国道19号線、岐阜県中津川市にある中津スバル販売は、地元はもとより全国にファンを抱えるスバル車のスペシャルショップだ。そんなお店に初代の日産『プレジデント』が入庫した。
盲目的にスバル車を礼賛し、薦めるのではなく、自動車とは牛馬に変わる省力化装置の一つであり、合理性という観点で、スバル車の優位点を挙げ、信頼を獲得しスバルのファンを増やしてきた代田社長。「他所と同じことをしていてもつまらない。独自性を出した結果、全国から買いに来ていただけるようになっただけ」と話す。そういう過程で、販売したスバル車はもとより、それ以外のクルマに関する相談も実は少なくないのだそうだ。
今回見せていただいたプレジデント、古いと言う理由だけでなく、生産期間が長かった2代目に比べて、希少性も高く、「岐33」ナンバーを今に引き継ぐ。ショーファードリブンで外装色は黒が圧倒的に多かったこの車種にあって、この個体は白い外装色とレザートップを組み合わせた非常に珍しい仕様だ。スバルオーナーの実家で、1台用のシャッター付きガレージに長年保管されてきたクルマなのだという。
「前のオーナーが亡くなったりして、全く乗れていない状況なので、朽ちてしまう前に手放そうかということで、私のところに相談が来ました。車検もここ数回は、辛うじて継続させて、ナンバーを絶やさないようにすることに主眼を置いた管理状態でした」
「走らせようとすればやらなければならないことはそれなりにある状態でしたが、簡単に調整することでエンジンも一発でかかりますし、走行できる状態に。内装の状態もきれい。ブレーキなどは、今のクルマと仕組みが違いますから少々慣れが必要だけど、貴重なクルマなだけに、大事にしてくれる嫁ぎ先が見つかればいいなと思っているところです」
キャブレター車なので、様子を窺うように、エンジンに火が入るところでアクセルペダルをやさしく踏み込むと、重厚で柔らかい、しかしどこか金属質なV8エンジンはすぐに目を覚ます。社長のドライブで秋の気配が少しづつ強まっている中津川市街を少しドライブ。「堂々としているけど、今のクルマに比べると小さいね。こりゃ面白い」。ハンドルを握る社長は少年のようににこにこしながら勝手知ったる道をドライブ。かれこれ半世紀前のクルマがこんなにも滑らかで、静かなことに正直驚かされた。
「うちはスバル車専門だからお客様でもこのクルマに興味があるという人はそんなにいなくて。実はかつては、整備をうちでやったりしたこともあって、クラシックカーイベントに出たようなこともあったんです。そんなこともあって、放っておけなくて」
「本当はこのナンバーを引き継げる岐阜の方がいいのだけれど、機械だから、大切にしてくれて、そしてある程度コンスタントにエンジンをかけて乗ってくれる方がいいでしょうね。せっかくうちに預けてくださったので、どなたかいい嫁ぎ先を見つかればよいなと思うのですが」