【スズキ ハスラー 新型】ハスラーだからこそ実現できたインテリア…デザイナー[インタビュー]

スズキ ハスラー  インテリアデザインスケッチ
スズキ ハスラー インテリアデザインスケッチ全 23 枚

新型スズキ『ハスラー』のインテリアは、責任者たちが“ビビビ”ときたキースケッチから生まれた。そこで、そのキースケッチを描き、インテリアデザインを担当したスズキ四輪商品・原価企画本部四輪デザイン部四輪インテリア課係長の粒来広さんに話を聞いた。

【画像全23枚】

アウトドアグッズのプロテクトのイメージ

ハスラーのインテリアで最もインパクトがあるのは、3連のフレームを持つインパネだろう。まずはこのアイディアがどのように生まれたのか。粒来さんは、「このクルマがアウトドアで使われることを念頭において考えた」という。そこで、「ユーザーがアウトドアをイメージ出来るような身近にあるアウトドアグッズを課内で持ち寄り、その魅力は何かということを話し合った」

そこから見えてきたものは、「時計などの精密機器を守るために、タフでプロテクトしたような形状がついていることが特徴であることがわかった。そこからヒントを得て、クルマでいえばメーターやセンターのインフォメーションディスプレイがそういった精密機器に当たるので、そのあたりを気にしながら3連のフレームという考え方を作っていった」と説明。

また、「アウトドアのアイテムやツールを見ていると、それぞれの機能エリアをはっきり作ることが、機能としてのわかりやすさにつながっていた。そのアイディアをクルマにあてはめ、それぞれのゾーニング、メーター、ナビ、収納がはっきりわかるようなデザインにした。そしてそこから見える機能感がスタイリングに結びつけばいいと考えてデザインしていった」とし、「こういった表現はあまりクルマではなかったので、それがひとつの楽しさにつながると考えて採用した」と語る。スズキ ハスラースズキ ハスラー

見せる収納

粒来さんが描いた初期のキースケッチには3連フレームの案とともにグローブボックスには電子レンジが入っていたという。「助手席前のフレームに囲まれたアッパーボックスは非常に魅力的な部分で、先代はテーブルにもなるなど好評だった。そこで、まずテーブルありきで考えた」とベース部分を説明。そして、「そのテーブルとフレームのデザインを合体させて、そこにどんな収納を持たせたらワクワクするだろうと考えた。

電子レンジは使用シーンを考えて、例えば寒い冬に良い景色を見に行って、そこで温かいものが飲みたいなというシチュエーションは多分にあるだろう。その時に電子レンジみたいなものがあればそこでさっと温かいコーヒーが飲めたり。ほかにも、フレームの中が巾着袋のようになっていてぎゅっと紐で縛れるようにして、自由にものが入れられるなど色々アイディアを考えた」と振り返る。

そこから「見せる収納」というアイディアも取り入れられた。これは、「お気に入りのアイテムを少し飾りたいなど、クルマの中で展示出来るようなスペースが出来ないか」という発想からスタートし、「用品にゴム紐、カラーコードと呼ばれるものを採用。グローブボックスの蓋の表面にカラーコードを通すことで、そこにお気に入りのグローブなどを挟んで、インパネ自体にお客様の好みを入れて楽しめる、そういったワクワクを入れたいと考えた」という。カラーコードのカラーもガーニッシュの色にあわせて設定されている。スズキ ハスラースズキ ハスラー

遊び心にふふふと笑顔に

ハスラーのインテリアには遊び心もちりばめられている。その一例がドア部分にある“H”型をモチーフにした内張などだ。実は先代ハスラーでもヘッドランプ周りとインパネのサイドルーバーのキャラクターをリンクさせ、内外装でひとつのキャラクターを持たせることを目的にデザインしていた。そこで今回も、「外のエンブレムと統一感を持たせて、より楽しい世界観を作りたいとH型を作った。本当に遊びの部分で、気づいてもらえた方にはふふっと笑ってもらえるようなもの」と粒来さん。

そのほかにもラゲッジルームのクォータートリム部分に、用品でフックが2個つけられるようになっており、その周りをH型のキャラクターで囲んである。「ここもドアと同じようにワクワクする遊び心を入れている」という。

また、ラゲッジルームの下にボックスが採用されているが、そこには「縞鋼板の柄を入れて少しタフに見せ、かつ滑り止め効果も狙っている」とのこと。「実際には開けないと見えないのだが、そのあたりも気をつけてデザインしている」とのことだった。スズキ ハスラースズキ ハスラー

