「サポカー限定免許」あり?なし?そもそもサポカーの定義とは【岩貞るみこの人道車医】

衝突被害軽減ブレーキを搭載するクルマのイメージ。(写真はスバルレヴォーグ)
衝突被害軽減ブレーキを搭載するクルマのイメージ。(写真はスバルレヴォーグ)全 4 枚

【サポカー限定免許に反対!】高齢者による死亡事故の報道が過熱するのを受け、サポカー限定免許を設けるという案が出ている。

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まず「サポカー」とは、何か? 被害軽減ブレーキがついたクルマを、「サポカー」。それに加えて、踏み間違い加速抑制装置もついたクルマが、「サポカーS」である。

さらにサポカーSは、被害軽減ブレーキの性能によって3段階に分けられ、一番上の「ワイド」は、対歩行者にも対応している被害軽減ブレーキであるほか、車線逸脱警報と先進ライトがついている。

正式名称は、「セーフティ・サポートカー」。安全性が向上することから、経産省と国交省を中心にサポカーと呼んで普及促進活動中。ユーザーに購入してもらうべく、機能を知ってもらうキャンペーンを行うほか、幅広い車種からユーザーが選べるよう、サポカー率を上げていこうというものだ。

具体的には、2020年までに被害軽減ブレーキの新車搭載率を9割以上とする目標を設定。さらに国交省は国連にも働きかけ、世界的に被害軽減ブレーキの基準案(性能や使い方の基本を統一)の合意をとりつけると同時に、2019年内に、日本国内での被害軽減ブレーキの義務付けに向けて動いている。

また、踏み間違い加速抑制装置については、新車だけでなく、すでに販売されたクルマにも対応しようということで、後付け装置を開発するよう、7月5日に自動車メーカーに指示を出している。

ちなみに、後付けの被害軽減ブレーキについては、現在のところ動きはない。ブレーキ制御まで入れるのは技術的にもハードルがものすごく高いし、たとえできたとしても何十万円(~百万円を超える?)になって、普及の見込みが低い(ユーザーが買える額にならない)からだ。

サポカーに「できないこと」

サポカーSにも種類があるサポカーSにも種類がある
こうしたクルマのサポカー化は、いいと思う。ペダルの踏み間違いは年齢に限らず起きているし、特に高齢者の場合は大事故につながりやすいので、これはありだと思う。

問題なのは、このサポカーを「事故削減のミラクルなクルマ」だととらえている動きがあることだ。

経産省のサイトを見ると、サポカーができることを紹介しているけれど、サポカーができないことには、触れていない。

●被害軽減ブレーキは、「衝突の可能性が高い場合には、自動でブレーキを作動します(一部抜粋)」
●踏み間違い加速抑制装置は、「前方の壁や車両を検知している状態でアクセルを踏み込んだ場合、急加速を防止します(一部抜粋)」

これを併せて読むと、「前方に車両を検知して、衝突の可能性が高い場合は、急加速を防止して自動でブレーキが作動する」と解釈できてしまう。だって、人間は、自分に都合のいいように解釈する生き物だからだ。

だけど、実際はそうじゃない。ええ、違います!

被害軽減ブレーキは、運転者がアクセルを踏み込んだら止まらずに加速するし、踏み間違い加速抑制装置は、“発進時”や“超低速時”にしか作動しない。

つまり、池袋や福岡で高齢者が起こした暴走死亡事故には、まったく効果がないのだ。

そもそも「普通免許での運転が不安な人」って…

だというのに、これらが装着されたサポカーはミラクルで、前述のような事故がどんどん抑制されると期待を抱く人がいっぱいいる。そのあげくの果てが、高齢者への「サポカー限定免許を導入せよ!」という、はあ?な意見の登場である。

そりゃね、ないよりはいい。それは間違いない。でも、75歳以上の高齢者が起こす死亡事故のうち、ペダル踏み間違いによる死亡事故は、わずかに5.4%(2018年)。踏み間違い加速抑制装置のついたサポカーSだとしても、5.4%以下しか死亡事故は防げない。

高齢者の死亡事故が多いのは、出合がしら衝突や、正面衝突、路外逸脱など。つまり、一時停止しなかったり、反対車線に出てしまったりだ。でも、何度も書くけれど、サポカーでは、こうした事故は防げない。サポカーSのワイドには、車線逸脱警報がついているけれど、あくまでも警報。クルマが自動的にずっと車線を維持してくれるわけじゃない。

サポカー限定免許を導入するとなると「普通免許でクルマを運転させるには、不安があるけどサポカー限定ならいい」という形になるはず。でも、普通免許での運転が不安な人の多くは、一時停止しなかったり、反対車線走っちゃったりという人だ。

彼らにサポカーを運転させても、事故は減らない。そりゃ、なにもついていないクルマよりは、事故は減るけれど、池袋や福岡のような事故や、出会いがしらや路外逸脱事故は、発生し続けるのだ。

結論。

サポカーが増えることはいい。でも、サポカー限定免許とは、まったく別の話。どうせやるなら、軽くて速度制限を設けて、衝突エネルギーを下げるクルマの開発&免許制度を検討してもらいたいのである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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