中古車流通市場に変化、リースやサブスクなど利用方法は多様化 矢野経済調べ

矢野経済研究所は、国内の中古車流通市場を調査し、主要領域別(中古車小売販売、中古車買取、オートオークション、中古車輸出)の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

調査結果によると、2019年の国内の中古車小売台数は262万台、平均小売価格117万円と推計。消費増税による駆け込み需要や、台風がもたらした水害による代替需要も発生し、2019年の中古車小売販売市場は活性化した。次世代車の普及も流通車両の単価上昇をもたらしており、同研究所が独自調査を実施している中古車の小売価格も近年右肩上がりの傾向にある。また、小売価格上昇のもう一つの背景には、保有の長期化による高年式車の希少性が増していることも挙げられる。

中古車小売販売市場は、ディーラーの中古車事業強化と、ガソリンスタンド(GS)や整備事業者など異業種による新規参入事業者の増加により、競争が激化。自動車保有台数の増加幅が限りなくゼロに近づきつつあることや、自動車に嗜好性を求めるユーザー層が減少傾向にあることを背景として、本業からの収益が減少傾向にある部品・用品販売、自動車賃貸、整備業者などが、車両販売に新規進出し、顧客の囲い込みにより安定的に収益を確保できる仕組みの構築を急いでいるようだ。

大手中古車販売事業者は買取に本腰を入れている。小売販売のノウハウや流通ルートを確立しながら高めてきた資本力とブランド力を武器に、買取専業に比べて高値での買取を可能にしている。一方、従来の中古車買取ビジネスは仕入れた車両をすぐにオートオークションで売却するフロー型ビジネスであることから、根本的に小売販売よりも1台当たりの収益は小さい傾向にある。このため、ユーザーからの直接買取では、買取専業事業者が中古車販売大手事業者よりも高値を提示することが難しく、ユーザー獲得競争では大手の中古車販売事業者が優位なポジションに立ちつつある。買取専業事業者は、こうした市場変化の中で、従来のオートオークション売却一辺倒から小売りや業販比率の向上へと舵を切り始め、中古車販売事業者と買取事業者の境界は希薄になりつつある。

ディーラーも残価設定クレジット販売によってユーザーの新車購入頻度を短期化し、小売販売を見据えて高年式車両の下取を行いやすくしつつ、次の新車購入を促すという販売の短期サイクルを生み出した。また、共有在庫サービスの拡充などが、車両仕入に不慣れな整備事業者などの新規参入も促している。こうした異業種の参入が、中古車小売販売市場の競争をより一層熾烈なものにしてきている。

中古車の発生源となる新車販売台数は、中長期的には既に減少傾向に入っている。中古車供給量の減少は不可避でありつつも、流通する中古車の輸出需要先、利用方法は多様化の兆しもある。オートオークション市場では、輸出需要が大きな存在感を持つ。また、中古車販売事業者では、自社の中古車在庫をリースやサブスクリプションといった新規の定額制サービスの商材として活用する動きが活発化。車両総量の中長期的な減少を前に、賃貸市場の商材としての新たな注目を集め始めている。

《纐纈敏也@DAYS》

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