【マツダ CX-30 新型試乗】都市生活者のためのファミリーカーのど真ん中…石井昌道

絶妙なパッケージングと使い勝手

「人馬一体」とは必ずしも刺激的な走りではない

ディーゼルエンジンはだんぜん頼もしく走りやすい

マツダCX-30
マツダCX-30全 12 枚

絶妙なパッケージングと使い勝手

『マツダ3』に続くマツダの新世代商品の第2弾となる『CX-30』。人間が歩いているときの姿勢を理想の運転姿勢と定義して人間の持つバランス能力を最大限に引き出すことを目指した新世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブ ビークル アーキテクチャー)」やガソリンとディーゼルのいいとこ取りをした「SKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)」、深化した魂動デザインなどを採用した新規ラインアップのクロスオーバーSUVで、『CX-3』と『CX-5』の中間に位置する。

近年のマツダ車はデザインで人気を獲得していった面も大きいが、そのぶんユーティリティなどは少々犠牲になることもあった。CX-3などは「抜群にスタイリッシュだけれど、ちょっと狭い」と敬遠されることもあったと聞く。CX-30もスタイリッシュではあるものの、パッケージやユーティリティを真剣に追求し、扱いやすいサイズのわりに広々とした室内、容量と使い勝手に優れるラゲッジスペース、良好な視界などが実現している。

マツダCX-30マツダCX-30
マツダ3のクロスオーバーSUVバージョンともいえるCX-30だが、全長やホイールベースは短縮されている。それでも前後シート間が窮屈にならないのは、SUVゆえの室内高をいかし、シート座面高とフロア高の差を多めにとってアップライト気味に座らせるから。全幅は1800mm以内に収めているが、前シートの左右間はCX-5同等。全高は1550mm以下に抑えるなど、パッケージは絶妙だ。都市生活者のためのファミリーカーのど真ん中といったところだろう。

「人馬一体」とは必ずしも刺激的な走りではない

マツダCX-30マツダCX-30
マツダ車は、『ロードスター』の人馬一体感が貫かれていて走りが楽しいということにも定評があるが、それは何もスポーツカーのようにキュンキュンとした刺激的な走りを指し示すのではなく、あくまで自然に、人間が歩いたり走ったりするかのように無意識のうちに思い通りのクルマを動かせられるといったものだ。CX-30はまさにそんな乗り味で、際だってハンドリングが俊敏だとか、仰け反るような加速をみせるなど、強い印象を残すものはない。

そのかわりに、どんなシーンで走らせていても違和感がほとんどなく、たしかにドライバーとクルマが一体になれているのが優れたところだ。街中など低速域でのブレーキのタッチや交差点を曲がるときの穏やかにして正確なハンドリング。ちょっと速めの流れの郊外路や首都高速などでも背高なSUVを意識させないまま快適にこなしてくれる。

スポーティな走りに振ったモデルではないことがすぐにわかるが、その一方で高速域での安心感も高い。以前にドイツ・アウトバーンを150km/h以上で巡航した経験もあるが想像以上にリラックスして走れたことからも、基礎体力の高さがうかがいしれる。

ディーゼルエンジンはだんぜん頼もしく走りやすい

マツダCX-30マツダCX-30
低速域でタイヤの大きさを意識させられることがあること、静粛性は従来と一線を画すほどよくなっているものの、全体が静かなので路面状況によってロードノイズがやや目立つこと、ステアリング周りの剛性感がもう少し高ければもっといいのにと思わせることなど、多少は気になる点があったがいずれも些細なものだ。

ガソリンエンジンは必要十分ではあるが、直噴ターボなどのように低回転・大トルク型ではなく、ATも今どきとしては寂しい6速なので少し物足りなさはある。それに比べればディーゼルエンジンはだんぜん頼もしくて走りやすい。もう少し低回転域の応答性が改善されれば文句なしといったところだ。SKYACTIV-Xだったらドライバビリティが相当に良さそうだが、2020年1月以降まで待たなければならない。

全体的な乗り味が似た傾向にあるマツダ3は、ややスポーティ寄りで街中などではゴツゴツとした硬さをみせることもある。それに比べるとCX-30は適度に穏やか。その自然な振る舞いは長く付き合っていくのに向いたモデルと言えそうだ。

マツダCX-30マツダCX-30

■五つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

《石井昌道》

石井昌道

石井昌道|モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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