【ホンダ フィット 新型】最も重要なのは安心感…パワートレイン担当[インタビュー]

ホンダ フィットCROSSTAR
ホンダ フィットCROSSTAR全 8 枚

フルモデルチェンジしたホンダ『フィット』。その開発においては欧州をはじめ様々な場所で走り込みを行ったという。そこで、どのようにフィットの走りが煮詰められていったのかなどについて担当者に話を聞いた。

パワートレインはあって当然、そこから来る安心感が重要

----:新型となった4代目フィットですが、走りの面においてもこれまで以上にこだわって開発されたと聞いています。そこで、最も重視しながら開発した点はどのようなものでしょう。

本田技術研究所オートモービルセンター第4技術開発室第3ブロック研究員の小泉英一郎氏(以下敬称略):本当に最後の最後までこだわって開発しました。実は工場から初めてクルマが出来て(工場のラインを通して初めてクルマを製造し、問題がないかを確認するタイミングで、いわゆる試作車のひとつ)再度見直したものが一番開発で記憶にあり、またこだわったことでもありました。

その例をお話ししましょう。大前提としてフィットのコンセプトを守るためにはパワートレインは邪魔をしてはいけません。そこにあって当然のものです。それぞれのターゲットユーザーに対しても(パワートレインは)あって当たり前のものですから、“安心感”が私は一番だと考えています。

私は日本で公道検証を行った時にリーダーをやっていまして、そこでひとつ気づいたのは、山道を上ったり下ったりするシーンでした。色々なお客様がいらっしゃいますので、機能上はOKな上で、ブレーキの減速フィーリングをもう一歩詰めなければ、ということを感じたのです。そこで機能のメンバーともう一度、特にガソリン車の減速の安心感がもう少し足りないと、やり直しました。

実はCVTは燃費効率を上げるためにダウンシフト制御などを取り入れています。フィットはパドルシフトを採用していませんので、通常、減速度が欲しい時にはブレーキ操作ひとつでこの制御を成し遂げなければいけません。重要なのは安心感ですからブレーキを踏むと、気づかれないように少しずつエンジン回転数を調整しながら徐々にエンジンブレーキの効きを上げていくようにしています。その結果、例えば下りながら曲がったりするシーンでも急激にではなく、自然に徐々にエンジンブレーキがかかっていきますので、耳でも気づかれずに、心地よくしれっと減速感を与えるようにとこだわって最後まで調整しました。ホンダ フィットCROSSTARホンダ フィットCROSSTAR

ワインディングでも安心感を

----:試乗して感じたのは非常にブレーキがスムーズだったことと同時に、CVTのラバーフィーリングがほとんど感じないことでした。例えば料金所からアクセルを一気に踏み込んだ時にマニュアルのように回転数を上下させながら走らせるのはとても上手いと思いました。

小泉:CVTをヨーロッパでも販売するということもありましたので、感性に合うリニアなドライバビリティにも重きを置いています。ヨーロッパのお客様の目は肥えていますので、ステップシフトやエンジン回転数の回転上がりを抑えつつ、心地よい加速Gをキープするという味付けにしています。決してエンジン回転数を抑えると加速しないなどの不快感のあるセッティングにはしていません。

また、ワインディングなどでは横Gも検知していますので、例えばアクセルを一瞬抜いてからすぐに踏み込んだとしても、それほど応答に遅れは感じられないと思います。これはわざとそのギアレシオをホールドしているのです。そこで備えているのは立ち上がった後の加速と、耳に入ってくるエンジン音の変化です。エンジン音が一定だと人間の耳はあまり気にはならないのですが、変化すると気になってきます。かつエンジン回転数が落ちて、そこから踏み込んだら(加速が)遅いとなると、もたつくはうるさいはとなってしまいます。そこはドライバビリティを維持するようにセッティングをしました。ホンダ フィットCROSSTARホンダ フィットCROSSTAR

非力さを感じさせない安心感

----:今回5つのグレードを展開していますが走り味を変えたいということはありませんでしたか。

小泉:それはありませんでした。主にハイブリッドを望まれるユーザーが多いと思うのですが、実は私が気にしたのはファーストユーザーの方もいると思いましたので、1.3リットルのガソリン車でした。せっかく買ったのにもたついたりして走らないとかがっかりされるのは嫌だなと思ったわけです。そこで、1.3リットルの方をより気にして公道検証などは行いました。

この開発においても機能を担当するメンバーと2人で乗って、ここは僕はダメだと思う、もう少しこうしてほしいとかの要望を出しました。本当に細かいところでいうと、信号待ちからスタートする時に(ハイブリッドと比較し)1.3リットルだと少し重く、ちょっと遅く感じたのです。

そうすると前のクルマと離れて間隔があいてしまい、今度はアクセルをより踏んでその間隔を縮めようとしまいますよね。一方で、一般道ですから他のクルマがそこに割り込むこともあります。しかし自分は前と離れているので、よりアクセルを踏んで加速をしていますから、割り込んできたクルマとぶつかりそうになってしまうこともあるでしょう。それでは安心感にはつながりません。そういう細かいシチュエーションも含めて機能のメンバーと実際に乗ってチェックをしていきました。

四駆についても鷹栖のテストコースでしっかり走れているかどうかは確認をしましたし、そういったことも含めてトータルで見て特にグレード別の味付けはする必要がないと考えています。
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《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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