埼玉工業大学レベル3自動運転バスが8か月で650km走行、後付けAIシステムの2021年実用化めざす

愛知県日間賀島で1月25~27日に実施した「離島における観光型 MaaS による移動」をテーマとした自動運転の実証実験。埼玉工業大学の自動運転バス
愛知県日間賀島で1月25~27日に実施した「離島における観光型 MaaS による移動」をテーマとした自動運転の実証実験。埼玉工業大学の自動運転バス全 12 枚写真をすべて見る

埼玉工業大学の自動運転AIを載せた日野『リエッセ II』が、自動運転レベル3で650kmを超えるテスト走行を終え、次のフェーズへと動き出した。登場からわずか8か月のいま、国内の大手・中小路線バス事業者やITベンダーからの引き合いに追われている。

「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」に採択されてさらに開発スピードを加速させる埼玉工業大学 自動運転バスは、2019年8月の登場から試行錯誤を重ね、大小のエラーを修正しながらいまも実際に人を乗せて公共道路を走り続けている。

自動運転バスといっても、自動運転専用EV『ナビヤ アルマ』(NAVYA ARMA)などの既存パッケージモデルを使うのではなく、埼玉工業大学の自動運転バスは一般に販売されているディーゼルエンジン+油圧ブレーキの日野 リエッセ II に、自動運転システムを後付けしてオートで走らせる仕組み。

そこで埼工大は、福祉車両架装・改造で実績のある地元のミクニライフ&オート(埼玉県加須市)と協業し、リエッセ IIにまずジョイスティック運転装置を実装。ハンドルやフットペダルを使わずに、片手で運転できる機構を組み込み、そこに埼玉工業大学が開発した接続マイコン、自動運転AI(AI Pilot / Autoware)を実装した。

油圧制御と人の繊細な操作の壁もAIがクリア

埼玉工業大学とミクニ ライフ&オートがつくった自動運転バス(日野リエッセ II)埼玉工業大学とミクニ ライフ&オートがつくった自動運転バス(日野リエッセ II)ここで難しかったのは、加速よりも停止。通常、一般的なマイクロバスのドライバーは、ブレーキペダルをぐっと踏んで減速し、停止直前で足の踏み込みをふわっと抜いてなめらかに止まるように(乗客に不快な前のめりがないように)、ドライバーは無意識レベルでそれを繰り返している。空気油圧複合式ブレーキのリエッセIIには、そうした人の細かなブレーキング動作がより求められる。

8月の登場当初に開発陣の前に立ちはだかった壁が、このマイクロバスを自動運転AIと制御マイコンで停止させるときのガコンという衝撃。人の足が無意識ですーっと抜く、停止直前のブレーキ緩めなどをプログラム化してなめらかに止まれるまで、なんどもチューニングし、プログラムを書き換えてきた。

不定期に行われている試乗会に毎回出席する埼玉県 先端産業創造プロジェクトのメンバーは「乗るたびに進化を感じる。とくに停止直前のガコンという衝撃が、半年でクリアできたのには驚いた。あと少しで、人が足でブレーキしているように止まれるはず」と話す。

そこへこんどは排気ブレーキというベース車両側の仕組みが、自動運転時に新たな挙動をみせる。これは、埼玉工業大学自動運転AIが、既存の排気ブレーキも自動制動に活かすべく、ブレーキング時に自動でシフトダウンさせている。このときにもちいさなコツンという挙動を確認し、改善にむけてチューニングを重ねている。

進化する走り、経路マッピングも高速化

ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ2020(横須賀リサーチパーク  YRP 2020年2月7日)ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ2020(横須賀リサーチパーク YRP 2020年2月7日)また、国内のさまざまな公道でテスト走行を重ねていくと、PID制御パラメータと実際の走行にずれが生じたときに起きる挙動や、信号の立て付け位置がばらばらの公道を走ると画像認識レベルによって停止位置が前後してしまうといった課題もみつかり、チューニングが続く。

いっぽう、2400人以上の人を乗せて実験を重ねてきたその走りも進化が続く。たとえば最近では、LiDARとオドメトリ(自己位置推定)、GNSS(GPS)やジャイロに加え、後付けできる衝突防止補助システム「モービルアイ」を追加。Autoware のプログラミング入力枠に左右の白線との距離を数値設定し、白線と自車との距離をリアルタイム計測しながら数値内を走り、設定数値から外れるとフェイルセーフで手動運転に切り替わるという“新たな走り”もみせてくれた。

さらに、こうした後付け自動運転システムの実用化にむけた“スピードアップ”も進化し続けている。埼玉工業大学 自動運転バスは、実用レベルを想定した経路マッピング(スキャン)の高度化もトレーニング中。ことし1月下旬、愛知県のちいさな離島、日間賀島で行った実証実験では、初日のテスト走行へむけて2日半かけた経路マッピングを、翌日のコース変更時にはその作業を半日で済ませてみせた。

バス事業者や自治体などが注目、2021年度実用化めざす

埼玉工業大学の自動運転バス、本庄早稲田駅前の行動で自動運転レベル3デモ走行(2019年9月29日)埼玉工業大学の自動運転バス、本庄早稲田駅前の行動で自動運転レベル3デモ走行(2019年9月29日)この日間賀島での実証実験には、地元大手バス事業者である名鉄バスや、メイテツコム、名鉄EIエンジニアといった名鉄グループなども参画。現場には、関東の大手路線バス事業者をはじめ、名古屋・大阪・博多エリアの路線バス事業者幹部陣も見学に訪れ、後付け自動運転システムの“いま”を体感した。

そして冒頭で述べた「引き合い」について。埼玉工業大学 自動運転システム開発をまとめる同大学工学部情報システム学科 渡部大志教授(埼玉工業大学自動運転技術開発センター長)は、「いま新型コロナウイルス感染の影響で予定していたスケジュールが延期している関係で、具体的なパートナーの名は出せないけど、日間賀島の実証実験を体感した関東・中部・関西・九州の大手・中小バス事業者や、ITベンダー、地方自治体などから引き合いがある」と語り、実用化へむけてこう話していた。

「スマートシティ構想を実現させる一歩として、自動運転バスへのニーズの高まりを実感している。大学教育の生きた教材として生まれた埼玉工業大学の後付け自動運転AIシステムは、高齢者の免許返納、バス運転手の人材不足、新しい街づくりなどに貢献できるよう、プログラム・ハードウェアを更新し、今後も実証実験を重ね、2021年度には実用化させたい」(渡部教授)

《大野雅人》

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