JRはBRTで、地元は鉄道で…模索が続く日田彦山線復旧の方向性 3月末までに結論か?

JR九州が提案するBRTでの復旧に導入するバリアフリー車両のイメージ。
JR九州が提案するBRTでの復旧に導入するバリアフリー車両のイメージ。全 3 枚

JR九州はこのほど、2月12日に開催された「第5回日田彦山線復旧会議」の内容を公表した。

城野(じょうの)駅(北九州市小倉南区)と夜明(よあけ)駅(大分県日田市)の間68.7kmを結ぶ日田彦山線は、2017年7月に北九州を襲った九州北部豪雨の影響で、壊滅的な被害を受けた添田(そえだ)~夜明間が長期不通を余儀なくされた。

以来、福岡県、大分県、大分県日田市、福岡県東峰(とうほう)村、添田町といった沿線自治体と路線を維持・運営する立場のJR九州は、2018年4月から「日田彦山線復旧会議」を開き、日田彦山線復旧へ向けた方向性を検討してきた。

しかし、地元負担なしに鉄道での復旧を求める沿線自治体と、復旧後の収支改善分として1.6億円/年の地元負担を求めるJR九州が対立。2019年4月に開催された4回目の会議では、JR九州からバス高速輸送システム(Bus Rapid Transit=BRT)による復旧が提案された。

JR九州が提案しているBRTの運行方式。彦山~筑前岩屋間では釈迦岳トンネルを活かしたBRT専用道とする。JR九州が提案しているBRTの運行方式。彦山~筑前岩屋間では釈迦岳トンネルを活かしたBRT専用道とする。

これを受けて沿線市町村では、2019年6月から2020年1月にかけて、協議の経過報告やJR九州による住民説明会、住民との意見交換が行なわれ、5回目となる今回の会議でその結果が公表された。

それによると、日田市ではBRTを求める声があったものの、東峰村では「JRは鉄道での復旧にやる気が見えない」、添田町では「JR九州は経営状態もよく、この路線の維持運営は十分できるのではないか」などといった厳しい意見が出ている。東峰村では存続に関するアンケートも取られたが、鉄道による復旧が9割以上占める結果となっている。

JR九州が提案しているBRTの運行では、鉄道との対面乗換えも考慮に入れている(添田駅の例)。JR九州が提案しているBRTの運行では、鉄道との対面乗換えも考慮に入れている(添田駅の例)。

3市町村とも地元負担がない復旧を望む点では共通しているが、2月5日に行なわれた小川洋福岡県知事の定例会見では、東峰村の渋谷村長が地元負担を行なうことについて言及したことが記者から示されている。これに対して小川知事は「鉄道を残したいという強い思いから発言されたものだと理解しています」と述べた上で、県としての財政支援は難しいとし、依然として地元負担なしの姿勢を崩していない。

一方、5回目の会議では、JR九州からBRTによる復旧案について具体的な内容が示されている。

それによると、各市町村内での停留所増強、バリアフリー対応バスの利用、日田駅までの直通運行と添田・夜明・日田各駅での鉄道との接続強化や対面乗換え、他の交通機関との結節強化、ロケーションシステムの導入といった内容が盛り込まれている。

合わせて鉄道跡地の利活用案も示されており、沿線自治体ではこれらの案を持ち帰り、再度、住民に意見を求める運びとなっている。その上で3月末までに6回目の会議を開き、方向性の合意を目指すとされた。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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