【懐かしのカーカタログ】ホンダらしさ溢れた「クリエイティブ・ムーバー」4選

ホンダのクリエイティブ・ムーバー4車
ホンダのクリエイティブ・ムーバー4車全 9 枚

クリエイティブ・ムーバー……そう聞いて「ああ、懐かしい」と思われる方も多いはずだ。94年10月、初代『オデッセイ』の登場を機に、当時は一般に“RV”と言われたジャンルのクルマをホンダはそう呼ぶことにし、以降、次々と新モデルを投入。いずれも個性と魅力に溢れたヒット作となり、以降のホンダのレパートリーを広げた。今回はそんな、ちょっと懐かしいクリエイティブ・ムーバー4車のカタログをご紹介する。

オデッセイ(初代・1994年10月~)

ホンダ オデッセイ(初代・1994年10月~)ホンダ オデッセイ(初代・1994年10月~)
“クリエイティブ・ムーバー”の第一弾として登場した初代『オデッセイ』。それまでミニバンを持たなかったホンダが、既存のミニバンとは違うまったく新しいコンセプトで作り上げた意欲作だった。

“幸せづくり研究所。”のメインコピーで始まるカタログには、(バリエーション紹介と諸元表以外の)すべてのページにわたり『アダムスファミリー』が登場する。当時このカタログをディーラーで見たお子様が怖がって泣いた……そんなエピソードがあったとか、なかったとか。いずれにしても3列シートの室内に“本物の”アダムスファミリーがシートベルトをキチンと締めて乗車しているカットなど不思議なリアリティがあり、知らぬ間にクルマに引き込まれていく仕掛け。

ホンダ オデッセイ(初代・1994年10月~)ホンダ オデッセイ(初代・1994年10月~)
当時の『アコード』をベースに、狭山の同じラインで流すための低全高(2WDのルーフレールなし車で1645mm)と全体がフラットな低床を実現。バックドアを開けて後ろ向きにも座れ、クルッと床下に格納できるサードシート、スライド式ではない、セダン同様のヒンジ式の後席ドアなど、アイデア満載で上質な“プレミアム・ムーバー”だった。

CR-V(初代・1995年10月~)

ホンダ CR-V(初代・1995年10月~)ホンダ CR-V(初代・1995年10月~)
“コンフォータブル・ラナバウト・ヴィークル”を意味する車名で登場した、クリエイティブ・ムーバーの第二弾。『オデッセイ』がセダンライクな既存のミニバンとは一線を画すコンセプトだったように、この『CRーV』も当時の『シビック』をベースに仕立てられた。

“アクティブ・ムーバー”がコンセプトで、それまでのクロカン4WDにはなかった低重心とワイドトレッド/ロングホイールベースの採用により、セダンのような快適なドライバビリティも実現。カタログの表紙にはカウボーイハットを被ったモデルが立っており(ちなみに広告コピーは「ホンダ買うボーイ」だった)背景には都会の高層ビル群の組み合わせ。

ホンダ CR-V(初代・1995年10月~)ホンダ CR-V(初代・1995年10月~)
このことからもわかるように、街乗りにも適したクルマで、見晴らしのいいアイポイント、フラットフロアを生かしたコラム式ATレバーとステッキ式駐車ブレーキレバー、使いやすい上下2分割のリヤゲート(下側は横開き)、採り出せばテーブルになるラゲッジスペースの床板などを採用した。

ステップワゴン(初代・1996年5月~)

ホンダ ステップワゴン(初代・1996年5月~)ホンダ ステップワゴン(初代・1996年5月~)
こどもといっしょにどこいこう。“ファミリー・ムーバー”の狙いのもと、“クリエイティブ・ムーバー”の第三弾として登場した『ステップワゴン』は、先行の『オデッセイ』が3ナンバーだったのに対し5ナンバーの手頃なボディサイズとし、より身近な家族のためのクルマとして登場。

筆者自身、今回カタログをご紹介している4モデルはいずれもそのデビューに立ち合っているが、このクルマについては『オデッセイ』とは正反対の1830mm(2WD車)と全高を高くし、見るからに容積のありそうなボクシィなスタイルに仕上げてきた点にインパクトがあった。おまけにフロアは低く(スライドドア部は2WD車で465mmだった)フラットだったから、人の乗り降りも荷物の積み下ろしも申し分なしのスムースさ。

ホンダ ステップワゴン(初代・1996年5月~)ホンダ ステップワゴン(初代・1996年5月~)
シートアレンジの多彩さも先行する他社のミニバンにまったくヒケをとらないもの。まさしく“走るリビングルーム”と表現するのが相応しいできに、ただただ感心したものである。シンプルなスタイリングということもあり“クルマを道具としてスマートに使いこなすこと”を教えてくれた1台だった。

S-MX(1996年11月~)

ホンダ S-MX(1996年11月~)ホンダ S-MX(1996年11月~)
“ストリート・ムーバー”の位置づけで誕生したのがこの『SーMX』。とにかく弾けていたというべきか、筆者の手元にも当時、開発者をインタビューした記事の載った某新車速報誌がカタログとともに残っているが、思い出されるのはLPL(開発責任者)、デザイナーなど当時お会いした開発メンバー全員が実に個性派ぞろいで、皆、笑顔だったということ。「おもしろいでしょ? こんなクルマ作っちゃいました」的なムードは、このクルマの出来映えどおり。

今だから言うが、2146×1180mmのフルフラットになるシートアレンジの説明を受けながらデザイナーに「ね?」とニヤリとされても、そういうキャラでやっていない筆者などどう答えていいか、表情に困ったものである(笑)。

ホンダ S-MX(1996年11月~)ホンダ S-MX(1996年11月~)
栃木のテストコースを走れば、コーナーで光沢のある織物でできたベンチシートはオシリが滑るし、カタログの表紙と同じオレンジのボディカラーは、背の高さもあって街中ではやたらと目立つし、まぁよくぞ作ってくれたものだ……と思った。しかし80年代の初代『シティ』以来の、コンパクトで元気さに溢れた、ホンダらしい1台だったことは確か。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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