【懐かしのカーカタログ】甘々な時代の若者心を掴んだ…マツダ ファミリア(5代目)1980年6月

マツダ ファミリア(5代目 1980年6月)のカタログ
マツダ ファミリア(5代目 1980年6月)のカタログ全 5 枚
『マツダ3』から遡ること2銘柄。前身の『ファミリア』時代にとくに人気を博したのが5代目だった。“赤いファミリア”と言えば通じるのも大したものだが、1980年代初頭の甘々(あまあま)な空気感の真っただ中で、当時の若いユーザーの心をおおいに掴んだのだった。

◆飛ぶ鳥を落とす勢いだった“赤いファミリア”


写真のカタログは1983年1月のEGI仕様が設定されたマイチェン時のもの。ページを開くと“スポーツごころのメディア、新型ファミリア。発信TO YOU”などの文面が踊り、写真も、これでもか!とばかりにスポーツを絡めた仕立てになっている。

ちなみにこの『ファミリア』を追撃すべくトヨタが82年5月に登場させたのが『カローラII』で、CMにはどうだ!とばかりにテニスのジョン・マッケンローを起用した。

エピソードにも事欠かなかったのも注目で、『カローラ』『サニー』を追い抜き国内月販台数No.1を記録(82年3回、83年5回!)したほか、27か月で累計生産台数100万台達成(VWゴルフは31か月)など、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのマツダ車でもあった。第1回日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーにも選出されている。さらに83年6月になると、1.5リットルEGIモデルに115ps/16.5kgーmの性能を発揮するターボを設定。

さらにターボ登場と同じタイミングで、当時認可されて間もない“ドアミラー”と“60タイヤ”も装着された。“323”のエンブレムとともに輸出仕様のドアミラーに交換するこだわり派がいたのもそんな頃の話だ。

◆平和でいい時代の若者のためのクルマ


実車は、先代の“X508”から打って変わった直線基調のクリーンで明快なスタイリング。ボディタイプは3ドア、5ドア、そして4ドアのノッチバックセダンの3タイプを設定した。マツダ車のレシプロエンジン搭載車では初めてのFF(フロントエンジン・フロントドライブ)ということで、メカニズムもこだわり、組み合わせられるリヤサスペンションには“SSサスペンション”と呼ぶ、コーナリング時のトゥ・アウトを吸収するリンク構造を採用し、安定感の高いスポーティな走りをモノにしていた。

装備面では、上級グレード(セダン含む)のリヤシートに“ラウンジソファシート”と呼ぶ、シートバックを曲線を描くトリムと連続させて寛ぐことのできるデザインを採用。XL以上のグレードは、面白いことにアルミホイールはオプション扱いながら、電動式スライディングガラスルーフが標準装備された。

インパネに“パームツリー”のミニチュアを飾ったり、リヤウインドゥにレインボーや“Boat House”のステッカーを貼ったりした赤や青の『ファミリア』が、東京・青山通りや、湘南・国道134号線あたりや葉山のデニーズの駐車場に溢れて……。平和でいい時代の若者のためのクルマだった。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 空冷ポルシェで1台2億円!? マニア垂涎『シンガー911 DLS』とは
  2. 「TWIN TURBOのロゴ懐かしい!」Z32ファン感涙、レトロ感あふれる新型『フェアレディZ』が話題に
  3. ヤマハ、V4エンジンを搭載した新型「YZR-M1」を初公開! MotoGP サンマリノGPに投入へ
  4. 顔が激変! BMWの最小SUV『X1』改良新型、ノイエクラッセ導入へ…プロトタイプを初スクープ
  5. 一人乗りマイクロEV「EQV-TREK」発売、355kgの軽量ボディで航続110km…107万8000円から
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る