【川崎大輔の流通大陸】アフターコロナ、自動車業界の未来

テスラのバッテリー基地(シリコンバレー)
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航空業界や、公共交通機関も含め、輸送機器産業は、新型コロナの感染拡大を受け大きな困難に直面している。自動車メーカー、部品サプライヤー、新車ディーラー、中古車ディーラー、自動車整備企業を含む自動車業界は、長期的発展の再評価と見直しが必要になっている。アフターコロナの自動車業界の未来はどう変わっていくのだろうか?

アフターコロナ、未来の5つの波

リーマンショックの金融危機とは異なり、コロナショックの場合は感染抑止が最大の処方せんとなる。そのため、コロナ終息までは長期化することは間違いない。

コロナショック、1つの未来の波として、まず「企業倒産ラッシュ」が始まる。日本では、エヌエヌ保険(東京)が3月末に行った中小企業調査では、新型コロナウイルス感染拡大は「6月末」より長く続いたら6割以上の中小企業が相次いで経営危機に陥る。理由は、運転資金難という結果が出ている。また、東京商工リサーチの調査によると、新型コロナ関連の経営破綻(はたん)は、2月から5月1日までで累計114件となった。旅館など宿泊業と飲食業で約4割を占めており、自動車メーカーの操業休止の影響を受けて受注が減少した製造業も資金繰りが行き詰まって倒産した。

アメリカでは4月24日時点で2600万人が失業保険を申請。失業率は一気に14%に達した。リーマンショックをすでに超えている。このまま続けば、失業率は世界恐慌時の25%にすら達すると予想されている。4人に1人仕事がない状況。更に、米議会予算局(CBO)は24日に経済見通しを改訂し、4~6月期の国内総生産(GDP)が年率換算で前期比40%減に落ち込むとの予測を公表した。

そのような政府の事情もあって、アメリカ、イタリア、ドイツなどはさすがに経済が持たない状況になっていると伝えており、フランス、イタリア、スペイン、ドイツなどヨーロッパ諸国も、封鎖解除の段取りを次々と決めている。いったん、収束すると考えられているが、イベント開催や、バーゲンセールなどが開催され、反動で2つ目の波「秋の再パンデミック」がおこる。

3つ目の波は「新興国での感染爆発と国境封鎖」で世界の国境はしばらく閉ざされる。コロナによる経済影響の本質は、世界的な外出規制や国境規制で人・モノの動きが世界遮断されることだ。それにより需要の消滅がおこる。

世界の景気が底打ち、世界恐慌以来のマイナス成長になると4つ目の波「コロナ恐慌」だ。世界恐慌の時はアメリカではGDPが27%減少、失業率は25%に及んだ月収30万の人が20万ぐらいになる。小学校では「親が失業している子」が1クラスに30人とすると7~8人いるというようなすごい状況だ。アフターコロナの世界は、世界に大きな爪痕(つめあと)を残すことになる。排他的風潮の強まり、更には感染源をめぐる米中対立によって世界の分断が加速化する。

コロナによる世界の経済活動が衰退することで、大企業の倒産をトリガーに最後の波「金融危機」にまで発展することになる。アフターコロナの世界には人々の価値観も変わり、今までとは異なる世界になる。アフターコロナにおける自動車業界の未来、これから4つのキーワードをお伝えする。

コロナで再認識、自動運転化加速の必要性

新型コロナウイルスの拡大後、無人運転や物流ロボットなどの技術は、コロナ感染拡大防止という観点から非常に大きな役割だと理解されるようになった。医療機関でも遠隔操作ロボットを導入して隔離エリアの患者に食事や物資を提供している。現在アメリカでも自動運転車を使ってモノを配送する取り組みは活発である。自動運転車で医薬品や必需品を配送するためだ。

中国でも新型コロナが規制緩和の引き金になっている。自動運転技術を搭載した配送ロボットの走行制限が緩和され、1部地域で配送ロボットを活用した取り組みが盛んになった。またアメリカのフロリダ州では、自動運転シャトルバスによる医療品やコロナウイルス検体の自動搬送を行っている。医療現場において搬送作業の負担を削減し、医療従事者や作業スタッフへの感染拡大防止に大きく貢献している。

今後、無人運転、つまり自動運転技術の推進が加速される。アフターコロナ、1つ目の自動車業界の未来、キーワードは「自動運転化」だ。無人走行の開発と密接な関係にあるのはEVだ。自動運転化の加速により、EVは恩恵を受けることができる。

