【空飛ぶクルマ】MaaSの切り札を新しい産業として丁寧に育てたい…経済産業省 製造産業局 総務課 課長補佐 伊藤貴紀氏[インタビュー]

【空飛ぶクルマ】MaaSの切り札を新しい産業として丁寧に育てたい…経済産業省 製造産業局 総務課 課長補佐 伊藤貴紀氏[インタビュー]
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2年ほど前に始まった「空飛ぶクルマプロジェクト」は、国土交通省と経済産業省が連携し、民間企業や研究機関とともに、2023年までの空飛ぶクルマの事業化を目指して活動している。

すでに、先行技術開発は進められており、2020年の東京オリンピックでは聖火点灯に空飛ぶクルマを利用できないか検討も行われているという。プロジェクトの現状はどうか、課題はあるのか。プロジェクトを担当する経済産業省 製造産業局 総務課 課長補佐(空飛ぶクルマ)担当の伊藤貴紀氏に聞いた。

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「空飛ぶクルマプロジェクト」はどのようにして始まったのですか。


伊藤氏(以下同):空の移動、輸送の場面では、これまで航空機が議論の中心でした。しかし、ドローンの進化が新しい市場をつくり、自治体や企業も活用し始めるなど、空の移動、輸送について変化が起きています。さらに自動車における自動運転や電動化といった動きやMaaSに象徴されるように移動のあり方を根本から変えてしまうような動きも加わり、新しい広がりを見せています。

経済産業省として、自動化や電動化が空の世界にも大きな影響を及ぼすのではないかという問題意識から、新しいプロジェクトとして「空飛ぶクルマ」の議論が始まりました。空飛ぶクルマをどう実現し、社会実装していくか。これを検討し実現するために、経済産業省、国土交通省が調整役となり、2018年8月に官民協議会を立ち上げました。

現在、プロジェクトはどのようなステータスにあるのでしょうか。


プロジェクトに参加する民間企業のうち、メーカーやベンチャーなどが中心となって空飛ぶクルマの機体、および必要な技術開発を行っています。開発ポイントは、航続距離や騒音対策、パイロットレスを前提とした自動飛行と運行管理の技術、そして安全性・信頼性の確保の3つです。

試験飛行や機体の開発で欠かせないのが規制当局との連携です。必要な法律の整備、制度や体制づくりも欠かせません。例えば、空飛ぶクルマは、自動化や電動化といったこれまでの航空機とは異なる技術的な要素を持ち、これまでの航空行政そのまま空飛ぶクルマに適用するわけにはいきません。国交省は必要な法整備、空飛ぶクルマ向けの枠組みを検討しています。

現在、先行技術開発と行政による制度づくりが並行して進んでいます。制度を適切に設計していくために重要なのは、事業者によるビジネスモデルの提案とそれに基づいた制度の検討です。

プロジェクトメンバーにはどのような企業がいますか。


ボーイング、エアバス、JAL、ANAといった大手航空会社、ベンチャー企業では、SkyDrive、プロドローン、テトラ・アビエーションなどが名を連ねています。他にも、スバル、川崎重工などの航空機メーカー、楽天やUberのようなサービス事業者も参加しています。技術開発と事業開発に必要な企業はひととおりといったところです。

そのような企業から、空飛ぶクルマに関して行政側への要望は多くでているのでしょうか。


具体的なビジネスがまだなので、各論的な指摘や要望は多くありません。ただ、例えば機体認証やその他制度設計は、国際的な枠組みとの整合も踏まえつつ、現実に即した内容にしたいと思っています。

将来的には空飛ぶクルマの航空管制を既存の航空管制と統合する必要があるのではというような議論も進められています。

国内において、空飛ぶクルマを使った事業やニーズは見えているのでしょうか。


まず現実的なのは物流への応用です。離島など交通や物流に制限のある地域で、道路整備が必要ないドローンに対するニーズはあります。次に地方での移動手段としての空飛ぶクルマです。例えば、地方の交通課題に対して旅客用途の空飛ぶクルマへの期待があります。最後に都市部での移動という展開になっていくのではないでしょうか。

セミナーでは、どのような話をする予定ですか。


今述べたのはプロジェクトにかかわる国内の状況ですが、セミナーでは世界の空飛ぶクルマ事情、海外のプレーヤーの状況も紹介する予定です。例えば、海外では、UBERが市街地に商業施設と一体となった空飛ぶクルマのポートを設けるような計画も明らかにしており、設計会社とも連携して検討を進めています。

国内では、空飛ぶクルマは新しい交通手段、輸送手段を提示するものであり、MaaSの切り札となりうるものです。新たな市場、産業をつくっていくために新たな取組にも積極的に取組んでいくつもりです。一方で人命や財産にもかかわる問題なので、期待だけ煽るようなことはせず、社会へのPRもしながらじっくり丁寧に育てていきたいと思っています。

空飛ぶクルマを実際に飛ばすのは企業であって、行政ではありません。他方で、空飛ぶクルマを社会に実装するためには制度整備が必要です。空飛ぶクルマを飛ばすために必要な官民協議会の取組についてもお話できればと思っています。

「空飛ぶクルマ」のキーマンが登壇するセミナーは7月22日開催。詳細はこちらから

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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