【ホンダ N-WGN 新型】すべてをゼロから見直す理由…商品企画担当[インタビュー]

ホンダ N-WGN
ホンダ N-WGN全 8 枚

ホンダは軽ハイトワゴンの『N-WGN』(Nワゴン)をフルモデルチェンジした。その開発は全てゼロからスタートしたというが、なぜそこまで見直したのか。商品企画担当者に話を聞いた。

良い生活をお届けしたい

ホンダ N-WGNホンダ N-WGN

----:先代N-WGNからは大きくイメージが変わりました。徹底的にユーザー調査を行い、ゼロから開発をスタートしたとのことですが、では、今回のフルモデルチェンジをするにあたり、最初に考えたことはどういうことだったのでしょう。

本田技研工業日本本部商品ブランド部商品企画課チーフの安達晃三氏(以下敬称略):それはN for lifeです。Nシリーズ全体のコンセプトでもあるのですが、本当にお客様に伝えたいことは良いクルマを持って欲しいということよりも、良い生活をお届けしたいということです。そのことを最初に考えました。

ホンダ N-WGNホンダ N-WGN

----:その時に、先代の振り返りも行ったと思います。そこで何か気づきがあったのでしょうか。

安達:初代が出た時にはトップクラスの装備や機能が搭載されていました。走行性能や燃費性能、室内の広さ、安全性能もトップクラスだったので、一時期はシェアトップでした。しかし、他社がより商品強化をしてきましたので、どんどん追いつかれてしまったのです。今回はそこからさらにもう一段階進歩させなければいけません。そこで、いろいろな調査を繰り返しながら、お客様に良い生活を届けるためにもう一度ゼロからコンセプトやデザインを含めて見直し、どのような強化をすべきかを決めていったのです。

ホンダ N-WGNホンダ N-WGN

予防安全性能が弱点

----:2代目のシェアは軽ハイトワゴン市場で5位ぐらいだったそうですが、他車と比較してN-WGNの強みは何だったでしょうか。

ホンダ N-WGNホンダ N-WGN

安達:衝突時の安全性能はJ-NCAPでファイブスター獲得していますので、そこは大きな強みです。また、居住性もN-BOX譲りのシャシーを使いながら、広い空間作りも他車と比較してある程度優位性はあったと思います。

ただ一方で予防安全性能は、残念ながら衝突軽減ブレーキも30km/hまでしか対応していないなど、一世代古いシステムを使っていましたので、昨今のニーズには応えきれていなかったのです。

ホンダ N-WGNホンダ N-WGN

----:では一番やりたかったのは安全面の強化だったのかでしょうか。

安達:そうです。様々なお客様がいる中で共通することは、安心して乗っていただくところです。これは誰にとっても、どんなクルマにとっても嬉しいこと。そこで真っ先に最先端のものを搭載する決定をしました。

ホンダ N-WGNホンダ N-WGN

自分の生活に馴染むシンプルなデザインを求めて

----:デザイン面においても先代から大きくイメージが変わりました。なぜここまで変えようと思ったのでしょうか。

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安達:これまでのN-WGNや他車もそうだったのですが、どちらかというと登録車に近づいていこうという思いがありました。少しキリッとした目つきをしてサイドのキャラクターもズバッと入れて、少しでも強く大きく見せたいという思いです。

それはそれでひとつあるのかもしれませんが、一方で本来のハイトワゴンのお客様を見つめた時に、本当に登録車的な価値観のデザインを求めているかをゼロから疑ってかかったのです。強く大きく見せたいデザインが欲しいのか、それよりも自分の生活に馴染む、調和する洗練されたシンプルなデザインが欲しいのか。

ハイトワゴンのお客様は大きいクルマに乗りたいのに、我慢して(軽ハイトワゴンに)乗っているわけでは必ずしもなく、軽が好きという方もたくさんいるのです。そうであれば、軽なりの魅力を押し出すようなデザインがあってもいいのではないか、その考えに合うデザインの提案がデザイナーからあったのです。

----:すごく思い切った決断ですね。

安達:そうです。そこまで自信を持って決断できたのは、お客様の立場に立って考え、我々が独りよがりにこれがいいだろうといっているわけではないからです。

本当に様々な調査も行いましたし、お客様からのヒアリング、開発途中段階でクリニック(発売時期前にその新型車と現行車、競合車を並べ、ターゲットユーザーに評価してもらう調査)も行いました。そういうところも全部含めて、このデザインならいけると自信を持って決断したのです。

ただし、社内でも(強く大きく見せたい案との)両方の意見がありました。両方のクリニックをやりながら、将来的なトレンドを鑑みると、他の業界でもそういうことは起きていることがわかりました。携帯などにしてもいっぱいボタンが付いていてこれはすごいだろうというよりも、よりシンプルで洗練されたiPhoneみたいなものや、AIスピーカーなどの流れを見ても、自分の生活に馴染むようなトレンドの方が強くなるのではないかと読んだのです。

----:N-WGNがここまで大きく変わったということで苦労もあったと思います。

安達:デザインの“ガラチェン”では、先代N-WGNも決して評判は悪くありませんでしたし、むしろあれがカッコイイという方もたくさんいらっしゃいました。そのデザインを大きく変えるというのは非常に勇気のいる決断ではありました。

----:強く大きく見せたいデザインから、自分の生活に馴染む、調和する洗練されたシンプルなデザインへの変更について安達さんご自身はどう思いましたか。

安達:個人的にすごく共感できる、まさにそういう世界がいいなと思っています。今の世の中はすごく便利な一方で、情報がたくさん入ってくるようになりましたので、何が大切なのかわからなくなったりしてしまいます。それよりも本当に大事なもの、好きなものを少なくていいからしっかりと自分の手元に置いて、豊かな生活を作るという考え方は個人的にも好きですし、N-WGNのコンセプトはそこに結構近いのかなという気がしています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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