同志社大学、二次電池の金属負極を長寿命化する技術を開発…EVの走行距離が1.5倍以上に

同志社大学大学院理工学研究科の盛満正嗣教授
同志社大学大学院理工学研究科の盛満正嗣教授全 3 枚

同志社大学は11月6日、東京・京橋にある東京オフィスで記者会見を行い、二次電池の金属負極を長寿命化する革新的技術を開発したと発表した。この金属負極を使えば、電池の劣化が起こりにくく、EVなど電動化車両の航続距離が大幅に伸びるという。

開発を担当した同大学院理工学研究科の盛満正嗣教授によれば、今注目されている全固体電池や金属空気電池、金属負極電池、リチウム硫黄電池など次世代の電池には金属負極が不可欠だが、その金属負極にこれまで大きな問題があったという。

充電と放電を繰り返していると、金属負極の表面が析出していき、それが樹枝状に成長するデンドランド成長を起こす。そして、そのデンドランド成長した金属が正極に到達するとショートして、電池が使い物にならなくなってしまう。最悪の場合は、発火や爆発を起こすそうだ。

その仕組みは人間の動脈硬化に似ていると言っていいかもしれない。血管の中にコレステロールや中性脂肪が付着し、それがどんどん堆積していって、ついには血管をふさぎ、動脈硬化を起こす。しかも、それが起こる場所はさまざまでコレステロールがたまりやすいところにたまる。

金属負極も同様で、どこで樹枝状に成長するかわからい。溶液中のイオンが好きなように動いて、たまりやすいところにたまっていた。盛満教授はそれを溶液中のイオン分布を均一することによって、金属負極へのデンドライト成長を防ぐことに成功したのだ。

これによって、今まで数回で内部短絡して充放電が不能になった電池が5000回以上も充放電をできるようになった。しかも、放電電圧、充電電圧ともほぼ一定で、初期放電容量に対して90%以上も維持できるという。いずれも世界初だ。

「この電極負極を利用した亜鉛空気電池や亜鉛ニッケル電池によって、現在のEV、PHV、HVの一充電走行距離を1.5~2倍にできる」と盛満教授は話し、現在、自動車メーカーから注目されているそうだ。

ただ、実用化できるのはまだ先なので、協力してくれる企業とコンソーシアムを組んで一緒に開発を進めたいという。12月11日に同大学の今出川キャンパス(京都市)あるいは京田辺キャンパス(京都府京田辺市)でコンソーシアム説明会を開催する予定だ。

《山田清志》

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