タフでプロテクトがテーマ

粒来さんによると、ハスラーのインテリアのデザインテーマは、「タフでプロテクト。プロテクションガーニッシュと呼んでいるが、まさにプロテクションしたというところが大きい」と述べる。

そのテーマのもとに3連フレームのインパネがデザインされたのだが、ドライバーズシートに座ると、そのキャラクターは思ったほど強く主張して来ない。「我々もそのあたりはすごく気をつけており、そのためにインパネ上面をフラットに作っている」と話す。

通常のインパネであれば大概メーター部分大きな凹凸が見られたり、助手席前は様々な面の表情や、凹凸がつけられがちだ。しかし、「座って景色がきれいに見えることを考えて、全体にフラットになるように気をつけてデザインした。またインテリアの骨格という意味で、上下2本、横方向にバーを通しているのも、しっかりと見せるという効果がある」と説明。

また、メーターの表示の絵柄もスズキのデザイナーがデザイン。「アイドルストップでは卵が産まれるなど、ハスラーのちょっと愛嬌があるようなものになっている」と粒来さん。「クルマが止まっている間はちょっとイライラするような時になりがち。その時にふっと笑えるようなデザインを取り入れた」と述べた。スズキ ハスラースズキ ハスラー

ナビの大きさを決めてから

そのインパネの3連フレームだが、実はそれぞれ形が微妙に違っている。粒来さんによると、「9インチのナビが非常に大きいので、まずそこからサイズを決めた。そしてメーターのサイズも見やすいように今回は大きくしたのでそのサイズも決まる。アッパーボックスは目標としてティッシュボックスを想定。そのうえで、この車幅に収まるようにミリ単位で詰めていった」と苦労を語る。さらに、3連フレームの間に縦型のルーバーも配された。

あえてこのきびしい車幅の中にルーバーを入れようと考えたのか。粒来さんは、「普通のクルマでは、ルーバーの位置と高さはバラバラだ。しかし、シンプルに見せるためにルーバーを同じような高さですっきりと揃えることで、テーマのひとつとして見えてくるのではないか。ともすると複雑な造形になりがちなのだが、そういったところをシンプルに構成することで全体に明快なテーマになるように造形している」と答えてくれた。しかし、「本当にこのデザインが入るかどうかは最後まで心配した。これが入らないとテーマが崩れてしまうので、シンプルなテーマなのだがそのサイズがやはりネックになった」と述べた。

自分にうってつけ

粒来さんはこれまで先代『ラパン』などを担当してきており、自ら「キャラものが好き。なので、このクルマもやりがいがあった」と笑う。今回も「どうやって楽しくワクワクするような表情を造形で表現するか、その一点に絞って考えた」。そして、「まさに自分にうってつけの企画が来たなと思った。とてもワクワクして開発に参加した」と楽しんでデザインしたようだ。スズキ ハスラースズキ ハスラー

「先代も多少開発には参加していたので、大体の内容は把握していた。そこで、先代のテーマを少し引き継ぎたいと考え、先代もパイプを横方向に上下2本通すことで、助手席とナビとメーターの部品をつなげる役目を担っていたことから、その考え方を踏襲したいと考えた。そこで今回も3つの部品をパイプでつないだようなイメージにしたかった」と述べた。

こういった様々な作り込みを見るにつけ、遊び心は十分にありながらも玩具っぽい印象は感じられない。粒来さんは、「そこはものすごくこだわった」という。「スケッチが終わってからの作り込みではモデラーとものすごく話をしながら進めた。とてもシンプルで単純なテーマだと、形にした時に安っぽく見えてしまいがちだ。そこで、細かい部品の合わせやひとつひとつ断面の取り方などを相当吟味していっている」と説明。そしてモデラーも、「非常に面の数が多く、また、その面と面の合わせの部分から出る線などもコントロールしなければいけないので、データを作る手間は大変なもの。そういったところをモデラーがまとめていけたので、ここまで作り込めた」と述べた。

最後にこのアイディアが採用された理由について粒来さんは、「もちろん様々なワクワクするようなアイディアはあったが、やはりこの3連フレームのインパクトと、アウトドアテイスト。今回はSUVカラーをもう少し濃くしていきたいということで、このアイディアが採用された。ほかにも色々良いデザインはあったが、このデザインはハスラーでしか表現出来ない、ハスラーならこのデザインはいけるだろうと採用された」とまさにハスラーならではのインテリアであることを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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