スピンドルキャビンへ、レクサス LF-30…東京モーターショー2019[デザイナーインタビュー]

トヨタヨーロッパデザインアシスタントチーフデザイナーの飯田秀明さん
トヨタヨーロッパデザインアシスタントチーフデザイナーの飯田秀明さん全 14 枚
東京モーターショー2019レクサスブースには、レクサスの次世代デザインも感じられる四輪インホイールモーターのレクサス『LF-30エレクトリファイド』が展示されていた。そこでこのモデルのデザインコンセプトやその方向性についてデザイナーに話を聞いた。

◆ボンネットの中にエンジンがあるクルマのデザインとは変えたい

「最初のお題として電動化は決まっていた。そこからどういう回答が出せるのかが一番大事なポイント。これまでのエンジンがボンネットの中にあるようなクルマとは変えたいという気持ちがすごくあった」とは、トヨタヨーロッパデザインアシスタントチーフデザイナーの飯田秀明さんの弁。そこで、「四輪インホイールモーターであることから、これまでの動力とは違うことをいかに全体のデザインを使ってお客様に感じてもらうかに注力した」という。

電動化に向けてのデザインには二つの考え方がある。ひとつは差別化のために違うデザインを採用すること。もうひとつは、これまでと大きくは変わらず動力源だけ電動になるパターンだ。このLF-30はあえて前者を選択した。飯田さんは、「レクサスブランドの目指すべき方向として、ブレイブ、アーティスティック、フューチャリスティックを大事にもの作りをしているので、(これまでと)同じデザインでは全くこのキーワードに合致しない」とコメント。

「ブレイブとは勇敢に何にでも挑戦していく、挑戦者みたいなもの。当然高級車を作っているのでアーティスティックにしなければいけない。なおかつ先進技術を利用してどれだけ新しく先進的なものを作っていくか。そういったことをブランドとして発信しているので、他ブランドとは違うアプローチになった」と説明。そして、「デザイナーとしてはとてもやりがいがあるし、このプロジェクトを聞いた時には嬉しかった。違うものが作れるぞと興奮したことを覚えている」と楽しそうに語った。

◆インホイールモーターだからこそできるデザイン

飯田さんはこのクルマのディメンジョンについて、「全長は『LS』並み、全幅は『LC』と同じくらい、全高は『NX』や『UX』くらい。最低地上高も後方はかなり上がり、前は低いので、色々なクルマの良いとこ取りした」という。

そのうえでいかにインホイールモーター、新しいシステムを強調し、表現するかとして、「ボディとタイヤを一体化させた。これは絶対にエンジンがあるクルマでは無理で、モーターならではの表現だ。こういったことを骨格の基本としてデザインした」と述べる。

次にスピンドルグリルだ。これまでは空気を取り込むものとして存在していたが、今回はEVなのでほとんどいらない世界をイメージ。「フロントというよりはキャビン全体と繋がった造形にしている。リアにもフロントのスピンドルと呼応するようにスピンドル形状を設けており、“スピンドルキャビン”という言い方のほうがいいかもしれない」と飯田さん。

また、「インホイールモーターはハイパフォーマンスなものなので、その冷却のためにサイドに大きなエアインテークが空いており、空気はそこから入り、室内(ドア)を通ってリアに流れるイメージだ」とのことだ。

「フロントは(モーター用に)空気を取り込まなければいけないこともあるので、結構オーガニックに作られている一方、リアに行くほどシャープでエッジーになっていく。トラディショナルコントラストというキーワードで、フロントは水のような感じで後ろは氷。そういう一連のストーリーを持たせた」と述べる。「オーガニックからシャープになっていく。リクイディティなものからシャープに変化をしていくということが面白いかな、新しいレクサスのサーフェイス表現にならないか」と新たな提案を語る。

パーツ系にもこだわりがある。これまではメインボディからランプやミラーが飛び出ていた。しかし今回は、「ボディの一部にランプとか各機能がインテグレートされているかに注力した。それをキーワードとしてはシームレスインテグレーションとして、そういうところでEVとしての空力性能の良さや、新しいデザイン表現に繋がれば」と述べた。

◆スピードラウンジのインテリア

インテリアも特徴的だ。「ドライバーズシートは“TAZUNA(手綱)”コンセプト。人とクルマを、人とロープになぞらえ、人馬一体、いかにパフォーマンスカーとして、運転のしやすさやクルマとの一体感を大事にしたかった」と話す。その他のスペースは、「ラウンジ、ファーストクラスの快適性を3席いずれも与えられるよう意識。全体としてスピードラウンジ(前がスピード後ろがラウンジ)という隠れキーワードを設定した。従って後ろのラウンジスペースはルーフのピーク後方に持っていって、スリークなのだが室内空間をしっかり確保している」と説明する。

◆フランスの光だからこそできたデザイン

LF-30のボディカラーはVoltaic Skyという名称だ。飯田さんは、「金属感を持ちながら、電動もイメージさせるカラーは何だろうと考えながら作っていった。あまりエコエコしたものではなく、そういったものは他ブランドでやってもらって。レクサスのお客様は少し違うテイストを求めているので、少しダークに振って、しかし緑や青も感じられる、金属の持つ光沢を意識して作った」とこだわりを明かす。

実はこのコンセプトモデルはフランスで作られた。飯田さんは、「そもそも空港に降り立った時点で目に入ってくる光の刺激が全然違っている。向こうはどちらかというと黄色っぽくものすごく強いが、日本は白っぽくて雲も多いので光が淡い。そういったところからもボディをフロントとリアで水と氷のように強くコントラストを付けてあるので、フランスの環境のほうが、光が強いぶんより際立っている。その面からもなおさらこのクルマには良かったと思う」とし、フランスで作られたからこそ、思い切ったデザインが出来たことを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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