【マツダ MX-30】「内燃車もEVも人間中心。乗り味は目をつぶって乗ったら違いがわからないかも」 廣瀬専務[インタビュー]

マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
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10月24日に開幕した第46回東京モーターショーでワールドプレミアを果たし、ブース来場者の視線を釘付けにしたのがマツダの『MX-30』だ。SKYACTIVの次の一手で、2020年代のパワートレインとして期待されているモーターとバッテリーを積むEV(電気自動車)である。

マツダ初のEV市販車として開発され、エクステリアはクーペ風のクロスオーバーSUVルックをまとった。ドアは『RX-8』と同じセンターピラーレスのフリースタイルドアだ。マツダのデザインコンセプト「魂動」デザインは、次のステップに入ってきたことが分かる。

マツダ期待のMX-30は、2020年の市販開始を予定していると発表された。プラットフォームは『マツダ3』から採用している「スカイアクティブアーキテクチャ」の進化版で、駆動方式はFFだ。気になるモーターの最高出力は105kW(143ps)、最大トルクは265N・m(27.0kg-m)程度だろう。プロトタイプから産出されるバッテリー容量は35.5kWhである。単純に計算すれば、1回の充電で200kmくらいは走れる計算だ。

マツダの専務執行役員であり、パワートレインや統合制御システム開発も担当する廣瀬一郎氏に、MX-30を軸に、今後のマツダの技術戦略について話を聞いた。

五感によって得られる情報を敢えて作る

マツダ 専務執行役員のの廣瀬一郎氏(研究開発・コスト革新統括、パワートレイン開発・統合制御システム開発担当)マツダ 専務執行役員のの廣瀬一郎氏(研究開発・コスト革新統括、パワートレイン開発・統合制御システム開発担当)写真をすべて見る

----:マツダは人間中心、人馬一体を開発のコンセプトにしています。これはEVを送り出す近い将来でも変わらないのでしょうか。

廣瀬一郎氏(以下敬称略):多くの人は、EVの時代になると、クルマの乗り味が変わってしまうのでは、今までのような楽しいクルマは出てこないのでは、と思っているでしょう。でも、ご安心ください。人によってはガッカリするでしょうが(笑)、内燃車とEVでも人間中心の設計哲学は変わりません。たとえ動力源が電気モーターになっても、提供する乗り味は同じです。目をつぶって乗ったら分からないかもしれません。MX-30も、それくらいの仕上がりになっています。

----:MX-30に採用されるEV技術を盛り込んだ先行開発車の「e-TPV」はマツダらしい仕上がりになっているようですね。

廣瀬:ヨーロッパで試乗会を行ったプロトタイプは、その通りの仕上がりになっています。五感のなかで大切な音がなくなってしまうからEVは恐い、という人もいます。加速状態や減速状態など、音や躍度のようなものが分からないと確かに恐いと思います。内燃機関とは違うのですが、私たちは音などのように五感によって得られる情報を敢えて作り、乗る人に伝えようと努めています。基本的に内燃機関と同じものを提供しようと考えているのです。

----:初めてのEVということで、苦労したところが多かったと思います。EVはクルマが重くなるなど、設計も大変だったでしょうね。

廣瀬:重いバッテリーを床下に積んでいるので落ち着かない車体挙動になると思われるでしょうが、私たちはバッテリーパックを積むことによって車体の剛性が上がるように取り付けに工夫を凝らしています。構造上クルマは重くなっていますが、車体剛性は大幅に上がっているのです。

----:既存のスモールプラットフォームに手を加え、EVにしたのですね。

廣瀬:スモールプラットフォームの派生で、一括開発したものをEVに手直ししています。観音開きのフリースライドドアですが、Bピラーがあるのと同等の剛性を後ろのドアのところにもたせ、側面衝突の強度も同程度まで高めています。鉄の材質を上手に使うことにも力を注ぎました。乗ってもらえば分かりますが、驚くほどよく走るんですよ。

製造工程のエネルギーも考え電池容量を定める

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----:数年の間にバッテリー容量は一気に増えました。欧米では電力量が50kWhを超えるEVが珍しくなっているし、日本でも40kWhから上のEVが増えています。航続距離を気にする人も少なくないと思いますが…。

