【トヨタ ヤリス 新型】走り、乗り心地を左右するボディとシャシー…VWを研究

トヨタ・ヤリス新型
トヨタ・ヤリス新型全 5 枚

トヨタ自動車が今年12月に発表予定のBセグメントサブコンパクト、『ヴィッツ』改め『ヤリス』。過去、複数のイベントで予告されていたように、トヨタのクルマづくりの新工法「TNGA」にもとづき、一部のパワートレインを除きほぼ全面新設計。トヨタはこのクラスを世界中に投入しているが、ヤリスは先進国市場にターゲットを絞って開発されたという。

走り、乗り心地を左右するボディとシャシーについて。ボディサイズの予定値は全長3940×全幅1695×全高1500mm、ホイールベース2550mm。質量は1.5リットル3気筒+改良型「THS II」のハイブリッド(エントリーグレード)で1050kgになる見通しであるという。現行の第3世代ヴィッツに対し、全長が5mm小さく全幅と全高は同一、ホイールベースは40mm長い。ちなみに今後リリースされる欧州版ヤリスに対してはボディが50mm、トレッド(左右輪の中心の間隔)が40mm狭い。

そのボディだが、1180MPaという引っ張り強度の鋼板を高温下でプレスして作るホットスタンプ材をはじめ、590MPa以上の部材を多用。技術発表の場にはカットモデルが展示されていたが、ストラットタワーやボディなどには接着工法が用いられた痕跡はなく、メインはスポット溶接。欧州市場で要求される高スペックのボディをできるだけ低コストで作るのに知恵を絞ったことがうかがえた。

サスペンションは前がマクファーソンストラット、後ろはFWD(前輪駆動)がトーションビーム、AWD(4輪駆動)がダブルウィッシュボーンという構成。テストドライブはもちろんまだだが、その設計にはいくつかの注目点があった。第一はFWDリアサスのトーションビーム。形式は一般的なカップルドリンクと呼ばれるものだが、トレーリングアームを前後方向に並行する形で配置し、ロールした時に発生するトーアウトをトーコレクトブッシュで抑制するという設計になっていた。

これはフォルクスワーゲンが伝統的に得意としてきたマウント法だ。実際、ヤリスの開発過程においてもフォルクスワーゲン車の研究はとりわけ重視されたという。この方式はアームを進行方向に対して逆ハの字に置く方式に比べて横剛性の点では不利である半面、路面変化への追従性が良く、コーナリング中の不意の路面変化に強い傾向がある。基本が欧州ターゲットということで、神経質な動きが少なく、アバウトに速く走れるという面を重視したものと考えられる。

第2はフロントサスで、ストラットタワーを内側に強く傾斜させたレイアウト。これは言うまでもなく、サスペンションのスイング方向とショックアブゾーバーの軸を近づけ、ハーシュネス悪化の要因となるフリクションを低減するのが狙い。エンジニアによれば、左右ストラットタワーの頭を近づけることができたのは搭載エンジンを全長の短い3気筒に絞ったためだという。

第3はAWDのダブルウィッシュボーン式リアサス。同形式はスペックの高いクルマに使われることが多いが、ヤリスのものは全長4mアンダーという短いボディのリアアクスルに電動AWD用のモーターを設置するのが目的。昭和時代に時々見かけたパラレルリンクストラット式のアームを縦に並べたような2リンク式のシンプルな構成で、省スペース性が追求されている。トヨタのBセグメントハイブリッドAWDが欲しいという雪国ユーザーにとっては朗報だろう。性能追求型ではないため、FWDモデルに同サスペンションが採用されることはないとのことだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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