【トヨタ カローラ 新型】ユーザーの若返りとグローバルモデルとの両立…デザイナー[インタビュー]

トヨタMid-Size Vehicle Company MSデザイン部主幹の高澤辰達男氏
トヨタMid-Size Vehicle Company MSデザイン部主幹の高澤辰達男氏全 16 枚

フルモデルチェンジしたトヨタ『カローラ』。そのデザインは先代から大きく変革した。その理由について担当デザイナーの、トヨタMid-Size Vehicle Company MSデザイン部主幹の高澤達男氏に話を聞いた。

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これみよがしではない躍動感を目指して

----:12代目となった新型カローラは、11代目から大きく変革し、新しいカローラの世界観を表現しようとしているように見えます。なぜここまで変わったのでしょう。

高澤氏(以下敬称略):先代のアクシオとフィールダーは5ナンバーサイズの中でダウンサイジングしながらも、ユニバーサルデザインを基軸に、このサイズの中で最大の空間と、乗り降りもしやすいように最大の寸法を実現させました。Aピラーも10代目よりも120ミリ手前(室内側)にして視界を良くし、運転もしやすくしています。こういうクルマがカローラのお客様に求められていると考えて開発をしました。しかし販売面や人気ではメーカーの期待値にまでは届かなかったのです。良いクルマだったとは思うのですが……。

また、購入したユーザーも年齢中央値は60歳を超えていましたので、今回はもう少しお客様を若返らせて、多くのお客様に親しんでもらいたいと考えています。ターゲットユーザーも30代から40代ぐらいに設定しました。

これまでミニバンに乗ってきて子供が手離れした方々、あるいはSUVに乗っている方でも振り向くようなクルマにしていこうと、今回は『プリウス(現行50系)』で使っているTNGAのCプラットフォームと同じものを使っています。この骨格は非常に低重心でワイドスタンスをもたらしますので、少しエモーショナルでスポーティな方向にできます。その点とターゲットとするお客様も若い方にしようということが合致して、少しスポーティな方向にシフトしたエクステリアデザインになりました。

さて、そういう骨格を持っていますので、“体幹”(人間でいう背骨のようなもの)が表現できていると思います。そこでデッサンができたところで、スタイリングとして、上屋はプランビューで見たときに前後の絞りをしっかりつけました。そうすることでフェンダーが出っ張ったような印象になりますので、より体幹が良いことがしっかりと表現できます。そういうところがスポーティなのです。

そして、サイドのショルダーラインをウェッジさせ、その下の映り込みが後方に向かってわずかに下がっていくような印象を与えることで、蹴り出すイメージを表現しています。そういうところからもスポーティさを表現しています。

また、ツーリングではサイドウィンドウの形が後方に抜けるようなイメージと、ショルダーのところにしっかりと軸を通すことで、グローバルで売っているカローラよりもサイズが小さいものの、凝縮した中での伸びやかさが表れています。

このカローラで目指したのは、これみよがしではない“感じる躍動感”、見ているとじわっと“やはりスポーティだ”という良さを感じてもらえるようにすることでした。トヨタ・カローラトヨタ・カローラ

グローバルモデルとしての選択

----:いまカローラを購入しようと思っている人達はスポーティさよりも使いやすさが前面に出ている方を好むようにも感じます。そこでカローラを選ぶような若い人たちにあえてスポーティさで訴求するよりも、もっと質実剛健みたいな方向もあるのではないかと思いますが。

高澤:おっしゃる通りその方向性もあると思います。ただし今回はグローバルモデルとしてひとつのクルマで進めていきますので、その中で最大売れるクルマはどういうクルマなのか。そこからこの方向性を導き出しています。もちろん国内を無視しているわけではありません。そういう意味でも、これみよがしにスポーティに作ると“えっ”となってしまうので、そうではなく、じんわりくるようなイメージ、きちんと分析するとスポーティなイメージに仕上げているのです。

----:つまり、スポーティさが前面に出ているがゆえに乗り心地が悪そうだとか、室内が狭そうだなと感じさせないように、面の張りや形状などでスポーティさを“何となく”感じさせていこうということですね。

