スタッドレス vs オールシーズン、冬タイヤの性能はどれだけ違う?

横浜ゴムのスタッドレスタイヤ『アイスガード6』とオールシーズンタイヤ『ブルーアース4S』を比較
横浜ゴムのスタッドレスタイヤ『アイスガード6』とオールシーズンタイヤ『ブルーアース4S』を比較全 19 枚

スタッドレスタイヤ vs オールシーズンタイヤ

東京のように年に降っても数回程度の降雪に、スタッドレスタイヤをわざわざ購入して履き替えを行う。これ、面倒だし第一勿体ない…そう考える読者は少なくないと思う。かくいう私もその一人で、言っちゃ悪いが過去スタッドレスタイヤは1度しか購入したことがない。

それで、これまでも代替品を探して年に2~3回程度の降雪に対応しようと思っていた。でもって一昨年は最近流行り始めたオールシーズンタイヤを試してみた。有難いことに装着してすぐに大雪に見舞われ、我が家の前の道も積雪10cm程度に。こうなると夏タイヤでは動かすことが出来ず、周囲の家の夏タイヤ装着車はしばしのお休み…ということになった。

当時装着したのは敢えて某メーカーと言うが、日本市場におけるオールシーズンタイヤの魁を作ったメーカーと言っても過言ではないブランド。実際に雪上に出てみると、見事なほどよく走り、これで十分という思いで試乗を終えた。

さて今回、横浜ゴムが毎年恒例となるTTCH(タイヤテストセンター北海道)での試乗会で我々に提供してくれたのは、最新鋭のスタッドレスタイヤ『アイスガード6』と、昨年10月に本格販売を開始した『ブルーアース4S』の比較テストという面白い企画。いわば「スタッドレスvsオールシーズンタイヤ」である。

氷板路で20km/hからの全制動テスト、結果は

横浜ゴムのスタッドレスタイヤ『アイスガード6』とオールシーズンタイヤ『ブルーアース4S』を比較横浜ゴムのスタッドレスタイヤ『アイスガード6』とオールシーズンタイヤ『ブルーアース4S』を比較
テストは室内氷板路でのブレーキテストと、圧雪路でのスラロームである。実はどちらも大きな違いが出た。勿論いずれの場合もスタッドレスに凱歌が上がるわけだが、かといってそれはオールシーズンを否定するものではないことをはじめに断っておく。

何故なら、都会の雪は積もってから完全に消えるまで積もり方にもよるだろうが、精々2日も我慢すれば幹線道路の雪はなくなる。その後は減りの早いスタッドレスでいるよりもオールシーズンの方が効率的と考えるし、そもそもオールシーズンタイヤのグリップ力は東京の雪程度なら十分である。

ではどこまで攻めたら違いが出るのか。

氷板路ブレーキテスト氷板路ブレーキテスト
まずは氷板路で20km/hからの全制動テスト。写真でご覧の通り、僅か20km/hのスピードでおよそ5mの違いが出る。これが速度を上げていくと、その差は明確に広がるからやはりアイスバーンの制動性能ではほとんどスタッドレスに歯が立たないレベルである。

しかし、こうした状況は東京ではまず起こり得ない。勿論部分的な凍結はあるだろうが、5m、10m と滑ってしまうような状況は滅多に無い。例えば箱根のような山間部に行って雪に見舞われ、翌日山を下る時に部分凍結…なんてことはあるだろうが、その程度ならばブルーアース4Sで十分だと思えた。大切なのはアクセルの開け具合。いきなりガバッと踏めば当然グリップを失うから、優しい扱いが必要だということだ。

圧雪路面のスラローム走行、絶対性能だけなら断然スタッドレスだが

横浜ゴムのスタッドレスタイヤ『アイスガード6』とオールシーズンタイヤ『ブルーアース4S』を比較横浜ゴムのスタッドレスタイヤ『アイスガード6』とオールシーズンタイヤ『ブルーアース4S』を比較
圧雪路面のスラローム走行はオールシーズンのブルーアース4Sから行った。パイロンの数にして5~6本はあったと思うが、最初の2本ぐらいはスムーズ。スピードも徐々に加速して行って、最終的には40km/h程度だがそこまでスピードが上がると発散し始めて、なかなかパイロンに付けないいわゆるアンダーステア状態から、最終的にはテールが滑り出す。このスラロームを3回行った。往きはパイロンスラローム。復路はその横を直線的に戻ってくるので、そこで全制動なども試してみたが、雪上での制動性能も十分だと感じた。

続いてアイスガード6でのトライ。さすがにスタッドレスのグリップ力は圧倒的に高く、パイロンをほぼ直線的に攻めることが出来るし、車速もほぼ50km/hに届くほどのスピードでも発散の兆候すら見せない。復路での全制動もかなりの違いがあった。そんなわけだから冬シーズンにスキーなどで頻繁に雪道を走る都会人に対しては、文句なくスタッドレスがお勧めである。

オールシーズンタイヤスラローム7オールシーズンタイヤスラローム7
パイロンスラロームの写真をスタッドレス、オールシーズンとも7枚ずつ掲載しておく。車両の黒がアイスガード、白がオールシーズンだ。オールシーズンの場合、車体側面がより大きく見え、ステアリングの舵角大きくなっているのが明確に見て取れると思う。一方のスタッドレスは直線的に攻められ、車体側面が見えないし、何よりカメラマンに近づいて来るスピードが違うので一気に撮影出来てしまったようだ。

純粋に性能だけを求めるなら断然スタッドレスだが、東京の雪程度ならオールシーズンでも十分対処できることを改めて理解した。オールシーズンの泣き所はドライ路面でのロードノイズの増大だが、その大小はドライ、雪どちらの路面を重視してパターンやコンパウンドを変えるかによるようだ。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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