パジェロ、ランエボの技術とDNAを引き継ぐ三菱のSUV…技術力と経験に裏打ちされた現行モデル

三菱のSUVラインアップ。左からデリカD:5、RVR、エクリプス クロス、アウトランダーPHEV、eK X(クロス)
三菱のSUVラインアップ。左からデリカD:5、RVR、エクリプス クロス、アウトランダーPHEV、eK X(クロス)全 42 枚写真をすべて見る

昨今、世界的にSUVの需要が高まっている。各メーカーも次々と新モデルを投入しており、2018年のSUVセグメント販売台数は全体の約34%を占めた(JATO調べ)。そのSUVを強みとするメーカーが、三菱自動車だ。三菱SUVモデルの歴史と技術を紐解き、今と未来について、モータージャーナリスト・モビリティジャーナリストの森口将之氏が語る。

パジェロやランエボ…画期的だったモデルたち

三菱のSUVに初めて触れたのは、当時はRVと呼ばれた、SUVやミニバンを扱う雑誌の編集部に入った頃だった。当時、新車のSUVはひととおり乗ったのだが、1982年に三菱から発表された『パジェロ』はその中で画期的な存在だった。

三菱 パジェロ

当時のSUVは多くが山間部や降雪地での作業用として設計されており、エンジンはトラック用、トランスミッションはマニュアルのみ、サスペンションは前後とも板バネを使ったリジッドアクスルが一般的で、オンロードでの快適性は犠牲になりがちだった。4ナンバーや1ナンバーの商用車登録であったことも、使用状況を裏付けていた。

初代パジェロは、5ナンバーの乗用車登録車種やオートマチックトランスミッション、板バネではなくコイルを用いたサスペンションをいち早く用意し、エンジンは乗用車用を搭載。快適装備も充実していた。当時のライバル車との比較は、トラックと乗用車ほどの差があった。それでいてオフロードの走破性はトップレベルだった。スタイリッシュなフォルムとは裏腹にシャシーやボディは強靭。やはり三菱『ジープ』の生産で培ったノウハウが活かされていると感じた。

同じ時代にデビューした『デリカスターワゴン 4WD』についても触れたい。こちらは当時のパジェロのメカニズムと『デリカ』のボディを合体させた成り立ちだった。遅れてライバルが登場したものの、走破性の違いは歴然としていた。生活四駆では終わらせないという三菱の強い意志を感じたものだ。

パジェロ人気を支えたのがパリダカこと「パリ-ダカール・ラリー」(現在のダカール・ラリー)だった。デビュー翌年に初挑戦すると、1985年から通算12度もの総合優勝を獲得。ポテンシャルが本物であることを教えられた。ここで培った強靭な基本骨格や先進の4WD技術は、1992年発表の『ランサーエボリューション』に継承された。こちらもまた「世界ラリー選手権(WRC)」という国際舞台で戦い、1996年から4年連続でトミ・マキネン選手がドライバーズタイトルを獲得。1998年にはマニファクチャラーズタイトルにも輝いている。

特筆すべきは、左右の駆動力を電子制御で可変するAYC(アクティブヨーコントロール)をいち早く採用したことだ。現在S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)としてSUV各車に搭載しているテクノロジーのルーツは、ランサーエボリューションが育んだものだったのである。

共通するフロントマスクと機能に従うデザイン哲学

その三菱SUV、最近はデザインの改革も目立つ。核となるのがフロントマスクの「ダイナミックシールド」だ。ROBUST & INGENIOUSというデザインフィロソフィーに沿って作られたこの形は、『アウトランダー』『アウトランダーPHEV』のマイナーチェンジで初導入され、その後『エクリプス クロス』、『デリカD:5』、『RVR』、『eK X(クロス)』に採用されている。

三菱のSUVラインアップ。左からデリカD:5、RVR、エクリプス クロス、アウトランダーPHEV、eK X(クロス)

この「ダイナミックシールド」もまた、パジェロとランサーエボリューションという2つの流れから生まれた。人とクルマを守るという機能を形にした、歴代パジェロのフロントマスクを左右から包み込むような造形と、大きな開口部によってハイパフォーマンスを獲得したランサーエボリューションのフェイスを融合したものである。言葉にするのは簡単だが、実際に違和感なくまとめるのは至難の技だ。三菱自動車が時間を掛け、議論を重ねながら形にしていったことが想像できる。

加えて2018年に登場したエクリプス クロスでは、プレミアム性を高めたアウトランダー/アウトランダーPHEV、カジュアルテイストのRVRとは異なる方向性を表現すべく、ボディサイドでもクーペのようなカッコよさとSUVの安定感という2つの要素を融合している。しかもそこに、かつての三菱自動車のスポーツモデル、『ギャランGTO』や『スタリオン』などで多用したシャープなラインを盛り込んでいる。これもまた三菱自動車のSUVであることを実感する。

三菱 エクリプス クロス

エクリプス クロスは水平基調のインテリアにも注目したい。こちらもオフロードで車体の傾きが分かりやすいという機能から導き出されたものだ。上下2段のリアウィンドウが象徴しているように視界にも配慮している。Form follows function、「形は機能に従う」という三菱自動車のデザイン哲学が息づいている。

