「岩盤規制の国」日本にグラブがついに上陸、その真の狙いは?【藤井真治のフォーカス・オン】

配車アプリの巨人「グラブ(Grab)」がついに日本上陸(写真はシンガポール)
配車アプリの巨人「グラブ(Grab)」がついに日本上陸(写真はシンガポール)全 3 枚

東南アジアでの配車アプリの巨人「グラブ(Grab)」がついに日本上陸を果たした。当面東南アジアから日本に来た観光客を対象とし、現地でダウンロードし使用しているグラブアプリでそのまま日本のタクシーが呼べるサービスを始める。

【画像全3枚】

現在のところ日本のタクシー配車アプリの最大手である「ジャパンタクシー(Japan Taxi)」のシステムにそのまま乗っかる小さなビジネス形態なのだが、このままで終わるのか、それと次の大きな展開を見込んでいるのか。日本攻略のビジョンをどこにおいているのか?興味は尽きない。

意外と小さいスタートだが

グラブ側の正式発表では、11月18日より日本でのタクシーの配車サービスが可能になっている。東南アジアから日本に来た旅行者やビジネス客は現地でダウンロードしたアプリを使い日本でタクシーが呼べることになる。当面日本人を対象としておらず意外と小さいビジネススケールとも思える。

しかしながら、グラブはすでに東南アジアの主要各国でビジネス展開をしておりダウンロード数は実に1億4000万。東南アジアの人口の実に23%に相当する。東南アジアにユーザーはどの国に行ってもクルマやバイクの配車サービスがひとつのアプリで可能になっている。その対象エリアに人気観光国ジャパンが加わる。しかもキャッシュレスであり大変便利というわけだ。

グラブグラブ
日本は他国と異なり、一般のドライバーがグラブの登録ドライバーになることはできない。やればそのまま違法タクシーの白タクとして「お縄頂戴」となるため、アプリは運転手対応を行っておらずユーザー(ライダー)対応のみだ。

今回実際に配車を行うのは日本最大級のタクシー運営及び配車サービスを提供しているジャパンタクシー。現在の日本の規制の中での妥協のー産物と言えよう。さらには配車サービスはキャッシュレス対応とのセットとなっているため、現在はグラブ・ワレット対応をしているシンガポール、マレーシア、フィリピンの顧客だけという極めて限定的なビジネスでのスタートだ。

治安、安全を理由に規制緩和の兆しもない日本での苦肉の策ではある。とはいえ3か国からの訪日客は本年120万人以上が見込まれ、ある程度の利用者を見込んでいると思われる。

東南アジアで急激な成長を遂げたグラブ

グラブの創始者はマレーシアで日産車の組み立て販売を行っている華僑系資本タン・チョングループの御曹司であるアンソニー・タン氏。2012年にマレーシアでの劣悪なタクシーのー現実を見て配車アプリのビジネスをスタートさせた。その後シンガポールに本社を移した後、サービス領域や地域を急激な勢いで拡大させ、あっという間にユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ企業)の仲間入りを果たした。

現在はクルマやバイクの配車サービスから、相乗りサービス、フードデリバリー、荷物の配送サービスと幅広いビジネスをカバーしている。最近では電動キックボードのシェアリングまで始めている。まさに東南アジアでMaaSビジネスをリードしている巨人といえよう。

日中韓大手企業の注目度も高く、筆頭株主はあのソフトバンク。トヨタ自動車、ヤマハ、韓国現代自動車など自動車関連企業だけでなく、中国の配車サービスのトップである滴滴出行(DiDi)や日本のリース会社である東京センチュリーも出資をおこなっている。

ウーバーも手こずる日本の岩盤規制のなか、次の一手は?

Uber EatsUber Eats
日本でのグラブの展開は当面「小さく始めて様子見」といったところだろうか。軸足である東南アジアユーザーをしっかり囲い込むたに、来日者のタクシーサービスから始めるところにビジネスの手堅さを感じさせる。先行して進出を果たしたウーバー(Uber)が日本の規制や商習慣のなかで散々苦労した経緯を学習し熟考した戦術なのだろう。

そのウーバー、フードデリバリー(UBER EATS)でやっとビジネス基盤を確立したようだ。いわゆる「そばやの出前」の延長上のビジネスで、奇跡的にお上の規制の外にある。グラブもねらってきそうな市場ではある。東南アジアからの訪日客向けのグラブ・フードといった次の一手、その次はいよいよ日本人対象のビジネスという計画があるかもしれない。

岩盤規制。高い鉄道、バスなどの公共料金。高いタクシー料金。MaaSという言葉ばかりが上滑りしているが、実態は規制はそのままで限定領域のみを補助金で誘導していくという日本方式のMaaS。ガラパゴス世界は一見心地良いのだが、コスト負担は税金だ。いったい、いつまで続くのであろうか?

<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。

《藤井真治》

藤井真治

株式会社APスターコンサルティング CEO。35年間自動車メーカーでアジア地域の事業企画やマーケティング業務に従事。インドネシアや香港の現地法人トップの経験も活かし、2013年よりアジア進出企業や事業拡大を目指す日系企業の戦略コンサルティング活動を展開。守備範囲は自動車産業とモビリティの川上から川下まで全ての領域。著書に『アセアンにおける日系企業のダイナミズム』(共著)。現在インドネシアジャカルタ在住で、趣味はスキューバダイビングと山登り。仕事のスタイルは自動車メーカーのカルチャーである「現地現物現実」主義がベース。プライベートライフは 「シン・やんちゃジジイ」を標榜。

+ 続きを読む

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. レクサス『IS』に25周年記念車、専用グリーンと日本にない3.5リットルV6搭載…北米限定350台
  2. 新車で30万円以下から買える!「125ccスクーター」13選、スズキ・ホンダ・ヤマハを完全網羅
  3. 「惚れ惚れするほどカッコいい」ボルドー色のホンダ『プレリュード 2027 リミテッドエディション』に絶賛の声
  4. アウディ『A2』、入門コンパクトEVとして復活…航続は最大646km
  5. ホンダ『シビックタイプR HRC』は2027年登場か…“究極のFF”が市販化の可能性
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 居眠り・脇見を監視、「DMS」を義務化…乗用車は2031年から、バス・トラックではすでに普及
  2. ホンダの交換式電池、建設現場で実証…高さ385mの「トーチタワー」
  3. 【全文PDFプレカン】日産自動車 長期ビジョン発表会
  4. 電動車は誰が最後まで面倒を見るのか…KPMGコンサルティング プリンシパル 轟木光 氏[インタビュー]
  5. ams OSRAM、CMOSイメージセンサー事業を米インディー・セミコンダクターに売却…AIフォトニクス・ARに集中
ランキングをもっと見る