大型トラックのレベル2自動運転はなぜ難しかったのか…三菱ふそう・ダイムラーの技術

スーパーグレート2019年モデルにレベル2自動運転
スーパーグレート2019年モデルにレベル2自動運転全 5 枚

三菱ふそうトラック・バスは24日、大型トラック『スーパーグレート』に国内初となる「レベル2」自動運転技術を搭載すると発表した。乗用車ではあたりまえとなりつつあるレベル2自動運転。大型トラックの場合多少勝手がちがうようだ。発表内容から、同社およびダイムラーグループの関連技術について掘り下げてみたい。

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ダイムラーグループにおける自動運転の技術開発

レベル2自動運転は、おおまかにいうと、アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープコントロール(LKC)を組み合わせた運転支援システムということができる。カメラやセンサー等で車線や先行車を認識し、アクセルとブレーキ、そしてステアリングを制御しながら車線と適切な加減速・停止・再発進を行う。

大型トラックの場合、ACCを搭載した車種は各社ラインナップしているが、車線逸脱、レーンキープについては、ワーニングやブレーキ制御までは行っても、ステアリングの積極介入による方向制御まで行うものは市場投入されていない。

三菱ふそうでは、この秋にもレベル2自動運転に対応したスーパーグレート2019年モデルを市場投入する。これを実現する技術をアクティブドライブアシスト(ADA)と呼んでいる。ADAは、プロキシミティコントロール(ACCに相当)とLDP(レーン逸脱警報システムにステアリング制御を加えたもの)がベースとなる。

ダイムラーグループでは、欧州のメルセデスベンツトラックが開発の指揮をとり、北米のダイムラートラックアメリカ、日本(アジア)の三菱ふそうトラック・バスの3社が技術を持ち合い、自動運転技術を研究開発している。ダイムラーでは、法整備と道路事情、ニーズから北米を自動運転技術の中心と考えている。事実、北米ではテスラのセミの実験やTuSimpleの自動運転トラックがUPSの定期便(公道での営業走行)での走行実験が進んでいる。

レベル4以上の自動運転トラックの市場投入は、おそらく北米が先行するはずだが、日本は右ハンドル車の実験や車両制御技術開発で協力している。なお、ダイムラーではレベル3自動運転はドライバーや事業者のメリットが少ないとして手がけない予定。

センサー類はダイムラーグループで共通化される

自動運転のインフラコンポーネントとなる各種センサーは、「グローバルセンサーセット」と呼ばれ、独自の基準により設計・開発している。センサーセットのハードウェアは、サプライヤー製品を調達するのではなく、ダイムラーの仕様で各サプライヤーに作らせている。つまり、自動運転に関する技術は内製が基本となり、センサーハードウェアについては、独自のプラットフォームを持っていることになる。

搭載されるソフトウェアは、前述3拠点ごとに細かいチューニングを行う。国やエリアが異なると、車線の色、形状、幅、長さ、標示の規格も異なる。道路のつくりや街並み、気候風土も異なる。カメラ等、センサー情報の判断、制御の味付けは各国ごとに行う必要があるからだ。

2019年モデルのスーパグレートに搭載されるカメラユニットもグローバルセンサーセットのひとつだ。特徴は単眼カメラながら、センシング機能は強化される。従来からの自動ブレーキ、ACC機能に必要な前走車の距離、速度の検知に加え、対向車、前方の駐車車両、歩行者、自転車の識別・検知が可能になった。

自動運転においてカメラによる画像認識をメインにする制御はテスラなどが採用し、グローバルでのひとつの方向性を示している。三菱ふそうも衝突被害軽減ブレーキにミリ波レーダーを併用したり、側面障害物検知(巻き込み防止)にミリ波レーダーを使ったりしているが、レベル2自動運転では、画像センシングにシフトした形だ。

大型トラックは車線の余裕が少ないので車線維持が難しい

カメラを利用する利点は、車両、自転車、歩行者、建物、その他多様な物体の認識がしやすいことだ。レーダーでは対象の形状はわからない。LiDARはレンジが近い範囲であることと、対象の形状(点群)はわかるが、それがクルマなのかハコなのかを識別するには情報が足りない。新しいカメラユニットは、感度や解像度の強化、プロセッサを2つ搭載するなどし、歩行者の識別、夜間等での識別性能の向上を実現している。

乗用車では一般的になったレベル2自動運転が、大型トラックへの搭載が遅れている理由のひとつに、物理的な車体の大きさ・重さという問題がある。同じ車線の幅でも、大型トラックと乗用車では、制御できる範囲が異なる。大型トラックはすこし動いたり、制御が遅れたりするだけで車線をすぐにはみ出してしまう。

ボルボトラックスは、フライバイワイヤーによる電子制御ステアリングで自動運転に必要な繊細な制御を実現しようとしている。三菱ふそう(ダイムラー)では、従来型の電動アシストつきのパワーステアリングシステムを利用するが、制御ECUを独自に開発し、前述のカメラユニットからの情報を利用して車線の曲率を予測した制御を行う。また、加速度センサーによりヨーモーメントも測定しており、実際のクルマの動きも制御にフィードバックしている。このため、トラックの重さ(積載によって重量が変わる)や路面状況による違いもある程度吸収できる。

レベル2自動運転に対応するスーパーグレード2019年モデルはこの秋にも発売が開始される予定だ。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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