スバルの電動化戦略:「SUBARUらしさ」を出せるかを問う…スバル技術ミーティング

スバル技術ミーティング
スバル技術ミーティング全 18 枚

SUBARU(スバル)は20日、「技術ミーティング」というプレスイベントを開催した。以前から技術系の記者発表会は行われていたが、中村知美社長自ら登壇し、アイサイト、新型エンジン、ストロングハイブリッド、BEVのプロトタイプを発表するという異例の会見だった。

【画像全18枚】

記者発表の詳細やスバルの技術ロードマップについては既報を参考にしてもらうとして、ここでは、中村社長に続いて発表技術の各論を担当した大抜哲雄 専務取締役執行役員 CTOが強調していた「SUBARUらしさ」について考えてみたい。

発表された、新型の1.8Lリーンターボエンジン、水平対向エンジンとTHSを融合したストロングハイブリッド、スバル初となる市販BEV、次世代アイサイトは、どれも新しい技術だが、同時に「SUBARUらしさ」と自らのアイデンティティを再確認しようとしているようにも見えた。もっといえば再構築だ。

パワートレイン3種と次世代アイサイトを発表

今回発表された情報をロードマップから整理してみよう。

●1.8リットル・リーンターボエンジン
●トヨタと共同開発中のEV(Cセグメント SUV)
●水平対向エンジン+THS(トヨタハイブリッドシステム)

以上の3つが今回の発表の主軸だ。これに自動運転やコネクテッドカーを見据えた次世代アイサイトも加わる。

1.8リットルエンジンは高圧縮とターボによる過給でリーンバーンを実現するもの。2020年に市場投入される。アプローチはマツダのSKYACTIVエンジンと共通するもので、熱効率で40%以上を目指す。スバル内燃機関エンジンの最終的なターゲットは45%としている。

次に市場にでてくるのはBEV(EV)だ。トヨタと共同開発中のプラットフォームの車両となる予定だ。スペックなどはプロトタイプなので未定・非公開。トヨタ『86』/スバル『BRZ』と同様な姉妹車の形で、トヨタとスバルから同じEVのSUVが登場すると思われる。

BEVの後にストロングハイブリッドのパワートレインが投入される。これも詳細は未定だが、4気筒の水平対向エンジンにトヨタのTHSを組み合わせたものになる。前述の1.8Lエンジンになるのかどうかも未定だという。スバルはすでに独自のマイルドハイブリッドのシステムe-BOXERを持っているが、国内でのストロングハイブリッドはこのパワートレインが最初となるはずだ。

トヨタ共同開発とTHS採用でスバルらしさが変わる?

じつは、すでに北米スバル『クロストレック』(日本名:『XV』)に同様な構造のプラグインハイブリッドを発表している。ハイブリッド部分はトヨタ『プリウスPHV』と同じ(THS)ものだ。プリウスの4WDは後輪に独立したモーターを搭載するタイプで、クロストレックもこの方式のAWDシステムになっている。

しかし、スバルのストロングハイブリッドは、プロペラシャフトを持ったタイプのAWD(4WD)となる。プリウス方式の4WDは、回生ブレーキを強くすると、減速時に姿勢を乱しやすいが、スバル方式なら回生ブレーキの制御を最適化できる。

BEVはトヨタと共同開発で、ストロングハイブリッドは、THSのOEM供給を受ける形になるので、この場合、SUBARUらしさの鍵は、コンポーネントの組み合わせと制御方法となる。THSは、変速機能を含めた出力特性をエンジン出力と駆動モーターのカップリングで制御する。

AWDでは、前後のトルク配分をどうするか、センターデフまたはそれに相当する機構をどうするか。部品をつなぐだけならそれほど難しいことではないかもしれないが、エンジニアたちは製品化までに「どうすればSUBARUらしい車になるか」を自問自答を繰り返すことになる。

スバルならではのADAS・自動運転プラットフォーム

ただし、スバルの安心・安全性能は次世代車両でも独自性を発揮しそうだ。アイサイトを源流とするスバルのADAS機能、自動運転機能の肝は画像認識技術にある。発表された次世代アイサイトでは、インフラ協調(コネクテッド)やレーダーによるセンシングも積極的に取り入れられる予定だが、制御の基本はカメラである。

自動運転にはLiDAR(3Dスキャナ)が必須というイメージがあるが、現在、LiDARで認識できる情報はカメラ画像の処理でも大きな差はない。テスラは明確にLiDARは使わないとしている。値段や大きさも改善されているとはいえ、まだCMOSセンサーの比ではない。カメラの光学的性能と画像補正技術によって、夜間・逆光などの認識性能が上がっている。

スバルはドライバーモニタリングシステムを乗用車にいち早く搭載している。メータークラスタと車載インフォテインメントシステムのECUプラットフォームを共通化(QNXハイパーバイザー)しているので、車両情報、車内カメラ、クラウド連携を統合管理しやすくなっているのも特徴だ。車両制御とクラウド連携がしやすくスケールさせやすい。

スバルでは、アイサイトや電子制御基盤を活用し、車線がない道路や雪で隠れた道路の通行帯認識、衝突予測によるエアバッグ制御、ブレーキ+ステアリング介入による衝突回避(高度な進路計画)といった安全機能を開発中だ。テスラのレベル2オートパイロットでは、類似の機能が実装されているが、これも周辺環境を総合的に把握できる画像処理を、制御の軸に据えたから機能追加や応用が早いという側面がある。この点で、スバルのアイサイトベースのADASは、自動運転向きのプラットフォームといえる。

ADASと自動運転は、SUBARUらしさをいちばん表現できる領域といえるだろう。

スバルの本質はエンジンだけではない

多くのスバルファンにとっては、水平対向エンジンとAWDが残ってもスバル車がプリウスっぽくなってほしくないと心配かもしれない。THSはサプライヤーの変速機のひとつと解釈すれば、そう極端なことにはならないだろう。

いまは業界の変革期でもあるので、スバルも次の世代に向けて生まれ変わろうとしているのは確かだが、筆者は状況を楽観視している。スバルの本質が「安心と愉しさ」であり「技術志向」ならば、共同開発だろうが内燃機関だろうが電気モーターだろうが関係ない。

なお、筆者としては、EVのトルク特性は、充電の不便さを超える「愉しさ」を提供してくれると思っている。むしろ、スバルは4インホイールモーターの独立制御AWDで信地旋回ができる車を出してほしいくらいだ。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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