廣瀬:電気自動車はCO2(二酸化炭素)がゼロと言われていますが、電池の製造工程でかなり多くのエネルギーを使うんですね。ここをきちんと考えて電池容量を決めないと、本当の環境貢献にはならないと思っています。

----:再生可能エネルギーでまかなえば、と言ってますが、製造工程においてかなり多くの電力を使っているのが現在の状況です。

廣瀬:私たちは、真の意味での環境貢献になる電池容量はどのレベルになるのかを考えて、制限をかけることにしました。いろいろな文献を平均して、どのくらい電池製造でエネルギーを使っているのかを調べてみたのです。驚きましたね。私たちが調べたところでは、1kWhのリチウムイオン電池を作るのに必要な電気量は163kWhにもなるのです。仮に走行中のCO2の排出量がゼロとみなしても、製造過程ではたくさんの電気を使っています。これを回収しようとすると、かなりの距離を走らなければなりません。電池容量が多ければ、さらに回収できるようになる距離が延びてしまうのです。

----:航続距離を伸ばそうとすると、電池容量を増やすからCO2をたくさん出した状態から回収がスタートすることになります。しかも電池の寿命があるから、環境貢献には程遠いというわけですね。

廣瀬:そうなんです。そこで私たちは35.5kWhの電池容量レベルで行くことにしました。航続距離は200kmくらいですね。今のEVの相場がそうで、2020年にフォルクスワーゲンが発売を予定している『ID3』のスタンダードも同程度の航続距離でした。私たちは、今の段階で電池の容量をやみくもに増やすのは逆効果だと思っています。

----:MX-30が他のEVと違うのはどういうところでしょうか? EVというと瞬時にトルクが盛り上がり、加速がいいというイメージが強いですね。マツダのEVは自然な走行フィーリングが特徴だと聞いていますが…。

廣瀬:私たちは躍度に基づいて、ベルシェイプで力を出すようにしています。グッとくるパンチのある加速とは違うんです。その分、無駄にエネルギーを消費せず、無駄に踏みすぎてアクセルを戻すということもありません。敢えて、普通のエンジンと同じようにしました。誰にでも違和感なく運転できると思います。

ロータリーはマルチフューエルも視野に

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----:観音開きの「フリースタイルドア」を採用したのはなぜでしょうか。

廣瀬:新しいお客様価値という面で新しいチャレンジで、EVとフリースタイルドアという新しい組み合わせにしてみました。もう1台の他のクルマとの組み合わせなら、オールマイティに使ってもらえると思います。今までのマツダの方針から、ちょっと踏み込んだチャレンジを行っていました。チャイルドシートを取り付けるのもラクですし、障害者にも優しいクルマになっています。ボディサイズは『CX-30』と大差ない大きさです。キャビンは広く、フロアも低く抑えました。いろいろな意味で使い勝手のいいクルマなんです。デザインも今までと違うし、フリースタイルドアを採用したり、インテリアのしつらえも変えるなど、新しい挑戦を数多く盛り込んでいます。

----:駆動方式はFFですが、4WDも設定する予定ですか!?

廣瀬:4WDも設計は可能です。が、少ない電池容量で航続距離を延ばそうと考えたとき、重量がかさむ4WDにはしたくないですね。

----:MX-30はマツダ独自の開発ですね。「デミオ EV」やロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーのノウハウが生かされているのでしょうか!?

廣瀬:開発はかなり早い時期に始まっていました。水素ロータリーのEVやデミオEVでの経験が生きましたし、トヨタからハイブリッドシステムの技術供与を受けたことも役立っています。

----:マツダはマルチソリューションのなかでEVを考えていると思います。これから先、電動化へと進んでいきますが、SKYACTIV技術を用いた内燃機関と組み合わせて未来へと突き進む道もあるのでしょうね。

廣瀬:EVの最初の作品であるMX-30を出し、電動化路線にも力を入れていきます。ビークル・トゥー・ホームや電池のリサイクル、有効活用なども考えています。レンジエクステンダーは、国によって衝突安全や排ガスなどの規制が違うし、生産コストもネックとなっているなど、手を入れるところが多いのです。だから少し時間はかかりますが、より展開性を高めて投入したいと思っています。LPGを使えるなど、ロータリーはマルチフューエルも視野に入れています。だから腰を入れて開発し、資産にしたいと思っています。次の世代のマツダのニューモデル戦略に期待してください。

《片岡英明》

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