高澤:そこが“感じるスポーティ”です。体幹をしっかりすることでクルマの基本がきっちりしている。そこにフレーバーとしてちょっと動きを与えるだけで、ものすごい動きを感じるようになるでしょう。

従って『カローラスポーツ』の方はもう少しわかりやすく、リアフェンダーは大きく膨らませたりしています。このあたりはヨーロッパのハッチバックと競合していかなければいけませんので、存在感を出すようにしているのです。実をいうと全幅も広げており、セダンは1745mmに対し1790mmです。その結果、欧州のハッチバック達と並んでも引け目を感じないと思います。また、そういうクルマを選ばれるお客様は(セダンやツーリングよりも)もう少し若いお客様なので、そこまで全幅はシビアでないだろうと判断しました。トヨタ・カローラトヨタ・カローラ

3ナンバー化への判断

----:全幅の話が出ましたが、今回は3ナンバーサイズになりました。その理由は何でしょう。

高澤:30系プリウス(先代)は当時月に2万台まではいかないもののかなりの数が売れ、幅広いお客様に受け入れらたという判断のもと、30系プリウスと同じ全幅1745mmとしました。一方50系プリウスは1760mmともう15mm増えています。ただし、新しいプリウスのようなカテゴリーのクルマは全幅が大きくなっても許容してもらえるでしょうが、カローラという名前になると、今回ターゲットユーザーは30代から40代とはいいつつも、実際に乗る方は60代の方々もいらっしゃいます。するとそこまで大きいとちょっと……、ということにもなりますので、30系プリウスの1745mmをひとつの基準にして作りました。

そのクルマの環境を踏まえながら

----:欧州仕様は全幅1780mmですが、そこから1745mmにするというのはすごく大変なことだと思います。

高澤:いろいろ苦労がありました。当初グローバルボディを開発して、そこから日本仕様のナローボディも検証しながら作っていきました。そのときに大きく2つの環境を踏まえて開発しました。

まず日本と海外とで光の強さの差があります。日本はそれほど強くないのに対し、特に北米のカリフォルニアなどは非常に強いのです。

次にその国で走っているクルマのボリューム感があります。例えばアメリカ車を日本に持ってきたとすると、かなり大きく“わっ!”という印象になりますよね。ドアもすごく厚みがあって。そういう中で戦っていかなければならないので、グローバルのカローラはある程度寸法がないとなかなかそこまでの表現ができないです。

では、国内にグローバルで販売しているカローラをそのまま持ってきたらどうでしょう。きっと“えっ!”となってしまうと思います。カローラはいままで1695mmという全幅を守ってきましたので、そこからいきなり約1800mmになりますと、もうそれはカローラではないとなってしまうでしょう。そういうことを踏まえると、どこまで許容されるかということになっていきます。国内で走っているクルマ達はどこまでボリューム感があるかというと、グローバルで売っているカローラほどボリューム感がなくても戦えるという判断がありました。

光の話では、ドアハンドルの下あたりに日本仕様は削ぎ面を入れています。その一方、グローバルモデルではショルダー部分はより張らせていますが、リアフェンダー上部は日本仕様の方が張り出しています。こういったことは、日本はそれほど光が強くないということを踏まえ、陰影をしっかり見せることで、光が弱いにもかかわらずスッキリとラインが通っているように表現しているのです。グローバルモデルは全て量感で見せているのに対し、日本仕様はキャラクターラインで見せているといった方がわかりやすいかもしれません。

----:キャラクターラインをキーに陰影をつけているということですね。例えばこの日本仕様をそのままアメリカなどに持っていったらかなりきつく見えるでしょうね。

高澤:確かにアメリカだときつく見えるでしょう。たぶんギスギスして痩せた感じに見えると思います。アメリカ車などのあれだけ量感のあるものの中ではグローバルモデルで戦います。またアメリカではスーパーの駐車場などでもフルサイズのアメリカ車で丁度いいぐらいのスペースがありますので、そういった環境において同じカローラで戦っていこうと思うと、国内とグローバルとで作り分けるのは賢いやり方なのです。私は日本で見るのであれば日本仕様の方が、凝縮感があっていいのかなと思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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