自動運転では3倍増加すると予想の車酔い、防ぐための技術開発とは…ZF

ここで注目されるテーマのひとつがクルマ酔い。従来はドライバー自身が運転操作に直接関わっていたため、次にクルマがどんな挙動を示すかはすべて予想できた。しかし、自動運転ではこれが難しく、クルマがいつ、どんな挙動を示すかを乗員は予想しにくくなり、これが結果としてクルマ酔いを引き起こすとも予測される。ZFの研究によれば、現在クルマ酔いを経験する人の比率は30%程度だが、自動運転が普及した将来はこれが90%に跳ね上がると考えられているらしい。
こうした問題に対処するため、ZFでは複数のソリューションを検討している。ひとつは、これからクルマが右折もしくは左折することをあらかじめ乗員に知らせる方法。そのひとつとして展示されていたのが、非接触で人に振動を伝える装置。これは、空気を振動させる素子を多数配置し、その焦点に当たる部分に人間が知覚できる程度の振動を伝えるというもの。これでクルマが曲がる方向を事前に知らせることでクルマ酔いを減らそうというアイデアだ。そのほかにも音声によってこれから曲がる方向を示してクルマ酔いを防止する技術も提案された。
クルマ酔いを防ぐもうひとつの方法は、方向転換や路面の凹凸によって起きるクルマの挙動を抑え込むことにある。幸いにもZFはサスペンション、ブレーキ、ステアリング、電動駆動装置などのデバイスを多数手がけている。そこで、これらの動きを統合制御することでクルマの姿勢変化を最小限に抑える研究が行れている。イベント会場では、アクティブサスペンションや4WSを統合制御してスラローム時にもロール量を極端に抑えるシステムのデモンストレーションが行なわれたほか、たとえばスピードバンプ(住宅地などでドライバーに車速を落とさせるために路面に大きな凹凸を設けたもの)が前方にあることを道路標識で認識すると、あらかじめアクティブサスペンションで車高を上昇させ、スピードバンプをスムーズに乗り越えるシステムが展示された。
いずれも、自動運転用のカメラシステムから各種シャシー・デバイス、パワープラントまでを手がけるZFならではの発想といえるだろう。
《大谷達也》