トヨタの新型コロナ対策…マスク自社生産やTPSで医療機器増産を支援、国内生産へのこだわりも

日本自動車工業会 豊田章男会長(4月10日)
日本自動車工業会 豊田章男会長(4月10日)全 3 枚

全世界の感染者数が290万人を超え、死者数は20万人を突破し、さらに予断を許さないなかにある、新型コロナウイルス感染の猛威。国内は大型連休中を自宅内で過ごすよう外出自粛を重ねて要請し、自動車メーカー各社は大型連休明けも国内工場の操業を止める構え。

こうした世界的危機に直面するなか、トヨタは「支援」と「準備」をどこよりも加速させている。支援は、自動車で培った製造・物流ノウハウや、世界規模のサプライチェーンを活かし、医療現場を支え、感染拡大を最小限に抑える動き。準備は、事態収束後の復興にむけ、雇用を守りながら体質改善を図る動き。まずはトヨタとグループ企業の支援の動きについて。

医療現場に製品と技術を提供・支援

トヨタは、愛知県豊田市にある貞宝工場で医療用フェイスシールドを、試作型や3Dプリンターなどで製作。週500~600個ペースで生産し、さらにグループ企業でもつくれるか検討していくほか、医療用マスクや防護服、体温計など衛生用品の調達にも、トヨタのサプライチェーンを通じて支援していく。

トヨタモビリティ東京は4月27日、東京都江戸川区に新型コロナウィルス感染者移送用の車両2台を提供。トヨタモビリティ東京は4月27日、東京都江戸川区に新型コロナウィルス感染者移送用の車両2台を提供。

グループ企業も動く。アイシン精機は医療機器以外の備品(病院向け簡易ベッド台、消毒液容器、簡易間仕切り壁など)の生産を検討。同社は住生活分野でシャワートイレを製造・販売しているほか、アイシングループのアイシン開発は、寝具をはじめとするリフォーム事業を手がけている。

デンソーは、治療薬開発や感染抑制にむけた各国の研究を支援。カナダ D-wave 社が推し進める量子コンピューター利用サービスの無償提供プロジェクトに参画し、利用促進にむけた技術支援を行う。

トヨタモビリティ東京は4月27日、東京都江戸川区に新型コロナウィルス感染者移送用の車両2台を提供。トヨタモビリティ東京は4月27日、東京都江戸川区に新型コロナウィルス感染者移送用の車両2台を提供。

4月21日には、都内で5台の提供実績がある「飛沫循環抑制車両」をさらに千葉県に1台提供。同車両は、運転席・助手席側と後部座席の間に隔壁を置き、前方を陽圧、後方を陰圧にすることで後方の空気が前方に循環しない仕組みを採用している。

トヨタ生産方式で医療機器増産を支援

そしてトヨタならではの支援といえるのが、同社独自の生産方式を医療機器メーカーなどにあわせて導入する計画。同社は、日本自動車工業会(自工会)を通じた政府の要請にもとづき、医療機器メーカーにトヨタ生産方式(TPS)のノウハウを注入し、急務とされる増産を支援していく構え。

そこであらためて、トヨタ生産方式とは。自働化とジャスト・イン・タイムという2つの考え方が柱のトヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)は、顧客の要望にマッチした製品を「確かな品質で手際よくタイムリーに造る」を確立させたモデル。

不良品をつくらないだけではなく、それにともなうムダな作業も効率化することで生産効率と作業効率を飛躍的に高めた、豊田佐吉の自動織機をルーツとする「トヨタのモノづくりの精神」だ。

トヨタは今回、TPS支援チームを結成し、医療機器メーカーによる人工呼吸器などの増産にむけて、トヨタ生産方式(TPS)による工程改善・生産性向上を支援していく考え。

国内の自社内用マスクは自給自足

すでに北米や欧州のトヨタグループ企業は、3Dプリンターを活用した医療用フェイスシールド(防護マスク)の生産や、人工呼吸器製造企業にむけてトヨタ生産方式(TPS)を活用した生産性向上支援が動き出している。

いっぽう国内のトヨタグループは、生産活動で必要となるマスクの自給自足を推進。一般市場からの調達を減らし、世の中のマスク不足を緩和させる考えだ。

たとえば、マスクの自主生産を決めたデンソーは、4月中の生産開始をめざして試作品の生産に着手。1日10万枚を量産できる体制を整える。

トヨタ紡織は、4月上旬から刈谷工場で1日生産を1500枚をスタート。さらに増産を図り、5月以降は猿投工場に移管し1日1万2000枚をめざす。

また、アイシン精機やダイハツ工業、日野自動車といったグループ企業などでもマスクの自社生産を検討している。

「国内生産にこだわる」

こうしたトヨタのモノづくりへの姿勢、そして国内での展開実績が、今回の医療現場支援・生産方式導入にむけた取り組みを加速させているという。4月初旬、日本自動車工業会会見で豊田章男会長はこう語っていた。

「リーマンショックと東日本大震災という苦しかった当時、わたしは、国内生産に強くこだわった。震災後、東北に新たな自動車車体の企業を設立し、モノづくりの学校もつくった。就業人口を3000人増やし、東北に新しい技術や技能が生まれている」

「その技は伝承され、次の人を育て、自らの働ける場所を維持し、発展させてきた。あのとき、日本のモノづくりを残すんだと決意し、国内生産にこだわったことは、間違いではなかったと思っている」(豊田章男会長)

《レスポンス編集部》

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