【池原照雄の単眼複眼】ホンダ、新入社員の前例なきオンライン研修が終了…八郷社長も「先輩社員」として2度の講師

ホンダの新入社員オンライン研修での八郷隆弘社長(右端) 
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配属は例年より3か月早く6月に

ホンダは新型コロナウイルスの感染防止対策として生産部門などを除いて在宅勤務を積極的に導入しており、4月からの新入社員研修も全面的にオンラインで展開した。前例のない新人研修であり、コロナ禍のもと、試行錯誤の人材育成を進めている。

オンライン研修は4月1日の入社から6月4日まで2か月余りにわたって行われた。この間、スタートの入社式から全てオンラインで進められ、先輩社員や同期生とリアルの世界で顔を合わすこともなかったという。研修の対象となった社員は4月の定期入社のうち、生産部門やデザイン部署に従事する人を除いた技術系と事務系の約600人。研修を終え、6月8日には開発や生産、国内外の営業といった各部門に配属されるが、これも例年よりおよそ3か月前倒しという異例の措置となる。

ホンダの例年の新人研修は、まず鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で恒例の入社式を終えると、1週間ほどの導入教育を集合で受ける。「人間尊重」と「三つの喜び」(買う、売る、創る)から成る基本理念や社是などの「Honda フィロソフィー」をしっかり理解してもらい、ホンダの一員としてのスタートを切ってもらうのだ。

この後はただちに2班に分かれ、8月末までの5か月間近く、工場と販売店での現場実習をそれぞれ行う。そして、9月1日に正式配属を迎える。今年は、入社式という出発点から出鼻をくじかれたが、その後も感染拡大による政府の緊急事態宣言の発出などで環境は更に悪化、研修を立案する方も、受ける方も非常に厳しい展開となった。

「Honda フィロソフィー」から実務まで広げたカリキュラム

人事部門は当初、入社から1週間の導入教育をオンラインで行った後、例年どおりに工場などでの実習も検討したというが、稼働の休止や感染防止対策などから、各現場は受け入れられる状況にはなかった。結局、今年については工場と販売店での実習は中止という苦渋の決断になってしまった。

代わって双方向性を生かしたオンライン研修の充実に舵を切り、「Honda フィロソフィー」や、2017年に策定して取り組んでいる「2030年ビジョン」の理解だけでなく、例えば「四輪ビジネスの課題」といった実務でのテーマも織り込んでいった。また、全社的な協力も得て、新型コロナを超えるために取り組んでいる各職場の現状を工場長らに紹介してもらい、グループ討議などの題材とした。

八郷隆弘社長も、2度にわたって研修に顔を出している。5月の連休明けには、オンライン研修が6月初めまで続き、例年より配属が前倒しになることなどを伝えたうえで激励したという。入社から1か月を経過してもなお、一度も出社できないという新入社員の不安解消にも務めたのだ。

2050年のホンダはみなさんで決まる

そして6月初めには研修の仕上げとして、2時間にわたって対話した。先輩社員として入社以来の経験を披露した後、チャット機能などを使って寄せられた25の質問に答えた。このなかで八郷社長は、ホンダが創立100周年(2048年)を経た2050年について「皆さんによって決まっていく。100年を超えて生き延びていくには『移動と暮らし』で社会の皆様に喜んでもらう、新しい世界を創るんだという想いでやってほしい」と訴えた。

「こうした対話は、むしろオンラインだからこそできた」(広報部)わけで、新入社員からは「グローバルの仲間と、人の役に立つ仕事をしたいという想いが強くなった」といった発言が出るなど、トップとの直接対話の効果はやはり大きかった。

ホンダは緊急事態が解除された後も、今のところ間接部門については「在宅勤務推奨」としている。このため、研修を終えた新入社員も配属先の職場によっては、自在に出社ができるわけではないそうだ。ただ、ホンダに限らず、今年自動車産業に加わった人は、先輩たちとは全く異なる経験を強いられおり、これまでの苦難を自らのたくましさに変えていくことだろう。

《池原照雄》

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