純正車高で乗り心地が大幅アップするサスペンション---TEIN『エンデュラ・プロ』登場

純正車高で乗り心地が大幅アップするサスペンション。TEIN『エンデュラ・プロ』登場
純正車高で乗り心地が大幅アップするサスペンション。TEIN『エンデュラ・プロ』登場全 12 枚

10月7日、TEINの世界戦略製品ビジネスプラン説明会と題した製品説明会&試乗会が、大磯プリンスホテル(神奈川県)で行われた。

…と書くと何やら堅苦しい話でも始まるのではないかと思われるかもしれないが、要は「ショックアブソーバーの市場動向と、テインの製品がどのように開発されたか?」そして、そのショックアブソーバーが、これまでTEINが得意としていた車高調整式ではなく純正形状だ、と言うこと。

TEINの資料によると現在TEINのショックアブソーバーの販売数割合は、車高調正式が93%、その他のショックアブソーバーが7%で、TEINは世界の車高調正式ショックアブソーバー市場のおよそ10%のシェアを占めているという。ただし、この状況は均衡していて今後大幅なシェア拡大は望めない。一方純正交換品市場は、東南アジア、中国、モンゴル、ロシア等の自動車需要の拡大とともに有望なマーケットに育っている。

TEINの純正形状ショックアブソーバー、エンデュラ・プロ(減衰力固定式)とエンデュラ・プロ・プラス(EnduraPro PLUS)はそんな背景から生まれた製品。しかも、製品開発に当たっては、インド、ロシア、モンゴル等で破損したショックアブソーバーのどの部位が壊れているのかの不具合調査を行った。興味深いのは、ロシアやモンゴルではタイヤとショックアブソーバーの消耗本数が同じであったこと。つまりタイヤが摩耗する頃にはショックアブソーバーにも何らかのトラブルが起き交換しているのだ。そんなわけでエンデュラ・プロシリーズは、純正比2倍の耐久性を目標に開発されたのだという。

エンデュラ・プロもう一つの特徴は、ハイドロ・バンプ・ストッパー(HBS)を採用しているところにある。これは元々ラリー用ダンパーで開発され使われてきたものなのだという。メカニズムは、ツインチューブダンパーのバースバルブと呼ばれるインナーケースとアウターケースをつなぐオイル流路に従来のバルブではなく、サスペンションが縮むとバルブの流路を狭め減衰力を高くするパーツがつけら荒れているのだ。

一般的には、バンプストッパーと呼ばれるゴムやウレタンのクッションを、ケースから外側につきだしたピストンロッドに挟んで、必要以上にピストンロッドがケース内に深く入らないように規制している。これだとサスペンションストロークを規制して十分なストロークが取れなかったり、バンプラバーが硬いと速い沈み込みでバンプラバーの反発力によって跳ね返されてクルマが大きく跳ねてしまうこともあった。HBSを使うとダンパーのストローク量をほとんど規制することなく、しかもある程度サスペンションが沈み込んで、ショックアブソーバーが深くストロークすると減衰力が高くなって、それ以上サスペンションが縮もうとするのにブレーキをかけてくれるのだ。

試乗したのは、86とヴェルファイアの2台。いずれもスプリングとセットになったスプリングキット(86用、ヴェルファイア用とも8万1000円/1台分)。試乗した印象は、乗り心地は純正に近くゴツゴツした硬さは一切ない。印象としては5~10%くらい減衰力がノーマルより引締まっているかな? といったところ。コツコツした硬さはないのに、カーブではドシッと落ち着きのある安定感がある。伸びと縮みの減衰バランスも巧みで、86ではキビキビした乗り味を上手く出しているし、ヴェルファイアはグラつく不安定な動きをしっかり抑え込んで安心感のある乗り味になっている。

いちばんのポイントであるHBSの働きは、じつは普通に走っていてもまずわからない。サスペンションがイッキに縮むようなシチュエーション。例えば屈曲路面やうねりを速めのスピードで通過すると、効果が出るはず。ということで、そんな路面を探して走らせてみたのだが、サスペンションが勢いよく沈み込んだ次の瞬間、スローモーションのようにクルマのサスペンションの沈み込みが抑えられ何事もなかったかのようにスルリと走り抜けてしまったのだ。ガツンとくる、バンプラバーに当たる時のショックを予想して身構えていたのだが、クルマの動きはいたって普通。特別な何かをしたとさえ感じさせないものだった。ちなみにヴェルファイアは減衰力固定式のエンデュラ・プロだったが、86は減衰力16段調整式のエンデュラ・プロ・プラスだった。といっても特別なセッティングにはなっておらず、10/16段目が標準でノーマルサスに近い味付け、ハード側にしてもソフト側にしても、極端に乗り心地が悪くなるということはなかった。

ショックアブソーバーのタフネス性を上げるため、ケース外径を大きくし、取り付け部のナックルプレートの板厚を厚くし、オイル容量も50%増量するなど、中国やモンゴルなタフな路面を想定したチューニングが施されているから、国内では完全なオーバークオリティと思えるほど。しかも内制の有利さを生かし、ピストンロッドの工作精度を高め、手術室レベルのクリーンルーム内での生産を行うなど、クオリティ管理にも力を入れている。

ダンパーの寿命は、走り方にもよるが3年程度と言われている。厳密にそれでだめ、即交換ということではないが、交換すると新品の抑えの効いたダンパーの乗り味に少なからず驚くはず。その純正交換ダンパーをTEINにするというのは悪くない考えだと思う。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

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