スマートシティとMaaSの関係性とは?インフラ輸出を省庁間・官民連携で…内閣官房 副長官補付 内閣参事官 佐藤勝氏[インタビュー]

内閣官房副長官補付内閣参事官佐藤勝氏
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スマートシティの動向、スマートシティとMaaSの関係、そして海外進出について、内閣官房副長官補付内閣参事官の佐藤勝氏に聞いた。

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「スマートシティ」国で異なる理解

---:改めて伺います。スマートシティとは。またその動向は?

佐藤氏:実はスマートシティに定まった定義はありません。私は日本や欧米でのスマートシティの理解は、データを活用した、住民の利便性を向上させるサービスの提供、発電所や道路や公園などの都市インフラの効率的な運用などだと考えています。しかしインドやASEANなどでは、都市の機能を向上させる取組を広くスマートシティとして捉えているなど、都市の発展の進捗や抱える課題により理解が異なる場合があります。

10月に開催された経協インフラ戦略会議では、スマートシティを主に大きく2つに分けて整理しています。都市基盤整備型のスマートシティと欧米・中国・シンガポールなどのデジタル技術活用型のスマートシティです。

都市基盤整備型は住宅需要のひっ迫、交通渋滞、鉄道を起点した駅周辺の開発、浄水・汚水排水処理サービスの改善などです。日本の社会や都市はこれらの分野でのノウハウを積んでいるので公共交通指向型開発(TOD)や環境共生など複合的な都市開発などの強みがあり、すでに海外進出している日本企業もいくつもあります。たとえばタイのバンコク・バンスーの駅周辺の都市開発事業、ベトナムにおける複合型都市開発、インドネシアのジャカルタ・ガーデンシティ中心地区都市開発事業などです。今後もASEANやインドが求める都市基盤整備の需要に応えていく方向には変わりありません。

新たなデジタル技術活用型のスマートシティ

---:デジタル技術活用型のスマートシティとは?

佐藤氏:近年、これまでの都市基盤整備に加えて、分野横断的な対応やデジタル技術を組込んだ都市のスマート化を進めて、競合国との差別化を図っていく必要が出てきています。

アメリカはデータ・プライバシーなどの関係が問題化する事例も発生してきていますがGAFAがデータ収集・分析力を武器に海外事業を展開しています。欧州は北欧を中心にスマート化が進展しており、巨大IT企業に対する個人のデータ・プライバシーなどのルール設定型を志向しています。シンガポールは“スマート国家構想”を掲げて、キャッシュレス、都市型モビリティ、国家デジタル身分認証など6分野を国家戦略として、パキスタン、スリランカなど南アジアへ海外展開も計画中です。中国は、北京では自動運転×バイドゥ、杭州ではスマートシティ×アリババ、深センではヘルスケア×テンセントのようにBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と都市が結びつきを強めています。また、「一帯一路」構想のもと、デジタルシルクロードを推進する動きも見られます。

勝ちパターンがまだ固まっていないデジタル技術活用型

---:日本の可能性は?

佐藤氏:しかし、デジタル技術活用型のスマートシティはまだ各国とも海外で勝っていけるビジネスモデルが確立できていない状況です。そこでSociety 5.0などデジタルを活用したモデルを海外に出していけないか。また日本よりも規制が緩やかな海外で、スマートシティの実装を進め、日本に逆輸入する方法も理論的にありえると考えています。

デジタル技術活用型でも日本にも強みがあります。都市基盤整備型で海外進出しているベースがあり、相手国との関係醸成ができているところで、進出地域のインフラをアップグレードする段階でデジタル技術活用を入れていくことも可能です。

デジタル技術活用型案件の事例もあります。アメリカのラスベガスでのNTTによるデータ収集と活用、デンバーでのパナソニックによるLED街灯などを活用した効率的なエネルギー活用などが実現しています。

大企業のみならず、中小企業やベンチャーなどの企業にも可能性を感じています。

スマートシティとMaaSの関係

----:スマートシティとMaaSはどのような関係ですか?

佐藤氏:MaaSはスマートシティにおける一つのソリューションだと考えています。

物理的な鉄道、バス路線などの都市基盤があり、その上にデータ連携基盤(都市OS)があり、その上にサービスアプリケーションが展開されると考えています。そのサービス機能の一つがMaaSという理解です。

インフラシステムの海外展開政策でもテーマに

---:日本政府の動きは?

佐藤氏:スマートシティの海外展開を加速させるため6つの具体策を推進しながら省庁間や官民連携を強化しています。2013年の第2次安倍政権発足時に設置された、日本企業によるインフラシステムの海外展開政策の司令塔的役割を果たしている「経協インフラ戦略会議」(構成員:内閣官房長官(議長)、副総理兼財務大臣、総務大臣、外務大臣、経産大臣、国交大臣、内閣府特命担当大臣)で、本年10月に開催された第44回の会議でスマートシティ(都市開発)をテーマに議論を行いました。経協インフラ戦略会議で、これまでスマートシティが議論されたことはなく、テーマに上がったということは、これから力を入れていくことを意味しています。

官の役割は、面的に広がるように、ニーズとシーズのマッチングなどの種まきとそれを成功モデルへと育てることにもあると思います。また、日本の企業の技術やサービスが海外のニーズとうまくマッチするように、現地に駐在する大使館や民間企業が連携し、そこでODAなど支援ツールの情報共有を進めていくことも大切だと思っています。さらにデジタル技術活用型都市開発を海外で先に実装させる場合は、初期投資の段階で参入をためらってしまう場合もあると思うので、事業性を確保する支援策も必要だと考えています。

また近年では、一つの案件が分野を横断している場合がよくあります。内閣官房が中心となって、関係者による国内の取組と海外展開のための取組を連携させ、各府省が民間企業等から得た情報を共有する横のつながりを強化し、スマートシティの海外展開をさらに強化するための検討を進めています。

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《楠田悦子》

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