4月から新型車の「オートライト」義務化へ…日本独自の基準も

石井昌道氏
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新型車は令和2年からオートライト義務化


ヘッドライト アップ画像

新型車は令和2年4月から、継続生産車は令和3年10月からオートライト機能(ヘッドライト=前照灯の自動点灯)が義務化される。


周囲の明るさが一定以下になるとヘッドライトが自動点灯するオートライト機能は、点け忘れ防止に効果があり、すでに日本でも普及している。欧州からの輸入車はほぼ全数、日本車でも軽自動車から用意がある。ただし、これまでは明確な基準がなく、自動点灯する周囲の明るさおよびタイミングなどはメーカーによって差があったが、義務化によって統一されることとなる。

点灯タイミングは1000ルクス


基準は、周囲の明るさが1000lx(ルクス)未満になればロービーム(すれ違い用前照灯)が点灯せねばならず、応答時間は2秒以内。7000lxを超えれば消灯せねばならず、応答時間は5秒超300秒以内。1000lx以上7000lx以下については各メーカーの判断に委ねられる。また、自動点灯に関わる機能については手動による解除ができないものでなければならないとされている。

1000lxという明るさは薄暮時間帯(日没の前後1時間)の早期、つまり日没の1時間前とほぼ等しい。「ヘッドライトを点灯しなくても問題なく運転できる明るさ」と感じるドライバーも少ないなだろう。ただし、日没に向かって暗くなり始める時間帯であり、JAFの実験<<その点灯タイミング「1,000ルクス」ってどんな明るさ?(JAF Safety Light)>>によると、ドライバー目線では信号や他車のブレーキランプの点灯などが目立ち始め、歩行者からクルマを見た場合には、ヘッドライトの点灯の有無で認識の度合いや向かってくるスピード・距離感に明確な差があったとされている。また、ビルの影などは時間帯に関係なく1000lxを下まわることもあり注意が必要。道路交通法によるヘッドライト(前照灯)の点灯義務は、日没時から日の出時と定義される夜間であり(ポジションランプ=車幅灯、テールライト=尾灯も同様に点灯義務がある)、これから義務化されるオートライト機能はそれよりも早いタイミングで点灯することとなる。

事故は薄暮時間帯に多く発生 ~ 重要なのは被視認性


ドライバーにとっての見やすさ以上に重視せねばならないのは、歩行者をはじめ自転車や他車を含む周囲からの認識度、すなわち被視認性だろう。日本は先進諸国のなかで、残念ながら交通死亡事故において歩行者を巻き込む割合がとても高く、それも薄暮時間帯に多く発生しているからだ。

警察庁が平成25年から平成29年の5年間における薄暮時間帯の交通死亡事故発生状況を分析したところ「日没時刻と重なる17時台から19時台に多く発生していること」「薄暮時間帯には、自動車と歩行者の衝突する事故が最も多く発生しており、事故類型別では、横断中が約9割を占めていること」「横断場所の内訳では、横断歩道以外での発生が約8割で、横断歩道以外の横断における歩行者の約7割に法令違反があること」が明らかになった。また、自動車×歩行者の時間当たりの事故件数は、昼間(薄暮時間帯を除く)が167.7件、夜間(薄暮時間帯を除く)が321.1件なのに対して、薄暮時間帯は681.5件と飛び抜けて多い。

そのため、薄暗くなる前からヘッドライトを意識的に使用する「早め点灯」が推奨されているわけだが、これはオートライト機能の義務化が有効な対応手段であることの裏付けとも言える。歩行者側としても道路を横断するときには注意が必要で、法令を遵守して横断歩道を活用し、薄暮時間帯や夜間には反射材やライトなどで自己防衛するべきだろう。

オートライト機能の義務化は欧州が先行している。2011年にはデイタイムランニングランプ(昼間点灯)が義務化され、2015年にはオートライト機能が義務化。緯度の高い欧州では薄暮となる時間帯が長く、昼間でも被視認性の重要度が高いことが広く認識されているため、早期の導入となった背景がある。

国土交通省は安全基準等について、国際的な整合性を図り自動車の安全性を確保するため、国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」に平成10年に加入。WP29(国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム)第168回会合で「静音性車両に係る協定規則(ハイブリッドカーやBEVなどの車両接近通報装置の義務化)」が採択されたことを踏まえて日本にも導入することを決定し、同じタイミングで、日本の薄暮時間帯の交通事故実態を踏まえてオートライト機能も義務付けすることとなった。

日本独自の基準も


日本独自の基準もある。欧州では1000lx以下での走行中も任意にヘッドライトからポジションランプへの切り替えができるが、日本ではそれができず、ヘッドライトが点灯し続ける。慣習として、信号や踏切などで停止した際に前走車や対向車に気遣ってヘッドライトからポジションランプに切り替えることがあるが、そのまま走り始めてしまってヘッドライト点灯を忘れてしまうなんてことにも対応できるわけだ。

オートライト スイッチ
メルセデスの場合、ヘッドライトのスイッチ自体にOFFがない

欧州車の多くはヘッドライトのスイッチに“OFF”がなく、エンジンあるいはハイブリッドカーやBEVのシステムがオンの状態ではヘッドライトかポジションランプ、デイタイムランニングランプのいずれかが常時点灯することになる。

日本では1000lx以下でも停止中なら任意でヘッドライトを消すことが可能。すでにオートライト機能の義務化に対応した新型の日本車もほとんどがそういった設定となっている。具体的にはオートライト機能が働く“AUTO“がデフォルトになっていて、対向車への配慮などで意識的にヘッドライトを“OFF”の位置にしても、スイッチは自動で“AUTO”に戻るようになっている。つまり“OFF”で固定することは不可能で、走り出すとヘッドライトは点灯する。法的に具体的な機構についての指示はないが、実際はすべての日本メーカーがこの形式になるだろう




 

1000lx以上、7000lx以下についてはメーカーの判断となるが、どういう設定にするかでトンネルを出たり入ったりする道路などでの点灯・消灯のタイミングに差が出てくることになる。これまでのオートライトは、日本車はトンネルに入れば点灯し出るとすぐに消灯するものが多く、欧州車は一度点灯するとトンネルから出ても暫くは消灯しないものが多かった。山間部の高速道路などではトンネルが連続するので、そこでの安全性を考えれば暫く消灯しないほうがいいだろう。1000lx以下になってから点灯までわずか2秒といっても100km/hで走行していれば約56m進むのだから決して小さくはない。また、オートライト機能が登場した頃のように敏感に点灯・消灯を繰り返すと前走車にパッシングしていると勘違いされるのでは? などという不安を抱かせることにもなる。

雨天はヘッドライトを点灯することが望ましいが、1000lx以上と明るいことも少なくない。そこで、ワイパーを作動させればヘッドライトスイッチが“AUTO”なら自動点灯するという設定が主流になりそうだ。

今後は日没の約1時間前の薄暮時間帯になるとヘッドライトが自動点灯するクルマが増えてくることになる。それを見たオートライト機能のないクルマのドライバーが早期点灯を心がけるようになれば交通事故の抑制に期待が持てる。オートライト機能が義務化されるとはいっても完全に普及するまでにはまだ時間がかかるので、これを機に早期点灯の啓蒙にますます力を入れていくべきだろう。

オートライト義務化へ

《SIP cafe》

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