万台以上のコネクテッドトラックを走らせている。UDトラックスは、11日、その概要を説明する記者向けのプレスラウンドテーブルを開催した。

内閣府SIP第2期ではスマート物流が重要テーマ

冒頭のあいさつでは、UDトラックス シニアバイスプレジデント サティッシュ・ラジクマル氏が「コネクテッドによる物流革命はさまざまな社会問題と企業の課題を解決する」と述べ、重要戦略のひとつであることを強調した。

次に、内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)で、自動運転・ADASに関する委員会委員を務める清水和夫氏(モータージャーナリスト)が、SIPにおける取り組みを紹介した。今年から第二期となるこのプロジェクトでは「スマート物流」も重大テーマのひとつとなっている。清水氏は、東日本大震災のときJARTICの情報が遮断され、交通管制に混乱をきたした時、民間のプローブカーの情報が役に立った事例から、コネクテッド機能の重要性を説く。

さらにSIPでは、5G技術の活用や分単位で更新されるダイナミックマップの議論・研究もされているといい、コネクテッド機能の物流への可能性を示した。

5GについてはNTTドコモ 5Gイノベーション推進室 中村武宏氏がプレゼンを行う。日本では2020年から5Gサービスが開始されるが、この技術は産業界の課題や地方の問題にとって重要だとする。それは、5Gが得意とする高速大容量通信は、消費者向けのサービスより、自動運転のための高精度3Dマップデータや大量の動画やビッグデータを扱う事業者など、まずは都市部やエリアを限定した応用ニーズが高いからだ。

V2X、コネクテッドカーへの応用は、自動運転地図の他、多数車両の同時自動運転制御、遠隔車両操作、コネクテッドカーを基地局化した移動局および通信のオフロード(帯域分散)といった活用が期待されているとする。その中で、自動運転が発達すると車内でのコミュニケーションやエンターテインメントのニーズも高まる可能性があることも強調した。

この取り組みのわかりやすい例として、AR技術によってアバターを車内に登場させ、リアルタイムで会話をする事例が紹介された。日産自動車と共同で行った実証実験であり、リアルタイムでVR画像を移動体の中でやり取りするというもの。この実験での通信速度は1Gbpsだったそうだ。

外部識者によるコネクテッドカーのプレゼンの他、UDトラックスから、同社のコネクテッド基盤やサービスについても解説された。登壇者は、冒頭であいさつしたUDトラックス シニアバイスプレジデント サティッシュ・ラジクマル氏とコネクテッドソリューション部 部長 シェティ・ライ・チャンドリカ氏、同部ビジネスアナリスト森弘一氏。

プレゼン内容をもとにUDトラックスのコネクテッドカー基盤について解説する。

コネクテッドに必要な基盤

コネクテッドカーの基盤として必要なものは、まず車両の情報を収集してネットワーク(クラウド)に接続するしくみ。これは、既存のCAN(車載ネットワーク)上のECUや各種センサーと、車載通信モジュールが担当する。クラウド側には集まった情報を分類・整理して保管するしくみと、それを利用するための分析ツールや可視化のためのレポート機能が必要だ。

一般的にコネクテッド基盤のコアといえばここまでとなる。しかし、これだけでは大量に収集されたビッグデータが整理され使える状態になっただけで、本当に必要なのは、事業者がこのデータによって、生産性と経営効率の最大化である。ようは、積み荷やルートを最適な状態にしたり、車両の故障やメンテナンスを制御できるようにしたり、ドライバーの健康管理をしたり、事故や災害時の対応を可能にしたり、といったことだ。

UDトラックスのコネクテッド機能では、例えば燃費情報や道路情報(登坂など)をリアルタイムに監視し、ドライバーにアクセルやギア操作について運転アドバイスを行ったり、数値データを与えたりしている。

ECUからの車両の詳細データは、部品やコンポーネントの状態を把握できる。これらを分析することで、故障を予測し、予防整備のスケジューリングに役立てることができる。突発的な故障は、起きてからの対応と修理による機会損失が大きい。クリティカルな業務では、壊れないうちからの予防保守や交換は常識だが、物流においてもトラックの稼働率向上、ダウンタイムの削減は生産性と利益に直結する。

事故や故障時の状況把握が細かくできれば、対応処理の最適化、部品手配や修理スケジュールの調整にも役立てることができる。

日本ではあまりなじみがない機能では、ジオフェンス機能がある。GPS情報と連動させ、大型トラックなどが侵入禁止の市内、交通規制がかかったエリアへの侵入を禁止する機能だ。関連機能については、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)では、ISA(インテリジェントスピードアシスト)でも議論されており、信号機強調による速度制御、スクールゾーンでの自動スピードリミッターの技術が検討されている(清水氏)。

クラウド基盤の可能性

これらは、アプリケーションとしてクラウド上にソフトウェアとして構築され、事業者やドライバーが利用する。必要なら、スマートフォンやタブレットの専用アプリも利用する。

UDのコネクテッド基盤の特徴は、クラウドの情報等にアクセスするAPI(プログラム向けの接続口)が開発者に開放されているので、ソフトウェアベンダーも運行管理や配車サービスといったアプリケーションを開発可能なことだ。これにより、事業者ごとのアプリやオープンなサービスへの広がりが期待できる。

この基盤はボルボグループとしてグローバルに展開されるもので、アプリやサービスは国をまたいで利用できるものだ。類似のコネクテッド基盤は、トヨタも持っている。MSPFという名前だが、クラウンやカローラがMSPFを利用して、ディーラーサービスなどに付加価値を提供している。MSPFは、同時にマツダやスバルなどにもOEM提供され各社のクラウドサービスを実装する基盤として利用されている。

ボルボグループのクラウド基盤も同様に開放されているが、現状、ライバルとなるダイムラーやフォルクスワーゲングループも各社のクラウド基盤を持っており、現状はグループ内の基盤として機能している。しかし、国際的にはコネクテッド基盤の標準化の動きもある。統一基盤の構築は難しいが、データ連携の可能性は残されている。

《中尾真二》

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