PHEVやディーゼル、技術力と経験が生み出す多彩なエンジン

パワートレインでは、まず電動化に言及すべきだろう。三菱自動車は2009年、世界初の量産型電気自動車『i-MiEV』を発売した。その電動化技術を応用して開発されたSUVが、2013年発売のアウトランダーPHEVである。バッテリーのみで60km以上の距離を走行可能という卓越した性能は、その後のプラグインハイブリッド車の基準を作った。バッテリーのメリットは走行面以外でも感じられる。東日本大震災を契機に、バッテリーの有効活用が議論されるなかで、車内と荷室に家庭用100V電源コンセントが備わった。これがアウトドアや災害時でも威力を発揮することになった。

環境意識の高い欧州ではこのカテゴリーのベストセラーになり、世界累計販売台数でもナンバー1を獲得した(2018年12月末時点 JATO Dynamics Limited調べ)。プラグインハイブリッド車のベンチマークと言って差し支えないだろう。

三菱 アウトランダーPHEV

一方で三菱SUVはディーゼルエンジンの歴史も長い。ジープや初代パジェロ、デリカの頃から積んでいたのだから当然である。現行型ではデリカD:5とエクリプス クロスが2.2リットルの直噴ディーゼルターボを積む。コモンレール式燃料噴射装置や尿素SCRシステムを装備し最高水準の環境性能を持つ。加えてトランスミッションは、国産ディーゼル乗用車ではもっとも多段の8速スポーツモードA/Tとなっている。粘り強いトルク感による力強い加速、巡航時の静粛性を両立しており、舗装路はもちろんオフロードでも頼もしさを感じる。

経験に裏打ちされた4WD技術

4WDにも見るべき点がある。ジープ、パジェロ、ランサーエボリューションなど、三菱は多彩な車種でさまざまなシステムをトライし、パリダカやWRCなどの過酷な舞台で性能を磨き上げてきた。4WDについても経験に裏打ちされた技術というアドバンテージを持っている。

現在、軽自動車を除くガソリン車とディーゼル車には、電子制御カップリングを用いることで前後トルクを適切に配分する電子制御4WD、軽自動車には通常は前輪駆動で走行し、滑りやすい路面でビスカスカップリングが後輪に駆動力を配分するVCU式オンデマンド4WDを採用している。

一方アウトランダーPHEVでは、前輪をエンジンとモーター、後輪をもうひとつのモーターで駆動するツインモーター4WDを採用している。輸入車を中心にプラグインハイブリッドSUVが増えているが、前後輪に専用のモーターを与えた車種はアウトランダーPHEVぐらいだろう。車種により最適な4WD方式が搭載されているのだ。

この独自のメカニズムを生かすのが、ランサーエボリューションで採用したAYC、ASC(アクティブスタビリティコントロール)、ABS(アンチロックブレーキシステム)を統合したS-AWCだ。

S-AWCとは、三菱が求め続ける“走る歓び”と“確かな安心”を高次元で実現するシステムだ。ドライバーの意思とクルマの状況を瞬時に読み取り、4輪をコントロールするメカニズムをすべて統合して、常に最適制御することで、あらゆる道で安全に運転を楽しむことを可能としている。

具体的には、運転操作や車両状態をセンサーで検知して前後の駆動力とブレーキ制御量の配分を決定し、ブレーキ制御により左右輪間の駆動/制動力を制御。あらゆる路面で安定した走行性能とリニアなハンドリングを実現している。4WDや電動化などさまざまな分野で電子制御のノウハウを持つ三菱自動車ならではのテクノロジーだ。このS-AWCは、エクリプス クロスとアウトランダーにも搭載している。

エクリプス クロス、アウトランダー、アウトランダーPHEVの4WDシステム

しかしながら三菱SUVの高度な走破性は、パワートレインと4WDシステムだけで獲得したわけではない。基本となるボディがしっかりしていなければ実現できないものだ。この面で注目したいのはRVR。アウトランダーやエクリプス クロスと共通のプラットフォームを使っているので、シャシーやボディのキャパシティが高い。一度でもドライブすれば、強靭な車体としなやかな足回りがもたらす心地よい乗り味に魅了されるだろう。

感じるのは“信頼”、経験と機能で競合に差をつける

三菱のSUVに乗って感じるのは、“信頼”の2文字である。ジープをルーツに持つ豊富な経験が生み出す、デザインやエンジニアリングが機能に基づいた信頼だ。筆者は古いクルマの取材もするが、三菱自動車のユーザーは10万キロ、20万キロは平気で乗り続けている人が多い。ひとえにこの信頼の賜物ではないかと思っている。

例えば、エクリプス クロスで走りはじめて、強く感じるのはボディの剛性感であり、その伝統が受け継がれていることがわかる。しかもこの強靭なボディのおかげでサスペンションがよく動くので、ハンドリングと乗り心地の高次元両立が可能になっている。パワートレインの自然な反応と合わせて、いつまでも乗り続けていたいという気持ちにさせる。このように、三菱ブランドが熟成してきた足回り、裏打ちされた制御技術、伝統と革新のデザイン、のすべてに三菱らしさが注ぎ込まれており、エクリプス クロスは、三菱SUVの中の渾身の一作と言える。

三菱自動車は今後、主力モデルにPHEVなどの電動パワートレインを用意していくと発表している。ここでライバルとの差別化を図れるのが、経験と機能ではないか。競合車が同じ土俵で勝負を挑もうとするほど、三菱のSUVの強みが発揮されていきそうな気がしている。

《森口将之》

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