コロナで改善した地球環境

日本では、CO2排出量の約2割が運輸部門から排出されている。その約9割が自動車から発生しているのは皆さんご存知だろうか。自動車・交通分野のCO2削減や省エネの動きはコロナによって更に加速する。

地球環境はコロナ以前と比較して、大きく改善されているようだ。考えたくはないことだが、常ひごろ、私たちの生活がどれほど地球環境に悪影響を及ぼしているのかを痛感させられる事実が発表されている。今年の温室効果ガスの排出量は昨年に比べて16億トンも減少する見込みだ。これは約3億5000万台ものクルマが減ることに相当する。アメリカ北東部でも澄んだ空が戻ってきた。ベネチアの運河は鮮明なエメラルド色を取り戻した。インドからは30年ぶりにヒマラヤ山脈が見えたというニュースもあった。

2つ目の自動車業界の未来のキーワードは「小型化、省エネ化」だ。ビル・ゲイツは3月下旬のTEDトークで、世界の科学界や民間企業が力を合わせて気候変動の問題とコロナウイルス問題の両方を解決することへの期待を表明している。自動車を利用する人々は、コスト負担を抑えながらも、クリーンでパーソナル、かつフレキシブルで最低限の移動する志向にシフトする。

その結果、これまでの高級志向、大型志向、SUV志向から、より省エネを意識した、日常の短距離移動を行う、経済的な小型車に対する志向が強まることになる。

変化する自動車の価値観

日常の「足」については、EV化が進む。軽自動車よりも1回りサイズの小さい超小型の電気自動車(EV)への関心が高まっている。それによりバッテリーのシェアリングを含むインフラシステムの見直しは進んでいくことになる。更にウィズコロナの時代においては、「巣ごもり」需要は継続される。恐らく人よりもモノの移動が増える。物流目的でのMaaSへの進化が期待される。つまり今までの自動車の活用方法が変わる。人が移動するのではなく、モノの移動を補助するモノへとシフトする。モノの移動の効率化に向けたラストワンマイルの技術、サービスが不可欠になる。

MaaSとは(モビリティ・アズ・ア・サービス)、鉄道やバス、タクシー、レンタカーなどの今までの交通サービスと、これからのカーシェアリング、自転車シェアリング、配車サービス、自動運転などの新しい交通サービスを統合し、スマートフォンアプリを通じてルート検索、予約、決済を行うことで利便性向上をした移動ができるようにする動きだ。3つ目の自動車業界の未来のキーワードは「MaaSによるモノのラストワンマイル」だ。アフターコロナの日常生活において、必要不可欠となるサービスだ。

また、アフターコロナ社会でソーシャルディスタンスやパーソナルスペースへのニーズが今よりも高まることで、カーシェアリングの流れは読めなくなった。そうなるとCASEのS(シェアリング)を抜かしたCAEの要素をまとめると”ネットワークにつながる自動運転のEV”というのが未来のクルマ像だ。

C(コネクテッド)とA(自動運転)、E (EV)では差別化がしづらい。そのためSは革新的な付加価値サービスのS(サービス)となる。車内の消毒、空気清浄など衛生環境サービスは差別化の1つになる。またマッサージ機能つきシートや健康管理システムなどヘルスケアとしての空間、動画音楽配信やエンターテイメントなどパーソナライズされた空間になる。革新的な車内サービスを取り入れ従来の考え方にとらわれない活用だ。最後の4つ目キーワードは「自動車活用シーンの拡大」だ。

このような自動車業界の変化する未来に対する対応方法は何だろうか?それは、戦略とブランディングだ。価値観が大きく変わろうとしている中、未来のビジネスモデルを考え直すタイミングにきている。

更に、自動車業界という狭い領域にとらわれない企業のブランディングを打ち出していくことが重要だ。ブランドとは知名度、信頼性、安全性だ。ブランドを保つことで革新的な商品、サービスへシフトしても消費者はついてきてくれる。

「世界の都市封鎖」解除した後に何が残るのか。生き残るためには、目の前のことではなく、将来のことについてしっかり考え、今から準備をしておくことが重要だ。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、合同会社アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。17年に設立した株式会社アセアンカービジネスキャリアでは、ベトナムからの自動車整備エンジニアを日本の自動車関連企業に紹介する外国人紹介を行う。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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