[スピーカー交換に挑戦]スピーカーを換えると、なぜ音が変わるのか

スピーカー交換が成された例(ダイヤトーンデモカー)。
スピーカー交換が成された例(ダイヤトーンデモカー)。全 2 枚

運転中に音楽を聴いているドライバーは相当に多いはずだ。その音楽を「もっと良い音で聴きたい」そう思ったことはないだろうか。もしもそれを望むなら、「スピーカー交換」を検討してみよう。これを実行すれば、確実に“音の質”を変えられる。

しかしながら「スピーカー交換」をしようと思っても、何を選べばいいのか等々、よく分からないことも多い。結果、最初の一歩が踏み出せない…。そう感じているドライバーも少なくないようだ。そんな方々に向けて、「スピーカー交換」に関するすべてを解説する集中特集をスタートさせる。

第1回目となる当回は、「スピーカー交換」をすると音が変わるその理由を詳しく考察していく。

もしも純正スピーカーが“フルレンジタイプ”だったら、音が良くなる“ノビシロ”は相当に大きい!

ところで純正スピーカーの音は、ひと昔ふた昔前と比べると良くなっている。その理由は「2ウェイ化が進んだから」だ。かつては、左右のドアに1つずつのスピーカー(フルレンジスピーカー)が取り付けられているだけ、というクルマが多かった。しかし、1つのスピーカーユニットで高音から低音までをスムーズに再生するのは難しい。特に高音再生がスムーズに行えない。ゆえに、残念な音になっているクルマが多かったのだ。しかし2ウェイ化が進みツイーターが追加されることとなり、高音の再生能力が高まった。その点では状況は良化した。

なお、今でも純正スピーカーがフルレンジタイプ、というクルマはある。なので念のため、愛車の純正スピーカーを確認してほしい。もしもスピーカーが左右に1つずつしか付いていなかったら、音が良くなる“ノビシロ”は相当に大きい。市販スピーカーに交換すれば高音再生用のスペシャルスピーカーである「ツイーター」を手にできる。それの効果が大きく表れ、聴こえ方がガラリと変わる。

では、愛車の純正スピーカーが2ウェイだったらどうなのだろうか。市販スピーカーに換えて、音は変わるのか否か…。答は「イエス」だ。同じ2ウェイスピーカーでも、純正スピーカーと市販スピーカーとでは性能差が大きい。純正スピーカーには多くを望めない要因が、いくつかあるからだ。

まず、純正スピーカーにはそもそもコストが多く掛けられていない。特に価格が抑え目な車種になるほど、メーカーは価格競争に勝つために基本性能以外の部分に掛かるコストをできるだけ削ろうとしているはずだ。スピーカーは、走行性能にも安全性能にも直接関係しないパーツなので、コストが潤沢に注がれているはずもないのだ。

そして昨今のクルマの多くは、燃費性能を高めることが至上命題となっている。それを達成するための鍵となるのは「車重」だ。クルマは軽ければ軽いほど、燃費を稼ぎやすくなる。なので、純正スピーカーの軽量化も進んでいる。

スピーカーは軽くなるほど、音質性能は落ちていく!?

このようにコストが掛けられていないと、そして軽量化が推し進められると、スピーカーは性能を発揮しにくくなる。コストが掛けられなければ、使用パーツや部材にこだわれない。AとBという素材があったとき、Aの方が音が良いと分かっていても、コストが掛かるのならBが選ばれる。

そして軽くなることもまた、音質性能においての不利要因と成り得る。基本的にスピーカーは、高級品になればなるほど重厚になる傾向が強い。磁気回路も強力な方が音に有利だ。これを強力にしようとすれば大型化し、重くなる。またフレームも、強固であればあるほど音に利がある。支えが効くので確実に振動板をストロークさせられる。

しかし純正スピーカーは、逆を行っている。軽くするために磁気回路は小型化され、フレームも貧弱化している。音質性能を望み難い方向に進んでいる傾向は否めない。

対して市販スピーカーには、当然ながら音を良くするための工夫がふんだんに盛り込まれている。高額なモデルになればなるほど、音質性能的に有利な部材やパーツが使用できるし、磁気回路やフレームもより強力で頑丈になっていく。純正スピーカーと市販スピーカーとの性能差は、開いていくばかりなのだ。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」の存在も大きい!

ところで、市販スピーカーには多くの場合、「パッシブクロスオーバーネットワーク」なるものが付属しているのだが、純正スピーカーではこれが使われていない場合がほとんどだ。ツイーターには、これがないと壊れてしまうので簡易的なものが組み込まれているが、ミッドウーファーには使われていない。これを用意するにはコストが掛かり過ぎるからだ。しかし、これがあるかないかでも音が変わる。

「パッシブクロスオーバーネットワーク」とは、音楽信号の“帯域分割”を行うためのパーツだ。音楽信号は「パッシブ」の中を通過することで高音と中低音の2つに分けられる(2ウェイの場合)。そうして高音はツイーターに送られ、中低音はミッドウーファーに送られる。こうすることで、それぞれのスピーカーユニットが得意な仕事に専念できる。これが音に好影響をもたらすのだ。

というのもミッドウーファーは高音再生が苦手だ。そのミッドウーファーにフルレンジの信号を送り込むと、ミッドウーファーから濁った高音が発せられることとなる。また、高音がツイーターとミッドウーファーとの2箇所から聴こえてくるので、音がダブり音像がぼやけたりステレオ感が薄れたりする。

しかし「パッシブクロスオーバーネットワーク」を使えばそれら不利点を払拭できる。

なお、「市販スピーカー」の中にも、廉価なモデルにおいてはツイーターにしか「パッシブクロスオーバーネットワーク」が組み込まれていなかったりもする。「パッシブ」が簡素化されることで価格を抑えられ、そして取り付け性も高くなる。しかし、音のことを考えるなら「パッシブ」が同梱されているモデルの方が有利だ。覚えておこう。

今回はここまでとさせていただく。次週からは「スピーカーの選び方」に関する解説を進めていく。お楽しみに。

音を良くするための第一歩!「スピーカー交換」に挑戦! Part1 「スピーカーを換えると、なぜ音が変わるのか」

《太田祥三》

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