“INSPIRED BY YOU”が成功のカギ…シトロエンS.A. CEO[インタビュー]

シトロエンCEOのリンダ・ジャクソン氏
シトロエンCEOのリンダ・ジャクソン氏全 16 枚

本国シトロエンCEOのリンダ・ジャクソン氏が来日した。前回は2015年の東京モーターショーの時だったので4年ぶりに日本のメディアの前に立った。幸いにも少しの時間インタビュー出来たので、その内容をお伝えする。

ファンタスティックな結果

----:2014年に就任されて以降、確実に成長しており2018年はグローバルで100万台を超える販売台数を達成し、ヨーロッパでは5年間連続で成長しています。因みに2013年からは28%も成長しているとのことですが、この実績についてご自身ではどう評価されますか。

リンダ・ジャクソン氏(以下敬称略):ファンタスティック!(大爆笑)。この成功のキーは、私がCEOになった時に立てた戦略が挙げられます。これはシトロエンの伝統や歴史に基づきながらも、全国のシトロエンユーザーからインスピレーションを受けたいという思いを込めた、“INSPIRED BY YOU”というシグネチャーに込められています。そこから製品、サービス、カスタマージャーニーという3つを軸にした戦略です。

まず製品ではユニークなデザインとともに、どれもがシトロエンファミリーに見えることを重要視しています。これはドアを開けた時、また道路で見かけた時に絶対にシトロエンだと分かることがポイントです。それからコンフォート。もちろん乗り心地の良さは重要です。しかしいまのお客様は乗り心地以外にも要求があります。それは接続性や使いやすさ、収納性などで、これらを含めたコンフォートを追及していきます。これは私達の中心、核となるものです。

次にサービスです。お客様がより快適に、かつストレスなくサービスを受けられることによって、他ブランドと差別化出来ると考えています。最後はカスタマージャーニー。これはお客様自身の体験というもので、ディーラーでの対応を軸に、例えば東京ではシトロニストカフェをオープンするなど、お客様の生活をより快適に、より気楽にディーラーに訪問してもらいたいというためのものです。

これらを成功させるためにはもうひとつ重要なキーがあります。それはベストなチームを作ることです。もちろんパリだけではなく、日本もこの点は同様で、例えば2015年、私が日本に来た時には1000台規模の販売台数でしたが、そこからチームとしてこの戦略を進め現在は4000台規模にまで成長しています。この戦略を実行してくれたチームは本当に素晴らしいと思っています。

驚きのCEO就任

----:ところで2014年にシトロエンのCEOに決まった時、どのように思いましたか。

ジャクソン:本当に驚きました。当時、私はシトロエンの英国&アイルランド法人のマネージングディレクターをしており、たまたま2014年1月に当時のCEOに会って話をしていたのです。ただ、その時はビジネス的な話が中心でこのような話題はありませんでした。その後何度か電話で話す機会もありましたがその時も特に……。

そして4月にすぐに会いたいと本社に呼ばれたのです。そこで初めて私の仕事(CEO)を引き継がないかと打診されたのです。もちろんぜひやりたいと思いました。戦略を新しく作り出し、新しいポジショニング、新しい市場など全て見ていくのですから大きなチャンスで、とても嬉しかったですね。しかし、仕事を始めて一週間経った時に、これは大変なことを引き受けてしまったと思いました(笑)。でも大きなチャレンジですから楽しんで仕事を進めました。それが今回の結果につながったのでしょう。シトロエン アミワンシトロエン アミワン

新しい技術を手の届く価格で提供

----:さて、シトロエンはPSAグループの一員としてこれから10年先を見据えた時に、どのようなポジショニングとなり、また、どのようなラインナップを揃えていこうと考えていますか。

ジャクソン:引き続きポジショニングはお客様の求めているものを反映していくことに変わりはありませんし、いま述べたデザインやコンフォートといった柱も継続します。もちろん新しい技術も導入しますので少しは進化していくでしょうね。

また、よりインターナショナルになりたいと思っています。現在シトロエンはヨーロッパ市場で80%ほどの売り上げを占め、それ以外が20%です。これを2021年には2倍の40%に伸ばそうと考えています。その時にはヨーロッパの数を減らすのではなく、新しい市場での伸びをさらに増やすのです。例えば2020年にシトロエンはインドへの導入を発表していますし、もちろん現在導入している日本を含めた市場もさらにボリュームの拡大を推し進めます。

10年の間には市場も変わるでしょう。特に電動化という動きが顕著ですから、我々もプラグインハイブリッドや電気自動車をグローバルに展開していきます。さらに自動運転やコネクティビティも重要です。そういった動きの中で、我々は我々の役割を果たしていきます。具体的にはそういった技術をお客様に手の届く価格で届けること。シトロエンはいわゆる主流のお客様を相手にしているのですから手が届かない価格では意味がありませんからね。

これからの10年はいままでの30年間に比べても非常にエキサイティングな時代が自動車業界には来るでしょう。電動化や自動走行だけではなく、お客様が自動車とどのようにインタラクションするかも重要です。買ったりリースをしたり、あるいはカーシェアなど新しい方法も出てくるでしょうから、そういったことも踏まえながら戦略を進めていかなくてはなりません。シトロエン 5HPシトロエン 5HP

歴史は財産

----:さて、シトロエンは今年100周年を迎えた、非常に長い歴史を持つ会社です。そして日本にも古くからディーラーがあり、ヒストリックシトロエンも数多く存在しています。そういったオーナーに対してシトロエン本社としては何らかの活動や対応は考えていますか。

ジャクソン:答えは2つあります。日本についてはインポーターであるプジョー・シトロエン・ジャポンからお話をした方がいいのですが、私からはヘリテージを非常に重要視しているということを強調したいのです。

100年規模の歴史を持つ会社はなかなか他にはありません。実は2014年に新しい製品のミーティングをデザインやプロダクトチームも一緒になって、コンセルバトワールで行いました。ここにはシトロエンの多くのヒストリックカーやコンセプトカーが置いてある場所なのですが、ここで一番好きなモデルは何か、シトロエンとは何かということを議論したのです。

これらにインスパイアされて今日のモデルにつながっています。凄くアイコン的なモデルもあれば、ダブルシェブロンも含めてフロント周りに強い個性を持っているクルマも多くあり、こういったところは他にはありません。また、乗り心地や使い勝手という意味も含めたコンフォートな部分を強調したクルマ達も数多くあります。このように過去を忘れることはできませんし、忘れてはいけません。それによって将来に向けてインスパイアされ、シトロエンの歴史を継承していくのです。

またヒストリックオーナーに対してもやはり重要視しています。彼らはファンでもあると同時に、我々にとってのアンバサダーにもなってくれる人たちで、グローバルで1700万人もいらっしゃいます。そういう人たちを非常に大事にしていきたいと思っています。

----:特に日本市場においてはクルマのメンテナンスも含めて対応して頂きたいですね。

ジャクソン:非常に良いポイントだと思います。

クリストフ・プレヴォプジョー・シトロエン・ジャポンCEO:日本だけではないのですが、ヨーロッパでもパーツの問題は出ています。今後お客様とコンセルバトワールとの関係をより深くし、こういった問題を解決していきたいですね。

----:期待しています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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