【ルノー メガーヌR.S.トロフィー 新型試乗】新しいルノー・スポール像が提示されたといってもいい…大谷達也

「普通の人が普通に乗るモデル」でもっとも高性能なR.S.

FFとは思えないほど前後のバランスが優れている

これまでの「スポーツ一辺倒」から一歩踏み出した

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ルノー メガーヌR.S.トロフィー(EDC)新型
ルノー メガーヌR.S.トロフィー(EDC)新型全 44 枚

「普通の人が普通に乗るモデル」でもっとも高性能なR.S.

ニュルブルクリンクのFF車最速ラップタイムを記録したことでつとに有名な『メガーヌR.S.』だが、ひとくちにメガーヌR.S.といってもいくつか種類があって、ニュル最速のタイムをマークしたモデルはメガーヌR.S.トロフィーRと呼ばれる。

今回デビューした『メガーヌR.S.トロフィー』は、このメガーヌR.S.トロフィーRと同じ最高出力300psの1.8リットル直4ターボエンジンを搭載しているけれど、足回りは普段使いも考慮したシャシーカップというややおとなしい仕様に改められているほか、後席などの便利装備(!)も盛り込まれているので車重が130kgほど重い。裏を返せばトロフィーRに実用性はほとんど期待できないわけで、「普通の人が普通に乗るモデル」という範疇でいえばメガーヌR.S.トロフィーが最も高性能といって間違いない。

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いっぽう、既存のメガーヌR.S.はスタンダードモデルで、トロフィーなどの特別なグレード名はつかない。また、今年1月にはメガーヌR.S.カップという限定モデルが発売された。これら3モデルの位置づけを簡単に説明すると、エンジンはメガーヌR.S.とメガーヌR.S.カップが279psで同一だが、サスペンションの設定はメガーヌR.S.のみシャシースポールで、メガーヌR.S.カップとメガーヌR.S.トロフィーはもう1段スポーティなシャシーカップとなる。ちなみにギアボックスはメガーヌR.S.が6速DCTのみ、メガーヌR.S.カップは6速MTのみ、そしてメガーヌR.S.トロフィーは6速DCTの「EDC」と6速MTの両方から選べる。

こうやって文章で書くとややこしいが、現時点のラインナップはメガーヌR.S.とメガーヌR.S.トロフィーだけだから、快適性を重視するならメガーヌR.S.、スポーツ派にはメガーヌR.S.トロフィーがお勧めと覚えておけばいいだろう。

FFとは思えないほど前後のバランスが優れている

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今回、メガーヌR.S.トロフィーの試乗の舞台となったのは筑波サーキットだ。まずはノーマル・モードで走り出すと、コーナーをひとつ、ふたつ抜けてすぐに驚かされるのは、FFとは思えないほど前後のバランスが優れていること。FFにありがちな「前輪だけに荷重がかかっていて、後輪はただくっついているだけ」という印象がなく、ボディがフラットに近くて後輪にもしっかり接地圧がかかっているように感じられる。したがってリアのスタビリティは高く、限界近いスピードでコーナーに進入してもテールがふらつく兆候は皆無。おかげで実に安心してコーナリングに集中できる。

こう聞くと、「頑固なアンダーステアでステアリング・レスポンスの悪いクルマ」を想像されるかもしれないが、そうなっていないところがメガーヌR.S.が代々受け継いできた“すごさ”でもある。ステアリングを切り込めば、フロントがほとんどロールすることもなくノーズの向きがすっと変わる。「ひょっとして後輪駆動じゃないの?」なんて疑ってしまいたくなるのは、前後のバランスが良好なことにくわえ、この軽快な回頭性も大きく影響しているはずだ。

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いっぽう、今回の試乗では一般道を走るチャンスがなかったものの、シャシースポールが与えられたメガーヌR.S.に乗った経験と合わせていえば、ハードコーナリングでのパフォーマンスが信じられないほど一般道ではしなやかな乗り心地を示す。この辺は、一般的なバンプストップラバーに換えて4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール(HCC)を採用したダンパーの効果だろう。おかげで最新のメガーヌR.S.は市街地から高速道路にいたるまで快適な乗り味を楽しむことができる。

これまでの「スポーツ一辺倒」から一歩踏み出した

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話をメガーヌR.S.トロフィーに戻そう。ノーマル・モードに続いて試したのはレース・モード。この場合、ESCは解除されるが、だからといって途端にひどいアンダーステアやオーバーステアに陥ることなく、基本的なキャラクターはそれまでと変わらない。つまり、FFとは思えないバランスのよさと俊敏さを味わえるのだ。

けれども、たとえば高速コーナーに軽くブレーキを残したままステアリングを切り込むと、リアタイヤが横Gに耐えきれなくなったところでジワジワとアウトに流れ始め、ちょうど出口に向けて直線的に立ち上がっていけるような態勢を自然と整えてくれる。FF車としては例外的なコントロール性の高さである。

300psのパワーは、サーキットで走らせる分には手に負えないほどでもないが、反対にパワー不足とはまったく感じなかったのだからスポーツ走行には十分な力強さといえる。ギアボックスの動作にも不満を覚えなかった。

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今回はメガーヌR.S.トロフィーをサーキットで味わったが、ルノー・スポールの持ち味はこれだけではない。一般道におけるメガーヌR.S.の乗り心地が示しているとおり、決して日常的な快適性が犠牲にされているわけではないのだ。

とりわけ、足回りがもたらす質感の高さはいわゆるプレミアムブランドの製品に優るとも劣らないもので、この点は第3世代までのメガーヌR.S.では望み得なかった、最新メガーヌR.S.だけが持つ美点である。その意味でいえば、これまでのスポーツ一辺倒から一歩踏み出した、新しいルノー・スポール像が提示されたといってもいいだろう。

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大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

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